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法事は「幸せ」のためにある! – 四十九日や一周忌の意義、お布施や喪服マナーの深層をなるほど解説【教えて!お坊さん】

2022.09.05


 家族や親族が集まって故人やご先祖様を供養する法事。久しぶりの再会を喜ぶ方もいれば、「法事なんて面倒くさい」と感じる方も少なくないのでは?

「世間体やお寺との付き合いのため」
「昔からのしきたりだから」
 法事にはこのようなマイナスイメージもあるようです。そして……

「どうして法事をしなくてはいけないの?」
「何回忌まで法事をすればいいの?」
「服装は? お供え物は? しきたりやマナーが全然わからない」

 こうした疑問が、まいてらにはたくさん寄せられます。このようなイメージや疑問について、法事を通じてたくさんのご家庭を見てきたお坊さんたちにぶつけてみました。すると、お坊さんたちは一様に、「法事を行うことで、たくさんの人が幸せになっている」と言うのです。お坊さんたちの言葉の中に、あなたが幸せになれるためのヒントが見つかるかもしれません。どうぞ最後まで読んでみてください。

赤ちゃん大歓迎 世代を超えたつながりがもたらす「安心感」

赤ちゃん大歓迎
 本堂に立ち込めるお香の香り、おごそかな雰囲気、そして「ごおおん」とおなかの中にまで響く鐘の音。いつもと違った場所で久しぶりに会う親戚同士の近況報告。

「元気にしてた?」
「最近肩と膝が痛くてねえ」
「前はあんなに小さかったのに、こんなに大きくなって」

 法事でよく見かける光景です。「どうして法事をしなくてはいけないの?」の問いに、普賢院ふげんいん品田泰峻しなだたいしゆん住職(青森県・真言宗)は、お経や儀式に加えて、こうした何気ないやりとりが大切だと答えます。

「定期的に行われる冠婚葬祭って、実は法事だけなんですよね。定期的に親戚同士が再会し、お互いが等しく歳をとっていることを確認しあうだけで、なんだかホッとするものです。小さなお子さんの泣き声などを気にされる方もいますが、子どもたちがいることで、『私たちはひとりじゃない』『命はきちんと過去から受け継がれて未来につながっていく』ということを肌で感じられます。ぜひ赤ちゃんにも一緒にお参りいただいて、その顔をみんなに見せてあげてほしいですね」

「世代を超えたつながりは、まさに浄土教が説く『無量寿むりようじゆ』の世界観に通じます」
 こう教えてくれたのは善光寺ぜんこうじ大久保瑞昭おおくぼずいしよう住職(北海道・浄土宗)。
「無量寿とは、永遠の仏さまの中で生きていくこと。私たちが生まれる前から亡くなったあとも命が続いていくことの実感が、大きな安心感となります」

法事はグリーフケア 亡き人の思い出をみんなで語り、みんなで聴く

 定期的に親族が集うだけなら、法事でなくてもいいように思えます。ですが、法事ならではのものに「法話」があります。法話は、お坊さんが話してくれる仏さまの教え。普段考えることのない死について、そして生きることについて向き合うきっかけとなります。

 法話と聞くと、お坊さんからの話を一方的に聞く光景を思い描きがちですが、超覚寺ちようかくじ和田隆恩わだりゆうおん住職(広島県・真宗大谷派)は、法話を参加者同士の語りの場にし、その中に「グリーフケア」の要素を見出します。

 グリーフケアとは、死別の悲しみを癒し、いたわること。このグリーフケアのために、和田住職が普段から意識して取り組んでいるのが、故人との思い出話です。法事のお勤めを終えたあとの法話では、必ず「故人様はどんな方でしたか?」「どんな思い出がありますか?」と聞くようにしているそうです。

