まいてら僧侶のお題トーーク!お盆にまつわるエトセトラ
2017.08.07
「お坊さんと会うことはほとんどないけど、あえて言うならお盆?」
日ごろ、筆者がお坊さんと関わる仕事をしていると知人に告げると、大体において困惑されますが、気を遣ってごく少ないお坊さんエピソードを披露してくれる人がいます。
そんな中出てくる、お坊さんと関わる場面の筆頭はお盆。帰省と合わせて語られることがしばしばあります。
お盆の時期、お坊さんたちが檀家さんのお宅を一軒一軒回り、仏壇にお経をあげる「お盆参り」。そこでお坊さんをみて、「本物だ~」と思うそうです。お坊さんはSFか何かと思われている?!
それでいいのか、お盆参り。お盆に親しみを持つ人も、そうでない人にも、お盆で忙しく動き回るお坊さんたちの声が知られていないのではないか。そう思い、お盆参りで数々の檀家さんと触れ合う中で生まれた様々なエピソードについて、まいてら僧侶の皆さんに語っていただきました。
「お、今年も来たな。お経を読んでいるぞ。帰っていったぞ。」
それだけじゃない、お坊さんの目から見えるお盆参りを感じてみましょう!
【お腹の事情とお迎えのお布団】大阪府 興徳寺住職 青木隆興さん
青木 隆興
生まれも育ちも興徳寺。お寺と一緒に成長してきました。皆様にとって空気のような、日頃は意識してなくても大事な時にはなくてはならない僧侶でありたいです。
興徳寺は8月あたまからお盆のお参りがスタートします。
7日ぐらいから1日あたりの軒数が増えはじめ、クルマで移動の日がだいたい20軒ぐらい、ご近所になって自転車で移動する様になると40軒ぐらいお邪魔します。
従って、一軒一軒お茶を頂いてますとおなかがちゃぷんちゃぷんになります(^.^)
また緑茶はカフェインが多いのでけっこう胃に負担が。。。
麦茶が少しとか、スポーツドリンクを出して頂けると嬉しいです。
そして、これはいいなあと思う話なんですが、私がお参りにお邪魔する前日の夜に必ず亡くなったご主人の分のお布団をひかれるおうちがあります。
「せっかく帰って来るからゆっくりしてもらおうと思って(^.^)」と奥さんはおっしゃいます。
そんな気持ちがいちばん大切だと毎年思います。
編集部より
お坊さんのお腹が悲鳴を上げています!バレンタインにしょっぱいものをプレゼントするちょっとした気遣いが毎年一定数見受けられますが、お盆のお坊さんにはお腹に響かない変わり種をおもてなししてみると良いかもしれません。
【「チーン」と「カキーン」の応酬】長野県 長谷寺住職 岡澤慶澄さん
岡澤 慶澄
昭和42年長野県生まれ。平成4年、真言宗智山派総本山智積院智山専修学院卒業。平成19年より長谷寺住職。本尊十一面観音の本願である慈悲心を、「いのり・まなび・であい」というキーワードに活動している。
「こんにちは~」と声をかけても反応がない。
しかし玄関までテレビの甲子園大会の中継が大音量で聞こえてくる。勝手知ったる檀家さんのお宅、私は草履を脱いでズンズン仏壇めがけて入って行くと、案の定、高校野球中継を見ながら寝落ちしたお父さんが畳みの上でお昼寝極楽モード。
お構いなくお参り開始。大音量の野球中継に負けじとおリンを鳴らして大きな声で読経。
「チーン」
「カキーン!打った、大きい」
「南無十方仏!」
「大きい、レフトバック」
「南無十方法!」
「入るか入るか、サヨナラホームラン!」
「南無十方僧!」…。
寝落ちしたお父さん、それでも起きない。というか、もう起きるに起きられないのかもしれない。のどかな、信州のお盆のひとコマです。
編集部より
お盆参りは丁寧にあいさつして読経を始めるものだと思い込んでいたのに、「勝手知ったる檀家さんのお宅」だからこその、こんなエピソードもあるのですね。高校野球の実況と読経の声の掛け合いが、なんともお盆の季節感を表しています。
【「こぼんちゃん」のお盆】奈良県 善福寺住職 桂浄薫さん
桂 浄薫
昭和52年、善福寺に次男として生まれる。平成27年から善福寺住職。 得意のIT技術を活かし、地域・年齢幅広く仏教を伝える。 奈良高校卒業、大阪府立大学卒業、ソニー株式会社ではパソコンのサポート部門に従事。 退職後の平成19年、総本山知恩院で伝宗伝戒道場を満行。総本山知恩院布教師。
お盆参り(棚経参り)といえば、和尚さんが子どもを連れて一緒に歩く姿が思い浮かびます。
私も小学生の頃から親について、何十軒ものお参りにお伴しました。有り難いことに小さな私にまでお布施を用意されているお家もあり、お檀家さんが「こぼんちゃん」(小坊主のこと)のお参りを喜んでくださっていたのでしょう。
お布施とともにお饅頭などを沢山頂戴するので、数軒参るとお布施カバンがパンパンに膨れてしまい、途中のお家で一旦預かってもらうこともしばしば。
子どもながら一番嬉しかったのは、おもちゃ屋さんへお参りした後、ファミコンのソフトをもらったこと。早く帰ってゲームしたかったのを覚えています(笑)
檀家さん・ご先祖さま、そしてお坊さん、みんなで迎えるお盆の風景をこれからも大切にしたいですね。
ウチの子は来年一緒に参ってくれるのかしら?
編集部より
こぼんちゃんの大歓待!小さいころから地域の方々に愛されて、素敵なご縁を結んでいくのですね。それにしても、やっぱり子どもは正直。お饅頭よりゲームソフトか!もし、こぼんちゃんが我が家に来たら何を差し上げよう、と考えたりしました。
【「住職泣きそう」】静岡県 正蓮寺住職 渡邉元浄さん
渡邉 元浄
昭和55年6月生まれ。先代住職であった父の死後、22歳で住職に就任。幼稚園保育園の園長を勤めながら住職を預かり、子どもにもわかりやすい法話を心がけています。1児の父。趣味は音楽と小さな古道具。
「ごめんねおばあちゃん、ろうそく消えちゃうから扇風機消してもいい?」
→「はいよぉ」
→後ろからそよ風。おばあちゃん、団扇で扇いでくれている。
住職泣きそう。
お寺から持っていったリンをお参りの後に鳴らすと、おまいりした女の子がすすり泣く声。
「どうした?だいじょぶ?」
→女の子「心を、、、打たれ、、ました、、」
住職泣きそう。
時間が押してめっちゃ急いでいるときに、
「今年のはめちゃくちゃうめーぞ!食え住職!」
→A4サイズくらいの断面のスイカが出される。
住職泣きそう。
編集部より
短期間で多くの檀家さんと関わるお盆だからこそ、さまざまな方の心に触れて、悲喜こもごもの「泣き」エピソードが生まれるのですね。住職泣かせのお盆。大変そうだけど、楽しそう!
まいてら僧侶の皆さん、ご寄稿ありがとうございました!
どのエピソードも、日ごろから檀家さんとの豊かな人間関係が築かれているからこそ生まれるお話なのだと思います。
数々の温かいやりとりを知って、「大変だ」と言われるお盆参りでお坊さんが精力的に頑張れる理由が少しわかった気がしました。
今年のお盆も、全国各地で泣き笑いの心を動かすエピソードが生まれることでしょう。
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