お寺の掲示板が誰かの人生を支えるものであってほしい (お寺の掲示板大賞発案者:江田智昭さん)
2019.06.25
今年も「お寺の掲示板大賞」が7/1に始まります。
昨年はYahoo!のトップニュースにも載り、社会的な反響もありました。2年目が始まるにあたり、発案者の仏教伝道協会・江田智昭さんに、この企画の背景や思いをうかがってみました。
きっかけは「公募ガイド」
着想は2018年4月ごろ、公募ガイドという雑誌を眺めていた時だったそう。
「『キャッチコピーでホームランを打て』というコピーが目に入ったんです。今どきこんな投稿もあるのだと衝撃を受けました。しかも、大賞が5,000円でコンテストが成り立つということにも驚きました。標語を集めてコンテストをやるって、お寺の掲示板でできそうだなと。」
以前から仏教とSNSを掛け合わせて、布教に役立てられないかというテーマが江田さんにはあったとのこと。
「SNSで何かをやれないかと思っていました。ちょうどネットで掲示板が話題になることが多くなっていると感じていました。SNSで、ハッシュタグを活用すればお金がかからないですし。賞金が10万円だと投稿者の作為が入ってしまうので、とりあえず3万円だけ予算をくださいとお願いしました」
あっという間に企画書を書きあげ、お寺の掲示板大賞は7月にスタートすることになりました。
ご縁まかせで、あれよあれよと広がる反響
7/1からスタートした大賞。最初は投稿がないので、とにかく動かないといけません。
江田さんは、まいてらをはじめ、彼岸寺、フリースタイルな僧侶たちなど、知り合いの仏教系の媒体に声をかけ、告知を協力してもらいました。
最初は一日に一件の投稿があるかないかでしたが、スタートして二週間で事態は一変。
「お前も死ぬぞ」という投稿がネット上でバズリました。
そして、3日後に「NAVERまとめ」で、お寺の掲示板大賞のまとめ記事があがり、そこから投稿作品が増え始めました。
8月には朝日新聞の関西版夕刊にも取り上げられ、それが朝日新聞デジタルを経由して、Yahoo!のトップニュースにも載りました。
「小室圭さんと山根会長にはさまれ、光栄でした(笑)。」
その後は、9月にタモリ倶楽部の収録があり(11月に放映)、10月からダイヤモンド・オンラインの連載が開始されるまでに反響は広がりました。
「自分はひたすら受け身なのに、周りがどんどん広めてくれて、自分はそれに対応していっただけでした。想定外だらけです。しんどかったことは、主催者がSNS疲れになることですね(笑)自分の知らないところで誰かが拡散してくれることで、いきなり火事が起こり、メディアから連絡が来て、対応に追われます。自分で起こしたアクションだと、こういう反応が来るのでこういう対応をしようと事前に想定できますが、今回はまったくそれができませんでした。」
「掲示板×SNS」は布教のあり方の転換
「この企画を通して色々な見方があるのに驚きました。浄土真宗のお寺の『もう逃げられん』という標語は、どこにいたとしても阿弥陀仏の慈悲がつかみとってお浄土に連れていってくれるという意味なのですが、ダイヤモンドの連載で紹介したところ『阿弥陀仏って狂暴ですね』というコメントがあり、驚かされました。慈悲のありがたさを説いているのですが・・・(苦笑)」
江田さんはこの企画を始める前の数年間、ドイツの仏教伝道協会で奉職されていました。今回の企画の背景にはドイツで感じた問題意識もありました。
「ドイツでも教会離れがありました。伝統宗教はどこも布教があまりうまくいっていません。私も浄土真宗の布教使の資格は持っていますが、宗教者が一般人に伝えるというのは限界を感じています。それよりも一般人が同じ目線で広めてもらう。まさにtwitterのリツイート機能ですね。お坊さんが『この教えがいいでしょ』というよりも、社会的に影響力のある人が『これいいじゃん』と言ったほうが良いのです。これからの布教は、一般の方が教えを広めやすい環境を整えていくことが大切なのかもしれません。その意味でもSNSとは親和性があります。」
掲示板という縁側的機能
「今回の一番の発見は、掲示板を紹介・説明すると、公的に教えを紹介できるということでした。そうすることで、私でもタモリさんに紹介できるのです(笑)。ダイヤモンドオンラインでも摂取不捨を説くことができる。掲示板を説明するという体裁が、布教のツールになるのは発見でした。」
著作権法第46条には次のように書かれています。
屋外に設置された美術の著作物又は建築の著作物は、方法を問わず利用できる
どんな面白い企画でもトラブルは避けたいところ。外にある造形物には一切著作権がかからないということは、この企画を支える法的根拠となり、自信を持って企画を進めることができたそうです。
「檀家さんだけでなく、一般の方も掲示板を見ます。お寺離れと言われますが、お寺の前を通る人の数はそんなに変わらないと思うのです。お寺は檀家主体で動いていますが、一般の公共物として掲示板を活用すれば一般人にも布教できます。もっと掲示板の活用が広がると良いなと思っています。」
掲示板はクローズドな境内空間ではなく、お寺の門前に掲示板はあります。
お寺と社会の際(きわ)にある掲示板は、見た人がホッと一息つく、ある種の縁側的機能を果たしているのかもしれません
お寺の掲示板が誰かの人生を支えるものであってほしい
2019年1月21日の中国新聞「洗心欄」に、超覚寺(住職:和田隆恩さん)の掲示板が記事になりました。
そして、その記事を見た読者の声が、3月11日の投稿欄に掲載されました。長い闘病生活の中で、超覚寺の掲示板が心の支えになっていた方からの寄稿でした。
いつまでも続けていただき、心の支えであってほしい。私はあなたの文章と出合って強くなれた。生きる尊さを学んだ。
「この投稿を読み、お寺の掲示板大賞を始めて本当に良かったと感じました。掲示板が誰かの人生を支えるものであってほしい。その思いを再確認できました。今回もたくさんのご応募をお待ちしています。」
どの地域でも、誰かの心を支えているお寺の掲示板。今年はどんなドラマが生まれるか楽しみですね。
あなたも身近なお寺の掲示板を投稿して、お寺の掲示板大賞に参加してみませんか?
心に残る ささる お言葉で
もっと もっと 読みたい 知りたい
観てみたい と心から思いました。
長い間父はお寺の総代をして尽くされ
昨年旅立ちました。
寂しい思いでいっぱいです
まだまだ人に尽くして生きて行きたい私です