「こちらからの問いかけに答える形で、ご遺族に、大切な方との思い出を語ってもらっています。胸の内にある想いを言葉にして外に放つことが、グリーフケアにはとても大切なんです」
 実は和田住職、今年(2022年)の1月に自身の父を亡くしています。葬儀では自らが喪主と導師を務めましたが、親族の受け入れ、葬儀社との打合せ、さらには自分自身で読経をしたため、ゆっくりとお別れをする時間がありませんでした。その分、落ち着いた雰囲気の中で行われた四十九日の法事で、初めて「本当のお別れ」を実感できたそうです。

「お勤めのあと、ふだんうかがっている故人との思い出話を、私自身の家族や親戚たちに向けて訊いてみました。すると、それぞれが父の思い出話を熱心に語り出してくれました。おかげでこれまで知らなかった父の一面を知ることができました。法事中、私も思わず涙が出てきました。葬儀の時は平気だったんですけどね。でも、泣けるって大事なんです」

 みんなで話し、聴き、笑い、泣く。ひとりで抱え込むのではなく、みんなで分かち合い、受け止め合うことで、その悲しみが少しずつ和らいでいくのかもしれません。

ろうそく

※四十九日忌・一周忌等、法事を承っている寺院はこちら

時間をかけて癒される悲しみ。法事を定期的に行う意味

 お葬式を終えたあとに行われる法事は、四十九日、百か日、一周忌にとどまらず、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌まで続き、地域によっては五十回忌や百回忌をするところもあります。なぜ、何度も法事をおこなうのでしょうか?

「長い年月には、死別の悲しみをゆっくりと癒してくれる効果もあります。そして定期的にお寺で法事をしてもらうことで、その癒しを再確認できるのではないでしょうか」

 大久保住職は、あるお檀家さんのエピソードを紹介してくれました。最愛の妻を失い、三回忌や七回忌の時には寂しそうにしていたお檀家さんが、十三回忌を終えた時には穏やかな表情をしていたのだそうです。

「明るい性格で、お寺にも親しく関わり、うちの息子の面倒もよく見て下さった方でした。ある日、急性くも膜下出血で突然この世を去ります。ご主人は常々『自分が先に逝くものとばかり思っていた』と話されていましたから、とても寂しくつらい思いをされたのだと思います」

 実は2年前(2019年)に、長男を13歳の若さで亡くした大久保住職。だからこそ、大切な人を亡くした方の、つらさや悲しみが分かると話します。
「僧侶の私ですら、現実を素直に受け止められず、『神も仏もないのだろうか』と考えてしまうこともありました。そのお檀家さんも、奥様を亡くされてからの12年間、さまざまな想いがあったはずです」

 これまで夫婦そろって参加していたお寺の行事に、ひとりになったあとも欠かさず参加しつづけたというお檀家さん。それはきっと、亡き妻の供養のためだったのだろうと、大久保住職は言います。

「まわりはご夫婦連れなのに、おひとりで寂しかったに違いないですが、きっと心の中で奥様がご一緒されていたのだと思います。時間をかけてゆっくりと大切な方の死を受け入れていく過程で、お寺を心の拠りどころにしてくれていたのでしょう」
 
 悲しみは長い時間をかけることでゆっくりと癒されます。しかし、ただ漫然と過ぎ行く時間に身を任せるのではなく、三回忌、七回忌、十三回忌と法事を重ねることで、そのつど立ち止まって、亡き人と自身の歩みを再確認し、また新たに歩みだすことができます。
 亡き人を胸に抱いて生きていく。お寺は、そんな私たちをそばで見守ってくれる伴走者なのかもしれません。

お供えの花

※四十九日忌・一周忌等、法事を承っている寺院はこちら

法事でもたらされる「幸せ」とは?

