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【お寺づきあいマメ知識】番外編 お寺からのお土産は驚きがいっぱい

2019.12.09

 前回まで、お寺へ持参するのにおすすめな手土産やその理由をご紹介してきました。今回は番外編として「お寺の方からいただく手土産」について、ちょっと意外な側面や、お寺ならではの背景を見てみましょう。

開けてびっくり! 発泡スチロール箱の中身は○○

 お寺はわりとお土産文化がしっかりあるので、逆にお寺の方から記憶に残るお土産をいただくことがあります。
 京都で、あるお寺のご相談に応じた時のこと。別れ際に「井出さん、今日は家に帰られますか?」と訊かれました。
 「はい」とお返事をしたところ、「これをどうぞ」と、発泡スチロールの箱を手渡されました。「帰ってからのお楽しみです」とのことで、新幹線の車中で気になって仕方ありませんでした。

その時の発泡スチロール箱。ずっしりと重さが……

 帰宅して開けたらビックリ仰天。なんと、立派なメスの越前 えちぜん ガニがたくさん入っていて、妻とどうやって食べようと相談した記憶があります。私があの時「いや、まだ回るところがあって今日は帰らないんです」と答えていたら、あのカニはどうなっていたのだろう……と、今でも不思議に思います。

 また、冬に秋田県に行った時は、夕飯でいただいたハタハタが絶品でした。東京では味わうことのできない、新鮮な身と卵のプリプリ感。
 あまりにも美味しかったので、お土産に欲しいと思い、代金着払いで送ってもらえないかとお寺の方にお願いしました。

その時のハタハタ。ほんとうに美味だった

 そして、後日。届いた荷物がやたらに大きい。開けてみたら、なんと60尾ものハタハタが入っていて、腰を抜かしました。ハタハタは傷みやすいことで有名です。こんなに足の早い魚を、私たち夫婦だけで60尾も食べられないと思い、あわてて近所の方におすそわけをしました。
 お寺の方に御礼のお電話をしたところ、「いやー、今年は不漁で少ししか送れなくてごめんなさい」とのこと。「少し」という言葉の意味も、所変わればさまざまだなと思いました。
 もちろん、いただいたハタハタは絶品で、またいつか秋田に行きたいと思う味でした。

住職は地域の観光大使

 とても記憶に残るお菓子もあります。
 山梨県のお寺にお参りした際、「かりんとう饅頭 まんじゆう 」をいただきました。カリカリと揚がった黒蜜 くろみつ 生地の中に、しっとりとした餡子あんこが入っていて、その美味しさに、実は甘いものが苦手でふだんほとんどお菓子を食べない私が、思わず何個も食べてしまいました。
 日が経つとカリカリ感が落ちるため、あの美味しさは現地におもむいた時ならではのものだそうです。いつかまた訪れて、味わいたいと思っています。

老舗すがやの「かりんとう饅頭」

 お寺からいただくお土産を通じて、次のように感じます。

  • お寺の方は、地域の誇る名品を知り尽くしている
  • 気持ちを表す「量」と「やり方」が、時に一般企業などの感覚では想定外なことも
  • すべては相手を喜ばせようという気持ちからきている

 さまざまな場面でお寺との交流を重ねてきて、地域に重層的なご縁を張り巡らしている住職やお坊さんは「地域の観光大使」でもあると感じます。
 利害関係抜きで、純粋に地域の良さを多くの人に知ってほしいという思いが、とても伝わってくるのです。
 贈り物を通じて、心を伝えようとするという文化。お寺だけでなく、日本社会のあちこちでこれからも育まれていってほしいものですね。

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