「戒名」を読み解く 〜その1〜(妙慶院住職・加用雅信)
2021.09.27
加用雅信(かようがしん)
妙慶院住職。広島〜東京〜LA〜広島在住。茶話坊主と称してお茶をしながら話を聴くひと時を愛する。坊主BAR、坊主café、寺カフェなど主宰。カウンセリング、傾聴、グリーフケア他も。実はデザインやアートが大好きで、ブログを毎日更新中。推しはサンフレッチェ、カープ、ドラゴンフライズ。
これは有名人の戒名です。どなたか分かりますか?
まいてらでは、2019年の9月に大阪の浄土宗應典院で行われた「第2回おてら終活祭」で戒名について考える場を設えました。私も現地へ赴いてお坊さんたちによるトークセッションと、ご来場の皆さまと生前戒名を考えるワークショップに参加しました。(戒名、法名、法号、いろいろ呼称がありますが、ここでは「戒名」で統一します)。
コロナ禍になってオンラインでの催しが盛んに行われるようになりました。まいてらでも、戒名について考えるオンライン「戒名カフェ」を企画し、みなさんそれぞれが自分自身の戒名について考えるきっかけとなる場を開催することにしました。
一昨年の應典院でのトークセッションでは、名前を伏せて有名人の戒名を紹介し、それが誰の戒名なのかを考えてもらうコーナーがありました。パッと見てすぐ分かる戒名もありますが、なかなか分かりづらい戒名もありました。ご来場の皆さまはとても興味津々といったご様子で紹介を聞いていらっしゃいました。
このたびのオンライン「戒名カフェ」でも、有名人の戒名を紹介する「戒名を読み解く」コーナーを企画しています。まいてらのお坊さんたちが、有名人が授かった戒名には、どのような想いが込められているのか、戒名から読み解いていくものです。
こちらの戒名は、恐らく誰もが映画やテレビでご覧になったことがある方が授かったものですが、この「優月院漣奏球孝信士」はどなたの戒名か分かりますか?
戒名に込められた想いを読み解いていく
これは平成30年2月21日に享年68で逝去された、俳優の大杉漣さんの戒名です。上から4文字目に芸名の「漣」が入っています。特徴的な字ですから、すぐに分かったという方もいらっしゃることでしょう。
では、次に戒名を分解して考えていきます。以下のように院号・道号・戒名・位号の4つに分けることができます。
「優月院」……これは院号とよばれる部分で、社会的に大きな功績を成した方や、お寺に多大な貢献をされた方に対して授けられるものです。
「漣奏」………これは道号とよばれる部分で、現代はほとんどの方が授かっていらっしゃいます。
「球孝」………ここが戒名とよばれる部分で、本来はこの二文字のみが戒名ですが、全体を戒名と総称することがほとんどです。
「信士」………これは位号とよばれる部分で、「信女」「居士」「大姉」など戒名の下に添えられるものです。
さて、「漣」というのは芸名から授かったものですが、その他の「優」「月」「奏」「球」「孝」の5文字にはどのような想いが込められているのでしょう。
それぞれの文字が選ばれた理由を考えていくと…
大杉漣さんの戒名を読み解くうえで最も参考になったのは、いろんな方の書き込み情報が集められているフリー百科事典「ウィキペディア」のサイトでした。
「優」………これは「優」しい眼差しやお人柄をイメージして授けられたのだと思います。
「月」………多くの映画やドラマなどで主役を照らす名脇役でいらしたことから「月」が添えられたのだと思います。
「漣」………芸名の「漣」です。雅号や俳号などをお持ちの方はここに入ることがよくあります。
「奏」………主な趣味が音楽とスポーツで、音楽はエレファントカシマシのファンであり、ギターやブルースハープでフォークソングを演奏されていたそうです。
「球」………高校時代はサッカー部に所属し、地元徳島ヴォルティスの熱狂的ファンでした。国内リーグも海外リーグも精通し、ゲスト解説も多数つとめられました。
「孝」………戒名の部分には名前の一文字を入れることがよくありまして、ここに本名の「孝」が添えられています。
いかがでしたでしょうか。有名人の戒名を試みに読み解いていくと、戒名の成り立ちがよく分かります。ひいては、自分の戒名を考えてみるとき、とても参考になることでしょう。
まいてらでは、2021年10月10日(日)、10月25日(月)、11月4日(木)と、3回にわたりお坊さんたちと戒名について話すことができる場をオンラインで開催します。有名人の戒名だけでなく、実際にまいてらのお坊さんたちが授けた戒名の実例も紹介するコーナーがあります。ぜひ一度あなた自身にふさわしい戒名を自分自身で考えてみませんか。オンラインでお待ちしています。
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