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本堂荘厳のご一新に寄せて。阿弥陀様の教えに立ち返り、ご門徒さんを信じ抜く(西法寺住職・西村達也)

2021.05.14

西村達也(にしむらたつや)

西法寺住職。1962年北九州市生まれ。龍谷大学文学部仏教学科真宗学専攻を’85年卒業。自坊法務の傍ら鎮西敬愛学園宗教科の非常勤講師を勤めた。’97年第十三世住職に。社会福祉法人慈恵会(済美保育園/旭ヶ丘保育園)理事長。

西法寺寺院ページ

 令和3年1月15日。親鸞聖人しんらんしようにんのご命日の前日に、西法寺さいほうじの本堂のお飾りが一新されました。ご門徒様の力を集めて、ここに大変素晴らしいお浄土ができあがりました。
 
 本堂そのものは平成26年に新しくなりましたが、令和5年の親鸞聖人ご誕生850年、立教開宗りつきようかいしゆう800年の記念事業として、中のお荘厳しようごんやお仏具も、新調、修復させていただきました。

記念事業を「信頼」で貫く

 浄土真宗の本堂は、『仏説阿弥陀経ぶつせつあみだきよう』に説かれる極楽浄土ごくらくじようどを再現しています。漆、金箔、彩色、蒔絵まきえ、金具などなど、熟練の職人による伝統工芸の技術の粋を集めて、阿弥陀さまのおられるきらびやかな空間を作り上げていただきました。

 予算や実績などをもとに、日本各地から業者を選定することもできました。しかし、私たち内陣荘厳ないじんしようごん委員会は、西法寺のことをよく知っていただいている、古くから付き合いのある地元の仏具業者に一任しました。つまり、これまでの信頼関係を重視したのです。

 本堂の新築や仏具の新調は、多くの方のご支援がなければ成し得ません。みなさまからの信頼のもとに大きな期待と大切なお金を預かったわけですから、事業そのものを「信頼」で貫くべきと考えました。

 お参りに来られた方は新しくなったお荘厳を目の当たりにして、みなさん一様に感嘆されています。

神々こうごうしいですね」
「本堂全体が輝いていますね」

 目の前に広がるのはまさに極楽浄土。理屈を超えた世界の中で、この本堂にお参りに来られた人がおのおのに阿弥陀さまに出会えます。

地道な取り組みと己の弱い心との葛藤

 信頼でつながりたいという理想があるものの、現場にはさまざまな出来事があり、信頼関係を築いていくことは正に地道な取り組みであり、己の弱い心との葛藤でもありました。

 本堂の事業には莫大なお金がかかります。当初は私の説明不足に不安や反感をいだかれた方もありました。結果として一人でも不安を与えてしまっているのであれば、それはもうお寺の事業としては失敗だと思うのです。

「私は、ご門徒さんに安心してもらえるほどに何かを与えているだろうか」

 こんなことがありました。初めての老夫婦がお寺を訪ねて来られた。ご主人は昔ながらの真面目そうな方です。言いにくそうに直立不動で、「本当に失礼ですが、戒名料かいみようりようというのはいくらかかりますか?」と唇を震わせながらたずねられたのです。

 私はショックでした。本来安心を与えるべきお寺が、今この方々に不安を与えている。お寺の存在とはいったい何なのか。とてもすまない気持ちになりました。

 またある時は、足を引きずる障害を持たれたご主人が、一万円札を握りしめて体を震わせながら「わしにはこれだけしかない。こんなはした金、受けとらんと住職が言うならば、わしはもう寄付はせん」と仰る。
 私は誤解を解きたいと事業の理念・趣旨をお話ししました。金額ではなく全員が参画することに意味があるのだと、こちらの想いと心からの感謝をお伝えしました。すると最後には「今日は来てよかった。寄付ができるようになったらまたするけんね。」と笑顔で帰って行かれました。

 事業の期間中はこのようなことの連続でした。みなが汗水かいて手に入れた大切なお金です。だから不安も生じる。浄財じようざいの重みを突きつけられました。信頼という言葉を軽々しく使うのがはばかれるくらい、とてもきれいごとでは語れません。ただただ趣旨を伝え共感していただく。お金が絡むことですから、真剣な教化活動とも言えるでしょう。

信頼づくりのための読みやすい寺報を積極的に発行。門徒を交えた対談や座談会も行った
ご門徒さんと一緒に仏具の修復現場を訪問

愚かで弱い、ありのままの私たちを受け止めてくださる阿弥陀さま

 阿弥陀如来あみだによらいさまは私たちのすべてを見抜き、愚かで弱いありのままの私たちをこそ、分け隔てなく平等に見捨てず受け止めてくださっています。

 人を表面だけで判断し、決めつけてしまいがちな私。思い通りにいかず、人を悪く思ってしまう時には、その人のことをきちんと思い返すように努めました。みんなかけがえのないいのち。しかも精一杯生きている。そして仏さまから見れば、お互い煩悩ぼんのうだらけの愚か者ではないかと。

「私の知らない人生の背景があるんだろうなあ」
「みんな明日死ぬかもしれない命なんだよなあ」

 すると、あんなことを思って申し訳なかったなあという気持ちになり、その方のことが少しいとおしく感じられてくる。慈愛じあいと言えるほど立派なものではありませんが、ご門徒さんを愛おしく思えるようになるのです。ありがたいもんだなあと。

 西法寺の本堂を、ひとりでも多くの方々にありがたい仏さまの慈愛に気づいていただく場にしていきたいですし、それこそが住職の務めです。

 お寺は普段足を運ぶような場所じゃないのかもしれません。順風満帆じゆんぷうまんぱん、元気なうちはきっとお寺なんて用事はないんです。でも人生に行きづまったり、元気がなくなった時に、行く場所がないということほど寂しいことはありません。そんな時、ぜひともお寺にお参りに来てほしいと思います。

コロナ禍で直接会えないご門徒さんに向けた住職からの葉書

 荘厳施工の模様は西法寺のYouTubeチャンネルからご覧ください。

お寺画像
福岡県北九州市八幡西区
西法寺
「ご門徒さんは宝」を合言葉に─

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