新型コロナ禍、九十九里の風に故郷を見る。菩提寺としてできること(勝覚寺住職・小杉秀文)
2020.09.18
小杉秀文(こすぎしゅうぶん)
昭和43年勝覚寺に長男として生まれる。地元の成東高校を卒業して、大正大学へと進み真言宗の教えを学ぶ。 京都の狸谷不動院にて修験道を学び、30年来、奈良の大峯山にて修行を続ける。
故郷の「風」を見たい
今年は風を見てないんです。
東京では7月がお盆です。都内の檀家さんの所へお参りに伺った際、九十九里平野北部のお生まれの奥様がおっしゃってました。
今年はコロナの影響で、春先からお彼岸や親の命日、そしてお盆にも、田舎のお墓参りに行けていません。
田植えの風景もそうです。田んぼの稲が青々と育ち、風に吹かれて揺れる光景を見ることが出来てないんです。
お参りできない檀家さんのために菩提寺ができること
夏月涼風 冬月淵風 一種之気 嗔喜不同
夏の涼しい風も冬の冷たく厳しい風も、同じ空気なのに、喜ばれたり疎まれたり人の感じ方は違うものだ。
弘法大師はそうおっしゃいました。
昨年9月の台風15号(房総半島台風)では、勝覚寺も大きな被害がありました。一方で、風も吹かなければ空気が淀んで田畑に病気が広がったり、昔なら(帆)船も動かずに困ってしまいますし、今なら風力発電もありますね。
さて、昨年まで少なからぬ檀家さんが、青々とした田んぼが広がる中に車を走らせて郷里に向かい、お墓まいりをしてご先祖様と向き合いました。
しかし今年は新型コロナ禍の中でそれが出来ない。
そんな中、菩提寺として何が出来るのか。
毎朝6時に鐘をつく時、「天下泰平 万民豊楽 風雨順時 五穀豊穣 」と唱えてきました。それに加えて「疫病退散 当病平癒 」もお唱えするようにしました。
その梵音 と祈りが風に乗って四方に広まりますように。