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理想の「お葬式」とは?私はこうして見送られたい(足立信行・T-sousai代表)【死に方のココロ構え④】

2022.03.10

足立信行(あだちしんぎょう)

株式会社 T-sousai 代表取締役社長。1982年、京都府生まれ。在家の家に生まれる。18 歳の時に高野山で僧侶になることを決意。2005年高野山大学人文学部密教学科卒業。2006年高野山専修学院卒業。2007年高野山金剛峰寺布教研修生修了。高野山で修行をする中で僧侶や寺院の役割を考え、一度下山。葬儀の重要性に気づき、2008年 大手互助会系の葬儀会社に入社。葬儀の担当者となり、年間約 120 件の葬儀を手掛ける。2012 年IT 企業に入社。エンジニアとして活動。2017年、僧侶と葬儀会社の担当という経験から、お互いが遺族や故人のために協力し祈りの場所として本堂などで葬儀をあげ、安価で心あるお寺葬の構想を企画。葬儀の告知、WEB、導入などから実施、施行までをワンストップできる株式会社 T-sousai を創業し、現職。

T-sousaiホームページ

※前回(理想の葬儀とは?私はこうして見送られたい)はこちら

お葬式で考えるべき4つのポイント

 前回は「葬儀」に関してお話しましたが、今回は「お葬式」に関してお話しいたします。
 毎回強調しておりますが、葬儀とお葬式は違います。

  • 「葬儀」は僧侶や宗教者が司る、弔いの宗教的儀式そのもの
  • 「お葬式」は葬儀社等が伴走し、故人と縁ある人々とのつつがないお別れを可能にするため、儀式内外における社会的な形を整えたもの

 今回は後者の社会的な形である、お葬式に関してお話しいたします。
 お葬式で大切なのは①場所・②人数・③日数・④費用です。

①場所:どこでお葬式をあげるのか
②人数:どこまでの人に声をかけるのか
③日数:何日でお葬式をあげるのか
④費用:いくらでお葬式をあげるのか

 この4点を私なりに考えてまいりたいと存じます。

①場所:寺院の本堂から送ってほしい

 まず場所、どこでお葬式をあげるか、です。
 私自身は葬儀社ですので、葬儀社が運営するセレモニーホールや火葬場に隣接する斎場さいじようなど色々な場所でお葬式を施行してまいりました。ご自宅や集会所はもちろん、通夜はご自宅で、葬儀はセレモニーホールで、という変則的なものもありました。12階建てのエレベーターのないマンションで、階段で降りながら出棺したこともあります。
 よく誤解されがちですが、お葬式は特定の場所でしかしてはいけない、というものはありません。ご自宅でお葬式をあげることも可能ですし、団地の集会所で行うことも可能です。セレモニーホールなど、いわゆる斎場と呼ばれる施設だけがお葬式の場所ではないのです。

 私自身は、お葬式をお寺の本堂で執り行いたいです。理由は3つあります。
 1つ目は、本物の祈りがある場所だからです。ご本尊ほんぞん様の御前ごぜんに横たわり、宗教的な空間で、読経どきようが最も沁み込んだ本堂こそ私が旅立ちたい場所です。
 2つ目は、仏具や荘厳しようごんが本物だからです。斎場で行う仏具や荘厳が偽物というわけではなく、本堂には時を経て伝えられてきた磬子けいすや荘厳があります。この時間の経過や歴史の重みは何よりも雄弁です。
 3つ目は、費用です。本堂の利用料は斎場のそれに比べ、それほど高額ではありません。本堂の利用料そのものがないお寺も少なくありません。

 私が仏教徒だからということもありますが、本堂でお葬式を執り行うことは、ご遺族にとっても非常に助かります。時間的な制約がなく、故人とゆっくり向き合うことができます。菩提寺であればお寺ともゆっくり話せ、四十九日忌や納骨等の疑問点を解消して安心を得ることもできます。単純に好みの問題と言い切れない、利便性も兼ね備えているのが本堂です。

 きらびやかでみやびな斎場もよいですが、私は本堂の落ち着いた祈りの中で見送られたい。

 本堂での葬儀は、菩提寺がある方は菩提寺にご相談されるのもよいかと思いますし、まいてらに掲載されている寺院にご相談してみるのもよいかと思います。

本堂での葬儀は落ち着いた空間の中で故人と向き合える
本堂での葬儀は落ち着いた空間の中で故人と向き合える

※葬儀を相談する寺院を探す方はこちら

②人数:ご縁のある方全員に参列いただきたい

 次に人数です。人数はどこまで声をかけるかで決まります。
 近年は、家族や身内だけでお葬式をする家族葬がほぼ半数を占めるようになりました。少し前までは一般葬、参列者、100人や200人が当たり前でしたが、いまはそうではありません。30名未満のお葬式が半数以上です。

