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写真で学ぶ、コミュニケーション。お互いが、お互いの笑顔のためにできること/楢侑子さん vol.4

2017.05.31

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「まいてら」のみなさま、こんにちは。ナムフォトの楢 侑子です。

ナムフォトは、大阪市中央区・天満橋の大川沿いにある小さな写真スタジオで、「いかに生き いかに逝くか 写真をとおして考えよう」というコンセプトで撮影やワークショップを行っています。

なぜナムフォトを始めるに至ったのか(第1回)、私自身が「死ぬこと」や「遺影(写真)」をどう捉えているか(第2回)「人生棚卸し・戒名ワーク」について(第3回)と、連載を重ねてまいりましたが、今回がいよいよ最終回。

3回目の記事でも触れましたが、先日5月13日にナムフォトは一周年を迎えました。今回は、2年目のナムフォトについて、少しばかりお話させていただこうと思います!

…と思っていたのですが、「これからやろうとしていること」を説明しようとすると、不思議なことに、私が写真を撮り始めたときの経験や、そのときの想いをお伝えしたくなってきました。

まずは、そんなお話からさせていただこうと思います。

写真をはじめたキッカケと、向き合えたもの

「写真をやってみたい」と思ったのは、美大を志していた高校3年生のとき。

無事に、志望していた多摩美術大学へ進学して、迎えた12月。世田谷ボロ市(骨とう品、日用雑貨、古本やゲームソフトなど約700店が出店するフリーマーケット)に出かけていき、そこで中古カメラ屋の露店に立ち寄ったのです。
「そういえば、写真やろうと思ってたんだった」と。
そして、店主のおじさんとあれこれ話しながら、中古の PENTAX「SP」を買いました。
マニュアル撮影オンリーの、シンプルな35ミリフィルムカメラで6000円。(1万2000円が半額の特価!)

私は映像演劇学科に通っていたのですが、選択授業に写真があり、基本的なことはそこで学びました。

授業で現像・プリントした一枚。当時からカラーが好きで、モノクロ写真はあまり撮りませんでした。

当時、何かを表現しながら生きていきたいと思っており、それは、映画や演劇やインスタレーションなど、日常とは違った空間や時間(ファンタジーの世界)をつくることに興味があって、選んだ学科でした。

映画を撮ったり(16ミリフィルム、8ミリフィルム、デジタルなど、いろいろなメディアにトライしました)、演劇の公演をしたり(ミュージカルを演じたり、能の表現を取り入れた演劇を、野外ステージを設営して上演したり)、実際に“非日常の世界をつくる”表現を一生懸命取り組んでいました。
ですが“架空の世界をつくる”上でも、そのヒントになるのは“日常”です。

「桜の下の満開の下」という演劇作品で、衣装を担当したとき

日常の中で表現の視座を持つため、美大生が一眼レフのフィルムカメラを手にするのは、とても自然な流れだったと思います。

ISO(フィルム感度)、絞り、シャッタースピードの組み合わせで、露出を合わせて(光をコントロールして)一瞬を切り取る。

カメラの基本構造はとてもシンプルです。

私はすぐにそれを覚えて、とにかく、撮って、撮って、撮りまくっていました。お金がたくさんあったわけではないですが、フィルム代の使いっぷりは、なかなか見事なものでした。

やがて、頭でいちいち考えなくても、手が勝手に動き、露出をコントロールして、シャッターを切れるようになりました。

撮れば、撮るほど上達していく写真。

ただ、「狙ったように撮れる」「カメラをコントロールできる」ようになっても、どうしても撮れないものがありました。

それが「人」。

人にカメラを向けるのが、こわかったのです。(今は、そのこわさをとても大切にしています)

なぜでしょうか。

それは、私が「人とコミュニケーションをとるのがこわい」と、感じていたからです。

写真には様々なものが写ります。

写真技術、世界をどんな風に見て、感じているのか、その時の気分やコミュニケーション、生きる目的や、構えのようなもの…

なんだか、全てがバレてしまうのです。

カメラを向けて、シャッターを切る。
たった250/1秒の一瞬で結ばれた「像」の中に、「生きて、日々培っているもの」が滲み出している。

今だって、決して「人とコミュニケーションをとるのが上手です!」とは言い難いですが、(そもそも「コミュニケーションとるのが上手」というは、言葉の定義自体が曖昧ですが)その当時の私のコミュニケーション能力は、今よりつたないものでした。