 ここまでお坊さんたちの話を聞いてきて、法事が悲しみを癒し、つながりを感じさせてくれるものだということが何となく理解できました。こうして個別の意義や意味がわかってくると、さらに一歩踏み込んだ、根源的な疑問が浮かんできます。

「そもそもなぜ法事をするの?」

 この問いをお坊さんたちにぶつけてみたところ……不思議とみなさん口を揃えて、冒頭でもご紹介した、この答えを返してくれたのです。

「法事は、幸せのためにある」

 では、「幸せ」とは、いったいどういうことなのでしょうか。
 まいてら編集部は、この素朴な疑問を龍泰寺りゆうたいじ宮本覚道みやもとかくどう住職(岐阜県・曹洞宗)に尋ねてみました。幸せって、何ですか?

「モノやお金が満たされることが幸せという考え方もあるでしょう。でも、本当の幸せは、自分の存在が承認されること。自分は決してひとりじゃないんだと、感じられることではないでしょうか。亡き人とのつながりという縦糸、久しぶりに再会した家族や親戚とのつながりという横糸。法事は、この縦糸と横糸、2つのつながりの糸を編み込むために行うように思います。法事をすることで、自分がたくさんの人とつながっていることを実感でき、自らの存在が承認されることを感じられるのです」

 また別の視点を教えてくれたのは、普賢院の品田住職。

「幸せとは、執着から解放された穏やかな状態のことではないでしょうか。私たちは、家事や仕事など、毎日が何かと忙しく、ついつい目の前のことにとらわれてばかりです。でも、法事を通じて、亡き人やご先祖様と向き合うことで、自分たちが悠久の時間の中に生きていることに気づけます。大きな視点に立つことで、穏やかに自分自身と向き合えます。たまに海を見たくなって、大きな海を目の前にすると、小さな悩みがちっぽけに思えますよね。法事の良さって、あの感覚に近いのかもしれません」

品田住職

幸せにつながる法事のマナー Q&A

 法事にはたくさんのマナーやしきたりがあります。実はこれらも、本来は、この世に生きる私たちの幸せのためにあるのだそうです。形式だけが重要なのではありません。法事のマナーの本当の意味について、お坊さんと一緒に考えてみましょう。

Q. 故人の好物をお供えしてもいいですか?
  →A. OKなこともある
 仏教では殺生せつしようが禁じられ、飲酒をいましめる教えもありますが、肉や魚、お酒などが亡くなった方の好物だった場合は、これらをお供えしてもよいのでしょうか?

「檀家さんから故人の好物だったうなぎをお供えしてもよいかと訊ねられた際には、『いいですよ』とお答えしました」と話すのは宮本住職。ご家族に、ものすごく喜ばれたそうです。
「殺生したもののお供えには賛否両論ありますが、ご家族が供養の想いを込めてお供えするのであれば構わないと私は考えます。故人様が喜ぶ姿を思い浮かべることで、この世に生きる私たちも嬉しい気分になりますからね」

 ただし、こうしたケースはあくまで檀家さんとの関係性があってのこと。考え方はお坊さんによってさまざまなので、気になる方は必ず法事をお願いするお坊さんに確認しましょう。

 品田住職は、「供養とは、亡き人のことを思い出すこと。亡くなった方の好物が、そのままその方との思い出を蘇らせてくれる」と話します。そう考えると、「おじいちゃん、どんなものが好きだったかな」と、お供え物を選んでいる時から、すでに供養は始まっていることになりますね。

お斎

Q. 喪服でないとダメ?
  →A. 形式よりも、しっかりお参りする心を大切に
 本来、喪服は家族が喪に服するためのものでした。けれども昨今では、葬儀に加え、法事に参加する際の礼服として着用されています。法事でもやはり、喪服を着用すべきなのでしょうか?

