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進化する都市型納骨堂。安心できるお寺であり続けるために(妙慶院住職・加用雅信)

2021.06.03

加用雅信(かようがしん)

妙慶院住職。広島〜東京〜LA〜広島在住。茶話坊主と称してお茶をしながら話を聴くひと時を愛する。坊主BAR、坊主café、寺カフェなど主宰。カウンセリング、傾聴、グリーフケア他も。実はデザインやアートが大好きで、ブログを毎日更新中。推しはサンフレッチェ、カープ、ドラゴンフライズ。

妙慶院寺院ページ

 令和3年春、妙慶院では納骨堂に新しい納骨壇を増設しました。ここ広島市内ではまだ墓石型のお墓が圧倒的主流ですが、近年は納骨壇型のお墓を選ぶ人が増えてきています。

新しく増設された納骨壇

戦後復興の苦労から生まれた、時代を先駆けるビル型寺院

 原爆投下で消失した妙慶院の本堂は、昭和29年の再建から23年後の昭和52年に再々建を果たしました。再々建された本堂は、都市型寺院を目指す新たな特徴が2つありました。ひとつはビル型のお寺であること。そしてもうひとつが納骨堂です。

 当時、全国的にもとても斬新な挑戦でした。戦後復興の中で数多の苦労を重ねてきた先々代と、その苦労の中で育った先代が、自立したお寺という強い想いから当時における「新しいお寺のかたち」=鉄骨鉄筋コンクリート造のビル型寺院を建立しました。いまから40年以上前に、人口が減少してお檀家さんに頼りづらくなる時代の変化にも対応できるお寺のかたちを選んだのは、先見の明があったと言えるでしょう。

「時代の先を行く」と言うと聞こえがいいのですが、新しい挑戦には必ず大変な苦労がついて回ります。ビルのお寺で納骨堂という斬新さには相当厳しい声がありましたし、中には墓石型のお墓でなくなるのを嫌がってお寺を離れていった方もいらっしゃいました。最終的に全てのお墓を墓地から移していただくのは、年号が平成に変わるまで待たねばなりませんでした。

お寺にある納骨堂だからこそ「お寺に守られている」という安心感

 21世紀に入った平成12年ころから永代供養墓が本格的に登場し、墓じまいが広く話題にのぼるようになりました。それに比例するかのように、墓石型のお墓よりも納骨堂のお墓の方がいいという声が徐々に高まってきています。私のお寺でもここ5年から10年くらいで急速に納骨堂へ新しく入られる人が増えてきています。

 お寺の納骨堂へお参りされる方から

「草取りやお掃除が不要だから気軽にお参りできる」
「ビルの中だから雨でも濡れないし真夏でも暑くない」
「エレベーターがあるから足が悪くても安心して来られる」
「広島の都心にあるからお参りと買い物が一緒にできる」
「遠くに暮らす子どもや孫も納骨堂だと遺す不安がない」
「墓石のお墓よりも負担が少なくて助かった」

…などのご意見をよく聞きます。こうした声にいま納骨堂が好まれている理由が映し出されています。そして何よりも一番大きな理由は、お寺にある納骨堂だからこそ「お寺に守られている」という安心感があることです。

 「私のあとお参りする人がいないから・・・」「やがて墓じまいをしないといけないけど・・・」お墓を用意しておきたいけど、どこにしたらいいのか悩ましいという声もよく聞きます。

「家」という考え方がますます希薄になり、少子高齢化も加速度的に進んでいくでしょうから、無縁化していくお墓の行方を悩む人も増えていく一方だと思います。だからこそお寺の中にある納骨堂は、安心できる墓所だと感じてもらえる必要があります。後継者がいらっしゃらなくなっても、ご親戚やご友人などお参りがいらっしゃる限り、お寺には責任を持って維持管理し続けていく責務があると考えています。

変わり続ける未来 安心のお寺であり続けるために

 このたび新しく増設した納骨壇は、「いま」の社会に合うものを考えて設計しました。

 従来の納骨仏壇は1基を「家」に紐づけて代々続けて使用できるもので、3段ある納骨区画には関東でよく使われる7寸(高さ約23cm)の骨壺でも入りますし、広島で主流の5寸(高さ約16cm)だと18個以上納まります。

 新しい納骨壇は「核家族」や「独居」を対象にした小型納骨区画が集まったかたちにしました。従来のかたちが一軒家とすると、新しいかたちは集合住宅というイメージです。お二人まで入れて、25年という使用期限を設けています。つまり「墓じまい」を心配しなくてもいい合同の納骨壇です。なお、ご希望の方は期限を延長して使い続けることもできますし、期限が満了したら基壇部に合葬いたします。

 デザインは私自身が監修して意匠設計しました。従来の納骨仏壇と同じく花筒が置けてお線香が手向けられる基壇部の上に小型の納骨区画が4段16列ほどしつらえられています。ガラスの扉越しにクリスタルの中に浮かぶ仏さまが拝めます。お寺に祀られる阿弥陀仏座像あみだぶつざぞうをかたどった仏さまの奥に骨壺が安置されるので、従来のロッカー型納骨壇よりも自然と手が合わせられる新しいかたちの合同納骨壇です。

クリスタルの中に浮かぶ阿弥陀仏座像
基壇部にはきれいな蓮が描かれている

 春のお彼岸法要でお檀家さんにお披露目した際、「モダンな雰囲気でオシャレですね」「これくらいコンパクトなので充分です」「私もここに入りたいです」など好評をいただき、とても嬉しく思っています。

 コロナ禍という先行きの見えない時代ですが、ご縁のある皆さまにとって妙慶院はいつでも安心のお寺であれるよう、これからも新化しながら進化し続けていきます。

お寺画像
広島県広島市中区
妙慶院
あなたの物語りを聴かせてください
茶話好きな坊さんがいます

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