現在、アドラー心理学を学んでいるのですが、アドラー心理学には、心理学を使う上での目標があります。
特に子育てコース「パセージ」では、「私には能力がある」「人々はみんな仲間だ」という気持ちを子供が持てるように。そのために、子供を、そして自分自身を、家族を勇気づけたり、言葉がけしたり、コミュニケーションを取っていきます。

当時の私ですが、アドラー心理学の言葉を借りるとすると「私には能力がない」「人々が仲間になってくれるとは思えない」…こんな風に感じていました。

自分に自信がなく、周りの人が仲間とは感じられないので、日常的に人とコミュニケーションをとるのがこわいし、写真を撮るのもこわい。

仕組みとしては、とても簡単です。

それが、いつしか人を好んで撮るようになるのですが、そんなキッカケをくれたのが、お酒であり、旅でした。

スタジオに飾っている一枚。二十歳のとき、初めて海外旅行一人旅をしたときのもの。

コミュニケーション=ファンタジーでは得られないもの

学生時代、私はカラオケスナックやお酒の席でバイトをしており、そこで見る人間模様の面白さにハマっておりました。
人が集い、集まり、みんながその場を楽しみ、盛り上げていく。時に泣いたり、怒ったりしながら。その熱量のすごさといったら。

また、海外ひとり旅にもよく行くようになり、学校の長期休暇を利用して、カメラを携えて海外旅行へ出ていたのですが、「カメラ」を持っていると、カメラが媒介になってくれて、どんどんその国に、風景に、人々に、近づいていくことができました。



お酒の場も、旅も、非日常の世界ではあったかもしれませんが、ファンタジーではありません。

日常の延長でありながら、「これまでの私」という鎧をおろし、「人」と「人」としてその場に居合わせ、交わり、言葉のやりとりをすること。ふとした瞬間に「あぁ、今、心が通じたな」という感覚を持てること。とても嬉しいものでした。

そんな経験から、少しずつ人に対してカメラを向けるようになりました。


カメラは、世界と私をつなげてくれる、コミュニケーションのツール。
…写真が好きな人は、私に限らず、少なからずそういった意識があるかもしれません。

相手の素敵な表情が撮れたら、嬉しい。相手も、喜んでくれる。それは、とても特別で大切な経験で、写真を通して少しずつ「私には能力がある」「人々はみんな仲間だ」へ向かう扉が開いたように思います。

「笑顔の写真」は、お互いの喜び

はじめて他人に写真を教えたのは、「水都大阪フェスティバル2011」でした。
イベントの情報発信を市民レポーターが担うというプログラムがあり、そのレポーター養成講座の「写真の撮り方講座」を担当させてもらったのです。

市民レポーターは、ボランティアで集まった20〜60代のみなさん。カメラのスキルは人それぞれです。
1回限り3時間の講座の中で伝えられて、写真が上達し、さらに楽しさに触れてもらえる内容。

…そう考えたときに、浮かび上がったのが「コミュニケーション」というキーワードでした。

「相手は、どんな風に写真を撮られたら嬉しく思うか。どんな言葉を投げかけると、笑顔になってくれるか。そんな想像力を働かせながら、カメラマンから声をかけてましょう。」
「相手に、“ありがとう”と言ってもらえるような写真を撮りましょう。」

そんなことを伝えて、お互いを撮り合う撮影実習を行いました。

…それが、大成功だったのです。

一気に場の温度が上がり、言うなればお酒の席と同じか、それ以上の“何か”が生まれ、集った30人ものレポーター同士のコミュニケーションが目に見えて活性化したのです。

「みんなで撮り合うと、こういうことが起こるんだ!」

盛り上がった実習後の、集合写真。

ふだんの生活の中で、家族以外の誰かにカメラを向ける機会は、そうありません。
ですが、ひとたびカメラを持って向き合うと、お互いはにかんだり、笑ったり、盛り上げたり、盛り上げられたり。
「笑顔の写真を撮りたい!」という目標に向かって、ものすごい熱量のコミュニケーションが起こりますから、当たり前といえば、当たり前かもしれません。

