墓じまいは高すぎるしお金がない!お布施の公開が大反響。“葬儀改革”と”自由なお墓”でお寺改革(三谷彰寛・瑞相寺住職)
2022.12.01
墓じまいが高すぎる!墓じまいをするお金がない・・・ そんな声も多く聞かれるこの頃、寺離れや寺院消滅など、お寺にまつわるネガティブな話題が多いです。
そんな世の中でも、山口県・浄土宗の瑞相寺(ずいそうじ)では葬儀や納骨を希望する人が年々増えています。なぜでしょうか?
住職の三谷彰寛さんに、住職に就任してから取り組んだお寺改革とその成果について、さらには今後のビジョンについてお話しいただきました。お寺の未来が、ここにある!
25歳で住職に。肌で感じたお寺離れ
瑞相寺は、1199年にいまの柳井市に創建され、1605年に現在地に移ってきた歴史あるお寺です。先代の住職である父が往生したことにより、25歳で住職を拝命しました。
実際に住職になって感じたのは、市民の多くの方が「葬儀やお墓にかかる費用が高すぎる」と困っておられたこと、それを理由としてお寺から離れていく方が多いことです。こうした状況を危惧し、思い切った改革を決心しました。まずはじめに着手したのは、お布施の透明化、そして境内墓地のテコ入れでした。
瑞相寺の葬儀改革。お布施の内訳を完全公開
瑞相寺は、お布施の平均金額、金額別の割合など、不透明だと批判されがちなお布施の中身を全て、新聞の折り込みチラシで公開しました。お寺に対するハードルをさげるためには、まず先にこちらから自己開示しなければとならないと考えたからです。
この姿勢に対する反響はとても大きく、以降、多くの方から「瑞相寺で葬儀をしたい」とお問い合わせをいただくようになりました。いまでは岩国市内の約10~15%の葬儀を瑞相寺がお勤めしています。
墓じまいは高すぎるしお金がない!の声に応えた、自由なお墓。開かれたお寺
また、最近はお墓でお悩みの方が大変多くおられます。
「ご先祖様のお墓の維持に困っている」
「将来的に墓じまいの心配のないお墓があればいいのに」
「お墓に費用をかけられない」
こうした声に応えるためにも、お檀家さん向けの境内墓地を改修し、「いわくに錦帯橋浄苑」としてリノベーションしました。
墓じまいの心配のない永代供養付きのお墓、納骨堂、樹木葬など、多様なニーズに応えるために全23種類をラインナップし、自由に選んでもらえるよう心がけました。
おかげさまで、岩国市内の改葬先としては、瑞相寺をお選びいただく方が最も多く、こうした実績を信頼していただき、いまでは岩国市からの要請で、市営霊園では対応しきれない無縁のお骨の受け入れもさせていただいています。
地域福祉のハブ拠点を目指して
葬儀やお墓に関して、市民の方だけではなく行政機関も私たちを頼って下さることを考えると、瑞相寺がさらにしっかりとした受け皿にならなければなりません。
そうした想いから、2022年9月、「一般社団法人岩国終活支援センター」を立ち上げました。私たちが窓口となって、市民や地域の方々の終活の悩みに耳を傾け、瑞相寺で対処しきれいないことに関しては、適切に対応して下さる信頼のおける専門家をご紹介します。
「終活」と一口に言っても、介護、医療、葬儀、お墓、供養、相続など、しなければならないことは多岐に渡り、どこに相談していいのか分からないものです。
お寺は古くから、地域社会のハブ(中心地)としての役割を担ってきました。瑞相寺にも、さまざまな職種のプロフェッショナルの方々が出入りし、お寺を支えて下さっています。そうした素晴らしい方々の力を借りることで、地域福祉の活性化に一役買えるのではないかと期待しています。
大切なのは、腹を割ること
ありがたいことに、ここまで瑞相寺が歩んでこれたのは、たくさんの方々の支えがあってこそです。住職ひとりの力では何もできません。
お寺の方針を考える時、分からないことや行き詰ったことがあった時、私はすぐに総代さんたちに相談しています。会社経営者など、組織運営に長けた方々が名を連ね、何よりお寺のことを真剣に考えて下さっている。どんな些細な悩みや疑問でも、すぐにグループLINEにメッセージを書き込んでいます。
瑞相寺には優秀なスタッフが11名いますが、彼らとも密にコミュニケーションをとり、お参りの方に喜んでいただける対応を心がけています。住職よりもスタッフを頼りにお参りされる方も少なくありません。
誰に対してもまずはこちらから腹を割って自己開示をすることで、相手もこちらのことを信頼し、お互いの理解が深まるのだと思います。瑞相寺と檀信徒のみなさんをつなぐ原点は、まさにここにあります。
瑞相寺は、これからもたくさんの方々の力をひとつに集結して、地域の方々に安らぎをもたらすことのできるお寺を目指していきます。