会葬者の人数
出典:https://www.e-sogi.com/guide/30620/ 「いい葬儀」のデータをもとに筆者がグラフ作成

 私の考えですが、人数は家族葬でも全く問題ないと感じています。バブル期からの習慣なのか、日本のお葬式は、故人を直接知らない方も見送るのが礼儀という慣例が続いてきました。しかし、故人を知らずに参列者が多く参列すれば供養になるのかと言えば、私はならないと考えます。むしろ大切なのは、「本当に見送りたい方が来ているかどうか」だと考えます。

 私自身の希望としては、これまでゆかりのある方全員に声をかけてほしいと考えています。事前にお葬式に声がけする参列者リストをつくり、喪主の負担を減らすようお願いする予定です。縁ある人々に見送っていただき、供養していただきたいです。

③日数:可能なら納骨(3日葬)まで

 3番目は日数です。日数はお通夜、葬儀・告別式が通例です。昨今は1日のみで済ませる一日葬も増えてきました。

 私自身は通例通りの2日葬に加えて、可能であれば納骨まで済ませてほしい。1日目がお通夜、2日目が葬儀・告別式、3日目に納骨でお願いしたいと考えています。
 私がこのように考えるのは、納骨に対して大きな意味を抱いているからです。私は納骨は故人との別れなどではなく、新しい故人と対話できる装置(墓)の棟上むねあげが納骨であると思っております。改めて49日に集まるより、その気持ちのまま3日目に納骨にしてほしいのは、参列者にわざわざ集まっていただくことの申し訳なさと、いつでも私に会える場所であるお墓の場所の周知という意味合いがあります。
 葬儀に参列したものの、故人のお墓を知らないというケースが今はほとんどですが、故人のお墓の場所を知るということが当たり前のようになってほしいと思っています。

④費用:不必要なものを削ぎ落したい

 最後の4点目は費用です。日本のお葬式の費用は150万円前後と言われております。
 お葬式の費用は3階建ての構造になっています。

  • 1階が祭壇や霊柩車、ひつぎなどの固定費
  • 2階が人数の多寡によって変わる変動費
  • 3階がお布施や玉串料(御礼)など宗教者への御礼

 上記の総額がお葬式の費用になります。変動費は人数が多くなればそれだけ増えますので、これは仕方がありません。私の場合は、宗教者への御礼も戒名含め事前に決めますので、こちらも今回は取り上げません。私が一番気にするのは、1階部分、つまりお葬式の固定費です。

 お葬式の固定費はおおむね110万円です。祭壇や棺、霊柩車などが含まれます。正直、これは高額です。なぜ高いのかは簡単で、不必要なものが多いからです。
 私が考える不必要なものとは、葬儀や供養にかかわりのないものです。習慣や慣例として、みんながやっているからという理由だけで飾ってあるものなどです。例えば豪奢ごうしやな祭壇、多すぎる花、祭壇わきの造園、なぜあるのかわからない提灯、などです。もろもろ全て不必要なものをなくしていくとお葬式は金額的に110万の半額くらいになります。つまり、50万円程度でも十分にお葬式は可能です(宗教者への御礼は除く)。

 同時にお葬式において見栄を張る必要はありません。以前、私が勤めていた葬儀社では、最も安価なコースの棺を「恥ずかしい棺です」と言って高額な棺を販売していた担当者もいましたが、このような葬儀社は今もいます。恥ずかしい祭壇、恥ずかしい霊柩車、恥ずかしい棺。何を以て恥ずかしいのか分かりませんが、大切なのは心です。葬儀や供養にかかわりのないものは全て削ぎ落して問題ありません。

 葬儀やお葬式は不透明なことが多く、加えて、縁起が悪いと思われがちで生前に考えない人が少なくありません。それが葬儀業界の悪しき風習が放置されてきた要因でもあります。
 自分の葬儀、自分のお葬式を考えることは大切です。ぜひ生前のうちに、信頼できるお寺にご相談されてはいかがでしょうか。

※葬儀を相談する寺院を探す方はこちら

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