そして、熱量冷めやらぬうちに、撮った写真はその場でパソコンに取り込み、スライドで映しながら、作品発表会を行います。

すると、会場からは、また違った笑顔がこぼれます。
スライドには、はにかんだ顔、はちきれんばかりの笑顔、小さく写る写真、はみ出すほど大きく写る写真など、さっきのやり取りが、それぞれの表情が映し出されていきます。

「私って、こんな顔で笑うんだ」
「彼は、こんなに素敵に笑うんだ」
「彼女は、こんなに幸せそうに笑うんだ」

“素敵な表情”には色々ありますが、それでも、とびきりのビッグスマイルが映し出されると、なぜか会場からは再び笑いが起こりました。

この講座以来、「お互いを撮り合う」レッスンは、私の写真講座の定番となっています。

「世代間コミュニケーション」について

そんなこんなで、ようやく、ナムフォト2年目のお話です 笑。
「いかに生き、いかに逝くか 写真をとおして考えよう」というキャッチコピーを掲げており、その意味は、これまでの記事の中でもお伝えしてきましたが、その向かう先はどこか。私は何のために会社を経営しているのか。つまり、ナムフォトの理念ってなんだろうか。

1年目のナムフォトをやりながら、改めてそんな問いが生まれて、思い浮かんだのが「老若男女が仲良く暮らす日本をつくる」でした。

これは、写真ほか、水都大阪やまちづくりの仕事に携わる中で、そのまちで暮らす20〜60代のみなさんが、チームをつくって活動し、その中で起こるドラマに魅了されたという経験も大きく影響しているように思います。

立ち上げ期に関わり、現在6期目を迎える1000ピースプロジェクトのHP  http://1000ppj.jp/

とにかく、そんな素敵な日本をつくるために「世代間コミュニケーション」がスムーズにいくような取り組みを行っていきたいな、と。

生きてきた時代も、背景も大きく異なるヤングとシニア。
お互いが共感しあい、お互いにとって良い関係を築いていくのだとしたら、その出発点は、「たったひとつの命」というところで結ばれるのではないかと。自分の命を見つめ、棚卸ししたら、今度は相手の命の尊さを想像してみてはどうかと。

「命を尊重する」…などというと、具体的に何をするのか、イマイチ分かりづらいですが、ナムフォトは「お互いが、お互いの笑顔を引き出す」らへんに焦点を当てて、撮影やワークショップ、トークイベントなどを企画していこうと思っています。

カメラで、相手を撮影するということは、相手の命を明るく照らすということです。
笑顔の写真が撮れたということは、私も笑顔だったということ。
笑顔の写真が増えるということは、笑顔のやり取りが増えるということ。
一瞬の命の輝きと、そのときの美しいコミュニケーションを、そのまま留めることができる写真。そんな写真を、みなさんが、それぞれに増やしていけたら嬉しいですし、そんな写真の喜びを享受するのは、死んでしまった人ではなくて、いつでも生きている私たちなのかな、と思います。

ナムフォト「Yei!〜楽しい遺影写真」より

小さな歩みかもしれませんが、一歩ずつ。
「老若男女が仲良く暮らす日本をつくる」という理念に向かって、私にできることをさせていただこうと思っています。

それでは、2年目もどうぞよろしくお願いいたします。

ナムフォトの今後の予定

*内容は、変更が入る可能性もあります。それぞれ講座のリンク先HPにてお知らせいたします。

「宇宙とつながる いけばな 写真教室」

・スケジュール:
6/11(日)バラ・トクサ
6/25(日)ユリ・リンドウ
7/9 (日)ガマノホ・ヒマワリ

・定員:3名
※1回ずつのお申し込みも承りますが、3回通しの方を優先いたします。
・時間:13:30〜16:30
・参加費:3回通し 15,000円(税込) 各回 5,000円(税込)
※花代、お茶込み。剣山と花器をご購入の方は別途1,000円。

