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時代とともに変わる「葬儀」と「お葬式」(足立信行・T-sousai代表)【死に方のココロ構え②】

2022.01.17

足立信行(あだちしんぎょう)

株式会社 T-sousai 代表取締役社長。1982年、京都府生まれ。在家の家に生まれる。18 歳の時に高野山で僧侶になることを決意。2005年高野山大学人文学部密教学科卒業。2006年高野山専修学院卒業。2007年高野山金剛峰寺布教研修生修了。高野山で修行をする中で僧侶や寺院の役割を考え、一度下山。葬儀の重要性に気づき、2008年 大手互助会系の葬儀会社に入社。葬儀の担当者となり、年間約 120 件の葬儀を手掛ける。2012 年IT 企業に入社。エンジニアとして活動。2017年、僧侶と葬儀会社の担当という経験から、お互いが遺族や故人のために協力し祈りの場所として本堂などで葬儀をあげ、安価で心あるお寺葬の構想を企画。葬儀の告知、WEB、導入などから実施、施行までをワンストップできる株式会社 T-sousai を創業し、現職。

T-sousaiホームページ

「葬儀」と「お葬式」の違いを知っていますか?

 日本の弔いは「葬儀」と「お葬式」に分けられます。
 同義で使われることが多い2つの言葉ですが、「葬儀」は故人を送る儀式そのものであり、主に宗教者がこれを執り行います。「お葬式」は式の形式やスタイルそのもので、いわゆる家族葬とか社葬とか、儀式の外側にあるものです。よく葬儀とお葬式を混同される方が多いのですが、明確に違います。

 仏式の「葬儀」を挙げても、「お葬式」そのもの(例えば家族葬)には関係がありません。葬儀という儀式としてやることは同じで、弔辞や焼香の時間を多少気にするくらいで、葬儀は葬儀、お葬式はお葬式と分けることが本来の考え方です。

「葬儀」は時代と共に変化

 日本で行われる葬儀の多くは仏式葬儀ですが、僧侶が執行する葬儀が昔から変わらずに今日まで受け継がれてきたわけではありません。葬儀は時代の変化や要請に合わせて進化してきた経緯があります。

 私が修行したのは高野山というお山で、宗派で言えば真言宗しんごんしゆうにあたります。宗祖である弘法大師こうぼうだいし空海くうかいが今日ある葬儀の作法を作ったと思われがちですが実はそうではありません。真言宗の葬儀は、特有の歴史や時代の流れを加味して生まれ今日まで伝えられてきました(その中で最も重要な人物が平安末期から鎌倉初期の真言宗僧侶で、新義しんぎ真言宗の高祖となった興教大師こうぎようだいし覚鑁かくばんなのですが、この項では詳述しません)。

葬儀
葬儀は時代によって変化してきた

「お葬式」も時代と共に変化

 真言宗に限らず葬儀は時代と共に変化してきました。ではお葬式はどうかと言えば、葬儀と同様、お葬式も時代やニーズ、社会情勢と共に変化してきました。葬儀の形態や会葬者の人数、食事やお返し物の有無などです。

 最近は新型コロナの影響で家族のみで葬儀を挙げる方が多いですが、例えば会葬者の人数も時代に応じて変化しています。
 今から60年前の1960年くらいの会葬者は50名から70名が主流でした。葬儀会館なども珍しく、企業が運営する葬儀ではなく、町内会などの地域コミュニティで実施していたお葬式が主流でした。
 しかし、1970年の高度経済成長を境に、会葬者が増え始めます。1990年頃は、故人を知らなくても部署や会社総出で葬儀に参列し、多くの会葬者が集まる社会的な葬儀が主流になりました。200人や300人の葬儀が当たり前で、それに伴って葬儀会館も中型から大型の葬儀会館が好まれるようになったのです。

 葬儀、お葬式のスタイルは、人々のニーズや要請、社会状況によって変化してきました。その時代ごとの機微に合わせて変化してきたのが葬儀やお葬式であり、今現在の形も永遠不変のものではありません。

お葬式
お葬式も変わり、今後も変わっていく

お葬式は「べき論」より「理想論」

 葬儀やお葬式は時代と共に変化してきたので今後も変わっていくでしょうが、お葬式はどうしても現状維持的な発想に陥ることが多くなるため、「お葬式はこうあるべき」という「べき論」で語られることが少なくありません。お葬式に対しての想いは人それぞれですし、「べき論」で語られることそのものを否定するつもりは毛頭ありません。ここで重要なのは「べき論」が先行してしまうと、往々にして思考が頑固になり、社会の要請から取り残されてしまう傾向が強いことです。

「お葬式はこうあるべきだ」という型はあってしかるべきでしょう。しかし、型のためのお葬式であってはならず、人のためのお葬式であり、人のための型であるほうが良いと思います。「べき論」よりも「こうあってほしい」という願いや想いを重要視する「理想論」を大切にしたお葬式でありたいと思います。社会や世間がお葬式に対して抱く「理想論」が実現されるように進化していくことが望ましいです。

では、「足立さん、あなたの考える理想のお葬式について語ってください」と言われそうですが、それは次回に語りたいと思います。

焼香台
理想のお葬式とは何なのか…

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