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大忙し!お寺を走り回るお坊さんの師走奮闘記

2017.12.19


神奈川県足柄上郡の最明寺住職、加藤宥教さんによる「お坊さんの師走」レポートです。一般家庭から800年の歴史を持つお寺に入った加藤さん。そんな加藤さんならではの視点でお寺の年末を体験してみましょう!

加藤宥教 (ゆうきょう)

1978年福岡県生まれ。九州大学工学部卒。自動車メーカー在籍時はV6エンジンの開発を担当。在家の身であったが結婚を機に出家。スパナを数珠に持ち替えて修行。2011年より最明寺住職。「こころが豊かになるお寺」をモットーに、「お寺の活性化」、「時代にあった供養」に取り組んでいる。

最明寺の寺院ページを見る

皆さんこんにちは。最明寺住職、加藤宥教と申します。何かと忙しい師走。「師走」という言葉は「日ごろ落ち着いているお坊さんが、走り回るほど忙しい」というのが語源のひとつと言われております通り、この時期は忙しくされているお坊さんが多いようです。
かく言う私も例にもれず、せわしなく日々過ごしております。
お寺によって忙しさの理由は様々でしょうが、今回は当山の師走をみなさまにご紹介したいと思います。

一に掃除、二に掃除、三、四がなくても五に掃除!

とにかく掃除です。山の中腹にある最明寺は木々に囲まれた豊かな自然があり、遠くには富士山、小鳥のさえずり、春には桜、夏にはホタルに蓮、秋には紅葉が楽しめる素晴らしい環境です。しかしながら、落葉樹が一気に葉を散らすピークがこの時期なのもまた事実。欅、紅葉、風が吹くと杉の葉で境内は埋め尽くされてしまいますから法事やお客様を迎える前の掃除は必須です。

この時期必ずといっていいほど台風並みの大風が吹きますから、そのあとの境内の復元にはかなりの時間を要します。枯れている大木がないか、日ごろからのチェックも欠かせません。さすがに住職だけではカバーしきれない部分もあり、当山ではこの時期に世話人さん(お寺の手伝いをしてくれる檀家さん)20名程度で集まって大掃除を行っており、そのあとの忘年会で和気あいあいと過ごす一日が楽しみでもあります。それに加えて、この時期に生垣や伸びた枝の剪定、竹林の伐採、椿や梅などの消毒や草刈りも適宜行います。花を愛でるためには秋から冬にかけての手入れは必須ですね。
 
本堂・庫裏は床拭き、窓ふき、仏器磨き、笹を使っての埃やクモの巣落とし。お寺ではどんな近代的な掃除の道具よりほうきと雑巾、バケツの3点セットが圧倒的に役に立ちます。サイクロン式や気密性の高い住宅向けに設計された精密な掃除機のフィルターはあっという間に詰まってしまって使用不能に・・・。掃除はタオルでできた雑巾にかぎります。

来年度の年回(ご法事・追善法要)の準備

掃除が終わったら、来年年回を迎えられる仏さまを年回票に書き出して本堂廊下に貼りだします。過去帳を開いて、先代、先々代が書いた戒名を見て、その時代に、その人に想いを馳せる時間がとても大事だな、と思います。どんな時代だったんだろう、どんな方だったんだろう、想像は膨らみます。
お正月にお参りにいらした檀家さんはこれを見て、ご自分のお宅の仏さまが法事の年かどうか確認できるようになっています。遠方の檀家さんの為に法事の案内は郵送でも行っていますのでその準備もします。寺報(お寺の機関紙)を発行する場合は一緒に。

大晦日・除夜の鐘の準備

最明寺では毎年除夜の鐘をお参りされる方に撞いていただいています。それに合わせて焼き芋の接待、年越の護摩法要、おみくじ、境内のライトアップも行いますので世話人さんと一緒に準備します。焼き芋のための焚火には境内の倒木や伐採した木を使いますが、運ぶのがひと苦労なので大掃除のときに世話人さんに準備していただいています。檀家さんに毎年提供していただいているサツマイモを世話人さんに新聞紙とアルミ箔で包んでいただいて焼き芋が出来上がります。寒い中ほんとうに頭が下がります。

住職はライトアップの段取りをしたり、護摩法要の準備をします。昨年は初めて添護摩木(願い事と名前を書いて護摩の火にくべる護摩木)を準備しましたのでその版下製作と護摩木をどこで書いていただくか、などに悩みました。

新年を迎えるために

最後に、新年の歳神さま迎えるための飾りつけを行います。庫裏や本堂の玄関をお正月飾りで整え、山門には門松を置き、本堂や位牌堂には鏡餅をお供えします。お堂や鐘楼堂にはしめ縄と境内で育った楪(ユズリハ)、おしんめでかざり、歳神さまをお迎えします。ユズリハは若葉が出ると、前年の葉が落ちることから、世代が代々つづいていくことになぞられて縁起ものとされています。おしんめの切り方には特徴があり、鐘楼堂のしめ縄は高い場所にあるので巻くときはちょっと緊張します。門松は世話人さんの中でも得意な方に、境内地の孟宗竹を切り出してきて作成していただいています。

これらがすべて完了するころには12月もあと少し。
法事や葬儀、その他の日常法務を務めながらなのでどうしても年の瀬が忙しくなるのは避けられませんが、今回たびたび登場した「世話人さん」の存在はとても貴重で、檀家さんの代表として多くの行事をお手伝いいただき毎年感謝しています。掃除をしている最中にも、「これみんなで食べてね」「歳だから手伝えないけど、いつもきれいにしてもらってありがとうございます」なんて、檀家さんからのリンゴやみかんのお供え、とても嬉しいものです。

ありがたいことに例年大晦日には多くの方がご来山されています。最明寺は今年、初めての本堂を開放した催しを開催することができました。来年は描いた寺業計画を更に推進できるよう永代供養墓の整備などを行っていく予定です。来年が今から楽しみな師走です!

さて、雑巾がけからはじめるとしますか。    合掌

最明寺 加藤宥教

【編集部より】最明寺の除夜の鐘と新春護摩祈願


大晦日から元旦にかけて、最明寺では除夜の鐘つきと新春護摩祈願を体験することができます。
焼き芋、甘酒、おみくじ、境内のライトアップなど、お楽しみが盛り沢山です!

詳しいイベントの情報はまいてらカレンダーへどうぞ

お寺画像
神奈川県足柄上郡
如意山 最明寺
創建800年 北条時頼公ゆかりのお寺

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