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ネット供養がひらく可能性。水子供養、インターネット墓参り、お盆参りも|真言院住職 佐藤妙尚さん(北海道虻田郡)

2020.03.26

ネット供養・インターネット墓参りを導入した、北海道虻田郡の真言院住職 佐藤妙尚さんにお話を伺いました。

遺族の力になりたいとネット水子供養やネット供養・墓参りをしたエピソードを詳しくご紹介します。

佐藤さとう 妙尚みようしよう

1982年8月、真言院の一人娘として生まれる。都留つる 文科大学(文学部・初等教育学科)を卒業し、学習塾に就職。26歳のときに父が死去、27歳で4代目住職に就任。三児の母となり、現在子育て奮闘中。

真言院寺院ページ

 真言院しんごんいん は札幌から車でおよそ2時間の場所にあります。車を運転できる人でしたら景色を見ながらドライブがてらお参りするのも良いですが、公共交通機関ですと2時間に1本しかない電車とバスを乗り継いで来るしかなく、ちょっとお参りするのにも1日がかりです。
 そんなちょっと不便な土地にあるお寺なので、最近はよく「インターネット供養くよう 」の可能性を考えています。きっかけとなった出来事が2つあります。

LINEのビデオ通話を使ってインターネットお墓参り

 1つめは、ある檀家だんか さんと迎えたお盆のこと。このご一家は、お盆にはいつも4世帯で合計8人のお孫さんを連れてお参りに来てくれていました。ところがある年、いちばん上のお姉ちゃんが遠くへ就職したため帰省できず、お寺にお参りに来られませんでした。

 そこで出てきたツールが、LINEのビデオ通話。
「おーい、みんなでお寺に来てるよー」
「ほんとだ、みんないる」
「お寺さんもいるよー」
 と、私も映してもらいました。

「あ、ほんとだ。お寺さんだ。こんにちはー」
「〇〇ちゃん、こんにちは。お仕事がんばってね」
「はーい、がんばりまーす」

 その後、テレビ電話を繋いだままお経をあげました。お参りの間、彼女は電話の向こうでずっと一緒に手を合わせてくれていたようでした。お経を終えて後ろを振り返ったとき、画面の中で誰よりも長く手を合わせていた彼女の姿が目に入ったのです。できれば帰って来てみんなとお墓参りをしたかった。でも、どうしても仕事の都合がつかなかったんですね。離れているけれど、時間を共有できた気がしました。

北海道と岐阜、離れていてもメールと写真でネット水子供養

 2つめは、SNSで仲良くなったママ友から、あるとき水子みずこ 供養の相談を受けたことです。

「今までちゃんと供養をしたことがなかったけど、思うことがいろいろとあって……。水子の供養をちゃんとしようと思う。毎月お参りするのを1年間続ける、というようなことをしたいんだけど……」

 できれば菩提寺ぼだいじ か、お参りできる距離にあるお寺がいいと思うよ、水子供養に特化したお寺もあるよ、というアドバイスをして、彼女が安心できる水子供養の方法を一緒に考えました。しかし最終的に、彼女は私に供養をお願いしてくれました。

 そこで、私にできることを考えました。
「毎月の命日の朝8時半にお参りするから、もしできたらおうちで一緒にお参りしてね」と、遠く離れた私と彼女でできる形の供養を提案したのです。

 毎月の命日の朝、うちのお寺にある水子地蔵の写真を撮って「これからお参りします」と、彼女にメールを送りました。彼女は元気な2人の男の子を育てているので、
「チビズに邪魔されながらだけどお経読んでみたよ」
「自分じゃお経がうまく読めないから、Youtubeで流してみた。チビズも一緒にお参りしてくれたよ」
「すっかり忘れてたー! メールくれて助かった!」
 など、バタバタしながらも彼女なりに一生懸命供養を続けていました。

佐藤さんが一年間送り続けた写真の一部

 そして、目標としていた1年を終えたとき、ずっと心に引っかかっていたものが取れたからか、彼女からは清々しさのようなものを感じました。
「心の拠り所になってもらえる場所があって、それを託せる人がいるってのはありがたいなぁと思うよ」
 そんな言葉をもらえて、遠く離れた場所でも画面を通じてでも、供養はできるし話を聞くこともできるんだなと感じました。

 また、水子供養に関しては、近くのお寺には行きにくいとか、行きたくないなどの事情を抱えている人もいると思います。もしかしたらそのような方はあえて遠くのお寺を選ぶこともあるのかもしれません。足を運ぶことのできない遠くのお寺でも、心をこめた供養ができて安心を得られるのなら、そのほうがいいのかもしれません。

