お寺のペット供養とは? 安心できるペットの葬儀・お墓を解説【教えて!お坊さん】
2025.04.22
大切な家族の一員であるペットが旅立ったとき、あなたはどう送り出してあげますか?
手厚く供養してあげたい気持ちはあっても、「何をどうすればいいのか」「安心できる業者や霊園が分からない」と、悩まれる人も少なくありません。
そんな中で近年、お寺でのペット供養が注目されています。仏さまに見守られながら、住職が読経をし、心を込めて供養をしてくれる——まさに家族の一員として、しっかりと送り出すことができるのです。
まいてら編集部は、ペット供養を行っている4寺院に話をうかがいながら、お寺ならではのペット供養について詳しくご紹介いたします。
この記事を読むことで、ペットを安らかに送り出し、心おだやかな供養ができます。大切なペットの旅立ちをあたたかく見守るためにも、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

成田淳教(浄土宗・感応寺 住職)
昭和50年世田谷大吉寺生まれ、平成7年佛教大学別科修了、平成12年大正大学卒業、平成13年感応寺住職晋山、浄土宗東京教区青年会会長、関東ブロック浄土宗青年会理事長、全国浄土宗青年会理事長を歴任、動物供養協議会理事、浄土宗東京教区開宗850年推進委員

和田隆恩(真宗大谷派・超覚寺 住職)
1967年京都府生まれ。山形大学理学部卒業。証券会社で勤務。30歳で脱サラし、親戚筋の超覚寺に入寺、45歳で住職継職。遺族の分かち合いや傾聴相談など地道なグリーフケア活動を続ける。認定臨床宗教師。

村井麻矢(浄土宗・専求院 寺庭婦人)
専求院 寺庭婦人。終活カウンセラー、エンディングノート書き方講師として、ラジオ、新聞、講演などを通じて幅広い年代に終活の大切さを伝えている。2年間の新聞連載をまとめた著書『終活はじめませんか』(東奥日報社)がある。

千田明寛(天台宗・最明寺 副住職)
昭和63年3月17日生まれ 法政大学法学部国際政治学科卒業後、比叡山延暦寺にて加行。26歳の時に天台宗開教使としてインドへ一年間の留学を経験。特技はヒンディー語。
増えるペット供養。その社会的背景
最近は、家族同様にペットと暮らす人が増えています。とある調査では、ペットを飼った経験のある人の約7割が「ペットは家族と同等である」と考えているそうです。
そのため、亡くなったペットに対しても、葬儀や法要を通じて手厚く弔う風潮が広がっています。この変化には、どのような社会的背景があるのでしょうか。
感応寺(東京都・浄土宗)の成田淳教住職は、ペットの”室内化”が進んだ結果、ともに過ごす時間が増え、それが家族としての結びつきを強めていると考えます。
「核家族化や単身化により、多くの人が家族よりもペットと過ごす時間の方を長く感じています。そのためか、ペットとのお別れに際して、『親の時以上に悲しい』と表現する人も少なくありません」
住環境や都市環境の変化に注目するのは超覚寺(広島県・真宗大谷派)の和田隆恩住職。「昔は家に庭があることが普通で、近くに森や山もありました。しかし現代の都市環境では埋葬のための適切な場所がないため、ペット火葬が普及していったのでしょう」と述べます。
また和田住職は、親戚の葬儀や法事に参加する機会が減っていることから、ペット供養が新たな情操教育の場としての役割を果たしているとも考えます。
「ペットの最期を看取ることは、命そのものに触れる経験です。特に子どもにとって、心を育む貴重な機会となるのではないでしょうか」

まるで人間同様。ペットの家族葬
ペットも家族の一員として大切にされるこの時代に、本格的な”ペットの家族葬”を提供するお寺があります。感応寺の『せたがやペット斎場』です。
3基の火葬炉と美しい祭壇の飾られた式場は、まるで人間の葬儀会館そのものです。館内の足元や壁面には大理石が施され、明るく清潔感のある空間が広がり、最期の時間を心静かに過ごせるよう配慮されています。
「すべての命が等しく救われるようなお寺にしたい」と成田住職。葬儀では浄土宗の伝統的な儀式が執り行われ、その後の火葬や埋葬も、職員のサポートを受けながら手厚く行われます。

