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般若心経④ 写経の灯 蛾が金粉を 打ちにくる ‐ 一向寺 住職 東 好章さん(栃木県佐野市)

2020.05.15

 世の中に不安や災いが満ちているこんな時こそ、写経に打ち込んでみるのはいかがでしょうか。浄土宗・一向寺いつこうじ(栃木県佐野市)のあずま好章こうしよう住職が、お祖母様の思い出とともに「般若心経はんにやしんぎようを書き記す」ことの意味を語ってくれました。

東好章(あずまこうしょう)

都内にて不動産デベロッパーの管理職やファイナンシャル・プランナーとして勤務した後、父である師僧の跡を継いで一向寺第38世の住職に就任。自死・自殺に向き合う僧侶の会や、悩み相談サイト『hasunoha』回答僧侶として活動中。

一向寺寺院ページ

多忙な日々の中、写経に打ち込んだ祖母の句

祖母を思い出しながら金字で写経

 私はお寺に生まれましたが、お寺で育ったのはわずか約3年程度でした。母の実家で生活し、祖母に育てられて成長しました。
 大正生まれの祖母は、非常に我慢強い控えめな性格でした。戦争を耐え忍び、たくさんの子どもを抱えて必死に生き抜きました。そして心身ともにひ弱な私を、優しく育ててくれました。

 その祖母の趣味は般若心経の写経と俳句でした。祖母は日々の忙しい合間をぬって、写経にいそしんでいました。夜の灯の中で、一生懸命に写経に打ち込む祖母の姿が今でも目に浮かびます。

 祖母の作った俳句に「写経の 金粉きんぷんを 打ちにくる」という句があります。
 仏様の尊い教えである般若心経を書き記していると、その灯をたよりに蛾が寄ってきて飛びまわり、羽根の粉つまり鱗粉りんぷんがひらひらと落ちて光にあたり、金粉をくように見えるという情景を描いています。お経は仏様の教えですから尊い黄金のように価値がある、あるいは蛾の鱗粉も金粉に変えてしまうほどの功徳くどくがあるということを、祖母は心に留めて写経していたのです。

 祖母がどれほど般若心経を理解していたのかは定かではありませんけれども、その書く一文字一文字を御仏の教えとして受けとめ、日々の辛く苦しい生活をなんとか生き抜いていくかてとしていたのだと思います。

一文字一文字じっくり書き記し、味わう般若心経

 般若とは智慧ちえです。心経とは真の教えです。お釈迦様がお悟りを開かれ真理を体得なさり、真理つまりその真の智慧をもって法を説き、多くの人々をお導きになりました。
 その後、仏様の教えとして八万四千の法門が説かれ、あまたの仏弟子が生まれて仏教は広がっていきました。お釈迦様がお亡くなりになられた後も、さまざまな高僧が研鑽けんさんを積んで、南方と北方に分かれ仏説として世界中に伝わっていきました。

 いま私達は、その仏様の教えを受けとり生きています。私達が生きているさ中で、その般若である真の智慧を理解することはなかなか難しいかもしれません。日々の生活の中で「一切皆苦いつさいかいく」「諸行無常しよぎようむじよう」「諸法無我しよほうむが」「涅槃寂静ねはんじやくじよう」をありのまま受け入れることは、生身の人間である私達にはなかなかできないことですからね。私達の迷いの心が邪魔してしまいます。私達に理解できるのはもしかしたら「一切皆苦」つまり「すべては思うようにはならない」といことくらいかもしれません。

 とはいえ、そのような真理に巡りあい、知りうる機会を得たのはとてもありがたいこと、かけがえのないことかと思います。私達があまた不思議なご縁に結ばれてこの世に生を享け、仏様の教えに出あえたことは本当に奇跡的なことですからね。
 般若心経の一文字一文字をじっくりと心を込めて書き記す中で、少しずつ仏の教えである真の智慧、つまり般若を受けとめていき、体得していけるのではないでしょうか。

 私の祖母も、今はもう極楽浄土に往生おうじようし、仏様の前で親しい方々やご先祖様方と一緒に、心おきなく安らかに写経にいそしんでいるのではないかと思います。
 新型コロナウイルスの災いが世界中を覆い、不安や恐怖や苦しみを人々に与えているさ中ではありますが、ご自宅にて心を落ち着けてしばし写経に打ち込んでいただき、この世の災いや不安から離れ、真の智慧に向き合い仏様の教えを体得なさってくださいね。
 どうかこれからも、共に仏様の教えを信じ、仏弟子として日々精進していきましょう。

 至心合掌 南無阿弥陀仏

【まいてら編集部のおススメ】ご自宅で般若心経の写経をしませんか?

 以下リンク先から台紙をダウンロードし、プリンターで印刷します。その上に写経用紙、または半紙を置き、透けて見えるお手本の文字をなぞるようにして写経しましょう。
 外出やお参りができるようになりましたら、どこかのお寺に奉納されてはいかがでしょうか?

※般若心経の台紙ダウンロードはこちら

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まいてら住職

まいてら住職

まいてら登録寺院のお坊さんを総称して「まいてら住職」と言います。まいてら新聞では、それぞれのお寺の魅力を発信したり、皆さんの疑問・お悩みにどんどんと応えていきます。

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