新型コロナウイルスによる外出自粛中のネット供養

 つい先日、もう1件のインターネット供養を行いました。北海道で新型コロナウイルス感染症が急速に広がり、知事から緊急事態宣言と外出自粛の要請が出された週末、ある檀家さんの命日のお参りがありました。

 4年前に亡くなったその檀家さんはまだ51歳の女性でした。それまで元気で何も変わらずに過ごしていたのに、風邪をひいたと思って自宅で休んでいたら気づかぬ間に敗血症を起こしていて、あっという間に亡くなってしまいました。ご家族はもちろん、私にとってもショックで悲しいお別れでした。

 遺されたご主人はそれからとても一生懸命に供養され、毎日仏さまと向き合うことで少しずつ悲しみを癒していっているように感じています。そのような方のご命日だったので、できればお参りしたいという気持ちがありました。しかしその週末は外出を控えるようにテレビで何度も伝えられており、その檀家さんからも「事態も事態なので、無理しないでいいですよ」と言っていただいていました。どうしたらいいのか、とても悩みました。

 そこで、「私は本堂でお勤めをします。〇〇さんはご自宅のお仏壇でお勤めしてください。テレビ電話で繋いで一緒にお勤めしませんか?」と提案してみました。

 お参り当日はGoogle Duoというビデオ通話アプリを使いました。私は自分の後ろにカメラを置き、本堂のご本尊さまとご本尊さまに向かってお勤めする私の後姿を映しました。檀家さんにはそれを見ながら一緒にお勤めしていただきました。

その時のGoogle Duoの映像

 そして、一緒にお勤めした後、檀家さんにもう一つ提案をしました。

「もし良かったら、このままテレビ電話でお墓参りに行きませんか?」

 お墓はお寺のすぐ裏にあります。冬期間は通常、雪に埋もれているのでお参りはできません。ですが今年は雪が少なく、当日も70cmほどの積雪だったので、お墓の上半分は見えています。スマートフォンを持ってスキーウエアの下だけ履いてお墓へ出かけました。

雪に埋もれる真言院の墓地
カメラがじょじょにお墓に近づいていく

 電話越しに会話をしながら雪の中を歩いてお墓に近づいていきます。
「今の時期はこんな感じなんですね。今年は雪が少ないですか?」
「少ないですね。いつものお彼岸ひがん くらいですよ」
「あ、うちのお墓が見えてきましたね」

 そして、お墓の前で手を合わせて一緒に「南無なむ 大師だいし 遍照へんじよう 金剛こんごう 」と三遍。
 それだけでしたが、命日の日に画面越しでもお墓参りができて良かったと言ってもらえました。

「音声が大きくなったり小さくなったりと不安定で気になってしまう。スマートフォンの内蔵マイクではなく、外付けのワイヤレスマイクを住職がつけたほうがいい」
「いつも自分でお経はあげているが、住職の祈願文を聴けると気持ちが違う。法要をやった甲斐があったと実感した」
「お墓参りはけっこう臨場感がある。現地まで行けない人には自分の家のお墓が見られるのは嬉しいと思う。とても良いと思う」

 と、より良くするためのアドバイスもいただけました。ありがたいです。

インターネット供養のこれから

「画面に向かってお参りするの? それって意味あるの?」と抵抗がある方もいると思います。ですが、これまでインターネットを通じて一緒に供養をしてきた方々は決して仏さまやご先祖さまをないがし ろにしているわけではありません。むしろ「画面上でもいいからお参りしたい」と強い思いを持っていた方々ばかりです。

 今もさまざまな理由で現地まで足を運べない方がいます。そしてこれからそのような方の割合は増えていくと思われます。その方々が気がかりに思うことなくその方なりの供養を行えたら、その方はそれによって救われるかもしれません。供養は亡き人のためでもあると同時に自分のためでもありますから。

 今後、(新たな移動通信システムである)5Gの普及などにより、インターネットを通じたお参り「インターネット供養」はよりリアルなお参りに近づいていき、その数も増えていくと思われます。いろんな方法を試していきながら、その人その人にあった供養をご提案できるよう、さらに環境を整えていきたいと考えています。

お寺画像
北海道虻田郡真狩村
金胎山 真言院
羊蹄山のように 皆様に温かく寄り添うお寺

寺院ページを見る

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