本格的な火葬炉や葬儀会館を備えたお寺は珍しいですが、火葬後の焼骨をお祀りして、葬儀を執り行うお寺は少なくありません。専求院(青森県・浄土宗)もそのひとつです。
「もともと青森県は”後火葬”の地域です。”通夜→火葬→葬儀”という流れが一般的で、これはペットの場合も同じです」と専求院の村井麻矢さん。
お寺の本堂は極楽浄土を再現した空間です。仏さまの前にお骨を安置し、荘厳な雰囲気の中で響くお経の声は、亡くなったペットへのやさしい祈りとなり、家族の心をより深く慰めてくれます。
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ペットロスを癒してくれるお寺空間
大切な家族を亡くした悲しみはお葬式のあとも続きますが、継続的なお参りがグリーフケアにつながるのは、人もペットも同じです。
「小江戸」として知られる埼玉県川越市。入間川沿いに広がる県内屈指の自然公園「川越水上公園」は平日から多くのペット愛好家でにぎわい、すぐそばにある最明寺(天台宗)も、散歩ルートの一部として親しまれています。
境内に建つのは、ヨーロッパのお城をモデルにした、ひと際目立つペット専用の『アニマルヒル合同墓』です。

千田明寛副住職は、「今から約30年前、ペット供養そのものがまだ珍しかった時代に、動物好きの住職が、構想からデザインまで自ら手がけました」と、その誕生秘話を語ります。
「仏教の慈悲は、生きとし生けるものすべてに向けられるもの。住職と同じく私も動物が大好きなので、このお墓には特別な思い入れがあります」
花手水で知られる最明寺はインスタグラムの”映えスポット”としても人気。「お墓参りとあわせて、公園での時間やお寺での様子を投稿される方もしばしばです」と千田副住職。お墓参りが日常の一部として取り入れられることで、ペットロスもゆっくりと癒されていくようです。

専求院の村井さんは、車で行くには遠い距離を、あえて徒歩でお参りする女性のエピソードを語ってくれました。
「代々の猫ちゃんをこちらで供養されている方です。『私が元気でいなければ、この子たちをお参りする人がいなくなってしまう』と、健康のために、あえて歩いてお参りされているんです」
ペットは家族の一員です。亡くなった家族への想いが心の支えとなり、日常を彩り、生きる活力となってくれていることを物語ります。
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多様化するペットのお墓
かつては「山や海に埋める」「川に流す」のも珍しくなかったペットの埋葬。しかし現在では、お墓への埋葬が一般的となり、永代供養墓や納骨堂、さらには樹木葬と、そのかたちもさまざまです。
お墓のタイプ別に、それぞれの特徴や魅力をお坊さんたちにうかがいました。
【ペット永代供養墓(専求院)】
永代供養墓とは、ひとつの場所に他のペットの遺骨をともに埋葬するタイプ。「合葬墓」や「集合墓」などとも呼ばれ、比較的費用を抑えられるスタイルです。
専求院のペット永代供養墓は『ヤマボウシ』と名づけられています。「”友情”という花言葉の通り、たくさんのペットたちが共に眠り、いつ来ても絆を感じられる空間にこだわりました」と村井さん。
利用者の方がそっと置いていった動物たちの置物も少しずつ増え、訪れるたびに温かいつながりを感じられます。
【ペット個別墓(最明寺)】
最明寺の『アニマルヒル合葬墓』の手前には、『アニマルヒル個別墓』が並びます。
個別墓とは一家ごとにひとつのお墓を持つ形式。「わが家だけのお墓を持ちたい」「歴代のペットたちを同じ場所に納骨したい」と考える方におすすめです。
黒やマホガニーなど、色とりどりの墓石には、ペットの名前や特別なメッセージ、生前の愛らしい姿が彫刻されており、これらを見るだけで、家族の深い愛情が感じられます。

【ペットと一緒に眠れるお墓(感応寺・専求院)】
かつては「人とペットは同じお墓に入るべきではない」と考えられていました。
しかし近年、”ペットとともに眠るお墓”を求める声が高まり、そのニーズに応える霊園やお寺も、少しずつ見られるようになってきました。
「感応寺にあるお墓は、すべてペットと一緒に入ることができます」と語る成田住職。
ペットと共に埋葬できる一般墓区画『プラスペット墓』は、都心という立地のため高額な永代使用料が設定されていましたが、それにも関わらず、10年で150区画がほぼ完売し、残りは4区画とのこと(2025年4月現在)。
「希望者には私の実家のお寺でも新たに始めたプラスペット墓や、ペットと一緒に入れる永代供養墓を案内しています」という成田住職のことばから、ペットと一緒に眠りたいというニーズの高さがうかがいしれます。

