小林亜星さんのご逝去に接し。母を鼓舞する『ピンポンパン体操』(西法寺住職・西村達也)
2021.07.07
西村達也(にしむらたつや)
西法寺住職。1962年北九州市生まれ。龍谷大学文学部仏教学科真宗学専攻を’85年卒業。自坊法務の傍ら鎮西敬愛学園宗教科の非常勤講師を勤めた。’97年第十三世住職に。社会福祉法人慈恵会(済美保育園/旭ヶ丘保育園)理事長。
大ヒットした小林亜星さん作曲「ピンポンパン体操」
作曲家の小林亜星さんが5月30日に88歳でご逝去なさいました。私も子どものころから小林さんが手がけられた多くの歌に親しんできました。一時期は俳優としても活躍され、テレビドラマでの達磨さんのようなユニークな風貌は印象的でした。
『ママとあそぼう!ピンポンパン』という番組をご存じですか?
1966年から1982年までフジテレビで放送された子ども向けのテレビ番組で、一世を風靡しました。中でも1971年に番組で使用された『ピンポンパン体操』は大人気を博し、レコードはミリオンセラーの大ヒットとなりました。その曲の作曲者が小林亜星さんです。
私の父と母は、長年保育園に携わり、小林さんとも同世代です。『ピンポンパン体操』は当時の保育界でも大流行。イベントがあると参加者全員で歌に合わせて楽しく踊ったそうです。
ピンポンパン体操のフレーズで自らを鼓舞する母
母は間もなく87歳、「要介護認定者」です。元来明るい性格ですので家族も助かっていますが、その母が毎日口癖のよう自分を鼓舞する歌のフレーズがあります。
♬がんばらなくっちゃ~! ♬がんばらなくっちゃ~!
♬しゅりけん シュシュ ♬けむりが モックモク
50年前、当時の保育仲間と一緒に歌った『ピンポンパン体操』のフレーズです。
何かにつけ行動を起こすとき、つらい気持ちを切り替えるとき、必ずこのフレーズを口ずさみます。父も妻も娘も私も、母の真似をしていましたら、いつの間にか家族みんなの口癖になってしまいました。デイサービスの介護職員の方も少なからず影響を受けているような気がします。
ちなみに、小林亜星さんの訃報により、初めてこの曲の作者を知りました。作詞は当代随一の作詞家・阿久悠さんです。だからいつまでも忘れられない歌詞なのかと。この曲のおかげで父と母は楽しそうですし、家族も救われています。
ある日の朝に、小林亜星さんのお葬式を勤める
ある日のお朝事(朝の勤行)は、感謝の気持ちを込めて小林亜星さんのお葬式として勤めました。
浄土真宗の行動原理は「御恩報謝」です。私たちにそそがれた「阿弥陀様の恩」、「大自然の恩」、「ご先祖の恩」、「社会の恩」への感謝から、せめて私なりにできることをさせていただく。
報謝は「無限」です。あまりにも御恩が大きすぎて、到底報い尽くすことはできない、ゴールはないのです。また報謝の基本中の基本は、「お念仏を称えること」です。そして、自分なりに精一杯できることをさせていただきましょう。報謝は自分なりの「努力」でもあります。
「♬がんばらなくっちゃ~! ♬がんばらなくっちゃ~!」
今朝も二本杖を両手に本堂へ向かう母の声が、「御恩報謝、御恩報謝、せめてもの御恩報謝」と響いています。
この度の小林亜星さんのご逝去、謹んでお悔やみ申し上げます。今までもこれからも大変お世話になり、ありがとうございました。