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まいてら編集部員たちの”お寺のある”日常

まいてら編集部日記

お寺で定年後の居場所さがし(前編)-長寿の質が問われる時代

2018.01.23

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プロローグ:悠々自適と思っていた引退生活が、居場所のない生き地獄の毎日に

家族のために仕事に一生懸命うちこみ、65歳で定年。
引退生活が始まるも、40年以上経験していない毎日続く昼間の自由時間。何をすればよいか分からない。
妻は友人や地域に加え、様々な趣味のコミュニティとつながり、楽しそうに外出することが多い。
自分は会社時代の同僚たちとたまに会うも、家で一人ぼっちで昼間を過ごすことがほとんど。地域とのつながりもなく、テレビとインターネットがいつの間にか友だちに。暇つぶしのため、100円ショップやコンビニで無駄な買い物をすることも増えてきた。
独立した子どもたちとは、現役時代にうまく関係を作ってきていないため、たまに会っても「元気か?」くらいで、会話はほとんどなし。孫の存在が唯一の心の支えだが、自分が不在の時をわざわざねらって、子どもたちが孫を連れてくることが増えている気がする。
食卓でも夫婦の会話は事務的なことばかりで、中身のある話はない。「愛してる」と言っていた20代の妻は、幻想か前世の記憶かと思えるくらい今やまったくの別人。そのうちお墓も一緒に入らないと言い出すのではないか。熟年離婚の言葉もちらつく。自然とお酒の量も増え、自分はもしかしたらアル中になるのかもしれないという不安もつのる。でも、この辛さを向ける先はほかになく、お酒はやめられない。
家族の中で居場所がどんどんなくなっている強烈な事実に気づかされる日々。定年後は悠々自適と思っていたが、ある意味仕事以上につらく苦しい人生が待っていた。仕事で活躍してきた自分がまさか家庭で窓際族になるとは・・・
まだ20年近く生きるかもしれないこの人生。自分なりに家族のために一生懸命に仕事をしてきたつもりだが、死ぬまで続くかもしれないこの生き地獄の毎日を、自分はどう生きていけば良いのか。

長寿そのものよりも、長寿の質が問われる時代

まいてら編集部の井出悦郎です。
この話は、私が最近聞いたいくつかの実例をふまえて創作しました。
ぴったり当てはまらないにしても、この話と似たような風景が多くの家庭で起きているのではと感じています。

教育、仕事、引退という人生の3ステージ。標準的なモデルは、教育が約20年、仕事が約40年、引退が約20年となるでしょう。そして、これからは仕事が約50年になったとしても、平均寿命が年々伸びることで引退が約30年に伸びていくでしょう。人生100年時代に突入していくと言われる中、無為な老後はあまりにもつらい。
そう考えると、寿命が伸びたものの、生きがいを感じられない日々に悩むというのは、長寿社会の皮肉かもしれません。

日本社会では長らく、長寿を祝う節目を大切にしてきました。
長寿そのものが希(まれ)であったことから、「長く生きる」ことが尊ばれ、祝いの対象になってきました。

還暦:60歳
古希:70歳
喜寿:77歳
傘寿:80歳
米寿:88歳
卒寿:90歳
白寿:99歳
百寿:100歳
茶寿:108歳
皇寿(川寿):111歳
珍寿:112歳
天寿:118歳
大還暦:120歳

長寿は社会の豊かさの一つですからとても素晴らしいことです。その一方で、長寿が珍しくなくなった日本社会において、 長寿を「ただ」祝うことは時代にそぐわなくなってきていると感じています。

長寿社会は、「ただ」長く生きること以上に、「どう」長く生きるかが主題の時代とも言えます。
かけがえのない命をいただいて生まれてきた一人ひとりは、それだけで尊い存在です。
だからこそ、その尊い命を、その人にしか歩めない人生としてまっとうすることが問われます。それは人間が人間(じんかん)という言葉に表されるように、相互の関係性を通じて生かされる社会的存在であることからも大切なことだと思います。

それでは人間(じんかん)らしく生きるにはどうすれば良いか。
それは、自らの尊厳にもつながる、家族や社会の中での存在意義と役割の回復がとても重要だと思います。
そして、そのためにお寺が果たせることは何なのかについて、次回は考えてみたいと思います。

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井出悦郎

井出悦郎

1979年生まれ、東京育ち。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、一般社団法人お寺の未来を創業。同社代表理事を務める

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