また、専求院の個室墓「ナナカマド」も、人とペットを同じ場所に埋葬できるコンパクトなお墓です。カロート(お骨を納める空間)には最大4柱までの骨壺を納められ、墓石には好きなことばやデザインを彫刻できます。
【ペットの納骨堂(感応寺)】
近年人気を集めている室内納骨堂。天候に左右されずにお参りができ、建物の中で守られる安心感は、人もペットも同じです。
感応寺会館の2階には、ペット専用の納骨壇が並びます。「わが家だけのお墓を希望する人が、意外と多いようです」と成田住職。
売れ行きも好調で、それぞれの区画には、あふれんばかりの写真や遺骨、お供え物や思い出の品々。その一つひとつから、それぞれの家族の深い愛情が伝わってくるようです。
また、正面の扉は透かしガラスや障子紙で覆われており、中が見えないよう配慮されているのも、利用者にとって安心できるポイントです。

【土葬するペット樹木葬(超覚寺)】
超覚寺のペット墓は、土葬する樹木葬。境内の菩提樹のそばには、たくさんのペットたちが静かに眠っています。
超覚寺では、江戸時代から動物の埋葬が行われていたそうですが、原爆によって灰燼に帰し、その存在は忘れられていました。その後約70年を経て、当時の方法をそのままに、土葬の樹木葬を現代に蘇らせました。
埋葬当日は自ら穴を掘って家族を待ち受けるという和田住職は、土葬ならではの魅力を次のように語ります。
「火葬せずに自然に還したいと願う方も少なからずおられます。大切なウサギを火葬できずにうちに持ってこられた方は、土へと還っていく姿を見て、深く安堵されていました」
埋葬されたペットは、やがて菩提樹の一部となっていきます。お参りのたびに、家族は菩提樹を見上げ、ペットとのなつかしい日々を思い出すことでしょう。
※ペット供養を承っている寺院はこちら
お寺だからこその安心感とは
ここまで、お寺で行われるさまざまなペット供養をご紹介してきました。
自治体の動物供養や民間のペット霊園にはない、お寺ならではの魅力は、「信頼できるお坊さんが、継続して管理・供養してくれる安心感」ではないでしょうか。
専求院の村井さんは、「雪が積もらない限り、毎日永代供養墓の前でお経を唱えています」と話します。顔が見える関係の中で、つながりを大切にしながら、ペットの安寧を願ってくれるお坊さんの存在は、何よりも心強いものです。
さまざまな人が集うお寺は、やがて同じ想いを持つ者同士の絆を生みだします。
感応寺では、年に2回の合同法要に約500人もの人々が参列し、亡きペットを偲びます。
(※感応寺の動物供養大祭の記事はこちら)
「ペットロスに寄り添いたいと、散歩仲間の方がペット同伴でお参りされたこともあります。かわいらしいポチ袋に御香典を包み、そこにペットの名前を書いて手渡す姿は、とてもほほえましい光景でしたね」と成田住職は語ります。

お寺は、仏さまに見守られながら、何世代にもわたって続いていく場所です。
超覚寺の和田住職が江戸時代の動物供養を現代に復活させ、最明寺の千田副住職が父の想いを受け継いでペット墓を管理するのも、お寺が「時を超えてつながる場所」だからこそ。
ずっとそばにいてくれるお坊さんという存在、時代を超えて仏さまに守られ続けるお寺という空間が、家族にとって何よりの安心となるのです。
※ペット供養を承っている寺院はこちら
わたしたちを幸せにするペット供養
いかがでしたでしょうか。
このようにお寺でのペット供養は、ただの火葬、ただの遺骨の保管にとどまらず、ペットロスを癒し、深い絆を再確認し、よりよく生きていくきっかけとなってくれるものです。
わたしたちを幸せにするペット供養——それが、お寺ならではの良さではないでしょうか。
大切なペットを手厚く供養したいと考えている方は、まずはペット供養をしてくれるお寺に相談することをオススメします。
もしも身近にそうしたお寺が見つからない場合は、インターネットで検索してみましょう。
『まいてら』にも、ペットを大事に供養してくれるお寺がたくさん掲載されています。
この記事が、あなたとペットの絆を深め、穏やかな日々の一助となれば幸いです。
※ペット供養を承っている寺院はこちら