・講師
いけばな:ヘメンディンガー綾(御室流 師範)
写真:楢 侑子(ナムフォト)

《内容》
仁和寺(高野山真言宗御室派)を総本山とするいけばな「御室流」の師範、ヘメンディンガー綾さんをお迎えして、いけばな×写真の教室を開催します。

いけばなと、フラワーアレンジメントの一番の違い。いけばなはそれ単体で「宇宙」を表現するための型があるということです。
「宇宙」を表現する「体・相・用」の3つの要素。それぞれのバランスと線の美を意識しながら、花の命が輝くように生けることを楽しみましょう。

空間の中に存在する「型(構図)」が理解できるようになると、それだけで写真の腕前も上がります。またみずみずしいお花を、美しく写真に撮影するアドバイスも致します。
3回通して学ぶと、全くの初心者の方でもお家でお花を生ける大切な要素を理解していただけます。

1.心の棚卸しワークを通して、ニュートラルに
2.いけばなを美しく撮影する、写真のワンポイントレッスン
3.いけばなの意味や、お花について
4.実際に、ひとり、ひとり、お花を生けてみます
5.完成した作品を写真撮影
6.お花を鑑賞しながら、お茶タイム

詳細、お申し込みはこちら
http://numphoto.com/2017/05/16/ikebana/

「60歳からはじめる写真レッスン〜笑顔でつながるコミュニケーション」
・6/21(水)…人生棚卸し・写真レッスン
「“今までの私”と、“これからの私”を見つけよう」

・6/28(水)…いいとこ探し・写真レッスン
「日々の暮らしや、周囲の人たちのいいところを発見しよう」

・7/5(水)…まわりが笑顔になるコミュニケーション・写真レッスン
「まわりの人が笑顔になるために、私にできることを見つけよう」

・7/12(水)…写真発表会
「笑顔の写真をプリントし、パネルを制作して、発表会」
*4回で1セットのコースです。

・定員:5名
・対象年齢:60歳〜(対象年齢外の方はご相談ください)
・時間:13:30〜16:30
・参加費:4回通し 32,000円(税込)

《内容》
写真に写るのは、何でしょうか?「写真技術」はもちろん、「ふだんのあり方」や「生きる目的」など、日々暮らしの中で培ってきたものも写るように思います。
つまり、「笑顔の写真を撮る」ことは「ふだんから笑顔でいる」ことの延長にあります。ということは、まわりの人の笑顔を写せるようにレッスンすることで、ふだんから笑顔でいられるようになるはずです…!?
教室では、人生の棚卸しからスタートして、モノの見方、声のかけ方、写真技術などを順番に学んでいきます。
仲間と一緒に学んでいきますので、お互いの写真を見比べたり、話をしたりすることで、自分自身についての理解が深まりますし、唯一無二の「自分にしか撮れない写真作品」が撮影できるようになります。
最後は、家族や友達、お世話になった人などを撮影(宿題)をして、発表会を行います。

詳細・お申し込みはこちら
http://numphoto.com/2017/05/30/senior_smile/‎

ナムトーク「わたしの仏教、持ち寄りトーク(仮)」

・6/30(金)19:00〜22:00
・7/28(金)19:00〜22:00
・8/25(金)19:00〜22:00

5/13ナムフォト一周年ありがとう企画で大人気だったナムトーク「仏教に聞く、モテるヒント」。
こちらの続きとなるような企画を開催することになりました!

イベント詳細は、こちらからご案内します。
http://numphoto.com/2017/05/30/numtalk-2/

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楢侑子

楢侑子

多摩美術大学在学中よりカメラマンとしての仕事をスタート。「日本人の暮らしに根ざしたメディアをつくりたい」と思い、様々なメディアで撮影や執筆ほか、企画・編集・ディレクションを行うように。2010年に独立してからは、地域講座で写真講師として活動したり、まちづくりの仕事に携わるように。32歳のときに乳がんが見つかり、手術。「命が輝く写真」を模索する中でナムフォトの構想が生まれ、2016年5月株式会社ナムフォトを設立。

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