 喪服の持つ役割を、大久保住職は「気持ちのスイッチ」だと話します。「法事は故人様を敬う特別な日です。だからこそ普段と異なる特別な服を着ることで、参加者ひとりひとりがきちんとした想いで法事に臨めます」
 場に適した服装で身なりを整えることで、亡き人やご先祖様に向かう私たちの心も整うようです。

 ただし、最近では家族だけの法事が多く、喪服を着用しないケースも少なくありません。
 和田住職によると、「四十九日までは喪服を着用される方が多いですが、それ以降はほとんどの方が平服で、特に違和感も感じません」とのこと。宮本住職も同様に、「形式よりもしっかりとお参りすることが大切なんですよ」と話します。

 とはいえ、法事は大切な儀式です。「平服でも、場の雰囲気を乱すことがないよう、カジュアルな服装は控えましょう」と品田住職。黒や紺やグレーを基調とした落ち着いた色柄が望ましいそうです。ご家庭や地域の慣習もあります。迷ったら、まずは菩提寺に相談してみましょう。

法事の参列者

Q. 法事はいつまで行うべき? 身寄りがいない場合はどうする?
  →A. 地域や家庭によりさまざま。永代供養という選択肢も
 私たちは長い時間をかけて法事をすることで、大切な家族の死をゆっくりと受け入れていきます。

 法事は古くから、ほとんどの地域で三十三回忌まで行われ、このたびお話をうかがった4人のお坊さんのお寺では今もこの慣習が続いているようです。「広島ではほぼ100%のご家庭が三十三回忌までしています」と和田住職。「うちの地域(岐阜県)では、三十七回忌まで行いますよ」と宮本住職。風習も、ところ変わればです。

 しかし最近では、法事を三十三回忌まで行わない家や、身寄りがなくなって法事そのものができないご家庭も増えています。

 そんな時こそお寺に相談してみましょう。永代供養などの方法を提案してもらえるはずです。品田住職はこう言います。「お骨の預かりや永代供養のご相談は、近年増えてきています。永代にわたって丁寧なご供養をするので、どうぞ安心してお預けください」

お香

Q. お布施はいくら包めばいいの?
  →A. 相場はいくつかパターンあり。悩んだらまずはお寺に相談を

 法事のお布施は、お坊さんへの謝礼であるばかりでなく、亡き人の供養や家族親戚とのご縁への感謝の気持ちを形にしたものです。安すぎると「これくらいでいいのかな?」と不安が残りますし、高すぎるとせっかくの法事の機会そのものが負担に感じられてしまいます。お布施は、納得感を持って包むのが理想です。

 では、具体的にどうやって金額を決めたらいいのでしょうか。地域やお寺によってさまざまですが、法事のお布施には、大きく分けると次のようなパターンがあります。

  • 金額を明示するお寺
  • 檀家の中でお布施の額を決めているお寺
  • 平均的な目安を示しつつも、お気持ちに任せているお寺
  • 完全にお気持ちに任せているお寺

 相場も地域や寺院によってさまざまです。全国的には3万円前後の地域・寺院が多いと考えられますが、1万円程度という地域・寺院もあれば、5万円前後という地域・寺院もあります。
 まいてらのお坊さんたちはみな一様に「ご家族それぞれに色々な事情があると思います。悩んだ時には事前に相談してほしいです」と話します。みなさんのご事情を聞きながら対応してくれるので、金額に悩んだときは、まずお寺に相談してみましょう。

※四十九日忌・一周忌等、法事を承っている寺院はこちら

法事によってもらたされる安心感、自分を取り戻す時間

 お坊さんたちが口々に語ったこの「法事と幸せ」の意味を、みなさんはどう受け止められましたか?

 法事は、定期的に行うことによって死別の悲しみを長い時間かけて癒やし、仏様に見守られながら「私は決してひとりじゃない」「ご先祖様がいて私がいる」という実感が得られるものです。また、忙しい毎日ではかえりみることが難しい自分自身と向き合い、本来の自分を取り戻す機会ともなるのです。
 どうぞあなたも、まっさらな心持ちで法事に参加してみませんか。仏様やご先祖様、そして家族や親戚とのご縁をきっかけに、「幸せって何だっけ?」と、大切なものを見つめ直すことができるでしょう。

※四十九日忌・一周忌等、法事を承っている寺院はこちら

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