理想の「葬儀」とは?私はこうして見送られたい(足立信行・T-sousai代表)【死に方のココロ構え③】
2022.02.18
足立信行(あだちしんぎょう)
株式会社 T-sousai 代表取締役社長。1982年、京都府生まれ。在家の家に生まれる。18 歳の時に高野山で僧侶になることを決意。2005年高野山大学人文学部密教学科卒業。2006年高野山専修学院卒業。2007年高野山金剛峰寺布教研修生修了。高野山で修行をする中で僧侶や寺院の役割を考え、一度下山。葬儀の重要性に気づき、2008年 大手互助会系の葬儀会社に入社。葬儀の担当者となり、年間約 120 件の葬儀を手掛ける。2012 年IT 企業に入社。エンジニアとして活動。2017年、僧侶と葬儀会社の担当という経験から、お互いが遺族や故人のために協力し祈りの場所として本堂などで葬儀をあげ、安価で心あるお寺葬の構想を企画。葬儀の告知、WEB、導入などから実施、施行までをワンストップできる株式会社 T-sousai を創業し、現職。
※前回(時代とともに変わる「葬儀」と「お葬式」)はこちら
葬儀は「僧侶」を選ぶことが大切
今回は私が理想とする「葬儀」に関してお話しします。前回で葬儀とお葬式は違うことをお伝えしました。葬儀は僧侶が司る儀式そのもので、お葬式は葬儀社が取り仕切る社会的なものです。今回は葬儀に焦点を当てお話しします。
「私自身が考える理想の葬儀」は、決して個人的な葬儀についての見解を列挙するわけではありません。葬儀社でもあり、僧侶でもある私自身から見て、納得でき、妥当性があり、心から安心できる葬儀とは何かを述べます。お読みいただく中で、「こういう葬儀もあるのか」など新しい発見があれば幸いです。
私の菩提寺は京都の臨済宗のお寺です。お墓は母親の兄(私にとっての叔父)が承継したので私(そして、私の母)が入る予定の墓は現在ありません。従って、菩提寺とのご縁がない状況ということをあらかじめお伝えしておきます。
私が考える理想の葬儀は第一に「僧侶」で葬儀を選ぶ、ということです。
私は18歳で出家して高野山で修行しましたので、葬儀は高野山真言宗の方にお願いしたいです。そして、僧侶も生前に自分で探して、直接その方にお願いしたいです。実はすでに私は意中の方がおりまして、その方に葬儀をお願いすることを了承いただいております。
菩提寺があれば、菩提寺に依頼するのが習わしです。私は菩提寺がないので、知り合いの僧侶にお願いします。私は僧侶の仲間がおりますので、容易にお願いすることができますが、一般の方ですとなかなかそうはいきません。現在、ネットなどでいろいろな僧侶の紹介サービスを受けることができますが、どのような僧侶が来るのか正直分からない。可能な限り、どんな方に葬儀をあげてほしいのか、事前にインターネットなどを駆使して、調べる。可能であれば、実際にお会いして事前に葬儀への想いを伝えることも大切でしょう。
特に、この「まいてら」に掲載している寺院であれば安心です。どちらのお寺にお願いしても、住職・僧侶がみなさんの思い・要望にしっかり耳を傾け、納得感のある安心の葬儀を執り行ってくれるでしょう。信頼が担保された寺院の情報が集積しているという点は、まいてらの大きな安心感です。
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葬儀は略さず本儀でやる
おおよその高野山真言宗の葬儀は、『檀用経典』(岩原諦信)を使っています。
この経典には「略していい箇所」と「略してはならない個所」と「どちらでもよい箇所」と儀式に3つの印がついてあります。例えば『四分律行事鈔』に書かれる「流転三界中 恩愛不能断…」という偈文は「略してはならない個所」で、三回の礼拝を行なう三禮などは「どちらでもいい箇所」です。
私は自分で葬儀もやっておりますので、私の葬儀は本儀に則り、全て略さずやってもらいたいです。仏徳をたたえる讃という言葉も三讃(三回繰り返す)やってほしいので、儀式だけで65分くらいかかるかと思います。
そして荘厳も、法式にある通り『涅槃経』の偈文の旗を掲げたり、棺に直接梵字を書いたり、曳覆曼荼羅を用いたりして、儀式をしてほしい。臨終間もない枕経から実施して、興教大師・覚鑁の『一期大要秘密集』に則り、死に際で往生のために手指で印契を結びながら旅立ちたいです。
戒名にこだわりはないのですが、あらかじめ生前にお寺と相談して自分の納得する戒名を決めたいです。当然、文字数が多いような豪奢なものではなく、慎ましいのがよく、身の丈に合ったものが理想です。漢字の意味や平仄(リズム)を重んじ、仏典に依拠し、つつがない戒名がよいです。
焼香は白檀の香木を刻んだもので煙がたくさん出るものがよいです。真言宗では、焼香は徳の遍満(四方に満ちること)を表現していますので、モクモクと全てを包み込むようなものこそ相応しいです。これは好みですが、導師が使う長い線香は京都のお線香、財木屋の「別伝曼殊」がいいです。線香は少し辛い匂いの方が趣味に合いますのでそちらがいいです。
以上のように、私自身は可能な限り自分で自分の死を決めたい。死ぬ前の作法をきっちりやりながら、旅立ちたいと考えています。
事前に可能な限り準備する
最後に、葬儀とは直接の関係はないのですが、相続や財産などについてお話しします。
相続や財産も事前に誰に贈与するのか生きているうちに決めておきたいです。自分が元気で全てにおいて差配できるうちから財産を明細化し、分与したいと思っております。
私自身は自分自身の意志で、生涯家庭をもつつもりはありませんので、知人やゆかりのある寺や社会問題を解決してくれる施設などに預託し、血縁での相続はせず、少しでも社会のためにお役立ていただければと思っております。
葬儀費用やお墓など考えられうる事柄は事前に進めて、公正証書遺言をしたため、士業の方々と連携を取りながら、旅立ちたいです。
以上が私の考える、葬儀に関しての理想の旅立ちです。
自分の死によって、残された方々がつまらない争いをしてほしくないので、事前に決め、実行する人や業者も事前に決めておきたいと考えております。葬儀はやはりプロにお願いして、全てを済ませたいです。先徳の方々の深い智慧と伝道の行為があって今日まで葬儀は伝えられました。私はその大きな歴史の中のひとりとして亡くなりたいと考えています。
赤裸々ではありましたが、今回は私が理想とする葬儀についてお話ししました。
次回は、私の理想とする「お葬式」をお伝えします。お墓はどうなのか。参列者はどうなのか。祭壇はどうするのか、など。葬儀の費用や私の考えるところをお伝えいたします。
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