カンヌで大反響! 映画『典座 -TENZO-』いよいよ公開【後編】
2019.10.01
(前編はこちら)
世界の映画人を魅了した青山俊董 老師の語り
「カンヌでは、青山俊董老師の語りに、観客がとても感銘を受けられていました。私自身も映画の制作を通じて、師匠から教えをいただいた気持ちです」
『典座 -TENZO-』で主演を務めた河口智賢 さんは、青山俊董老師の教えを日々実践するように心がけているそうです。
「青山老師は『本物に立ち上がってほしい』とおっしゃいます。人を救うために仏法があり、それを実践するのが僧侶であると。『他はこれ吾にあらず 更に何いず れの時をか待たん』という言葉が典座教訓にあります。自分が青山老師のおっしゃる『本物』かは分かりませんが、この映画を多くの人に見ていただき、仏教と禅を伝えていくのは自分がやるべきこと、今やらないといけないことだと、日々自分に言い聞かせて動いています」
「本作は、禅でいう『今、ここ』(今という瞬間)で動かなければ撮れない映画でした。撮影後に福島の仮設住宅は取り壊されました。海岸の風景も今は変わっているかもしれません。ああしておけば良かった、こうしておけば良かったと思わないよう、禅の『今、ここ』を自分自身が実践しないといけません」
先日は「あいちトリエンナーレ」の上映会のトークセッションに、青山老師が登壇されました。青山老師は今年、脳梗塞と心筋梗塞で入院されましたが、当日はそれが信じられないくらい、凛とした元気なお姿だったそうです。
「トークで青山老師がおっしゃっていたことが印象的でした。『病気になったからこそ気づいたことがある。歩けない人、字を書けない人、車いすや寝たきりの人がいる一方で、院内を走るスタッフもいる。今の日本は、病人は病院、老人は老人ホーム、元気な人は普通の世界というように全てを分ける。日常の中に生老病死が見えていない。核家族化によって、祖父母が老い、亡くなっていくことが今の子どもには見えない。病院は病気の人も、元気な人も、命が生まれる人もいて、死んでいく人もいる。病にならないと見えないことがあると気づかされた。病院は人生の縮図。まだまだ勉強』と」
長年にわたり、禅を通じて生老病死を深く見つめてこられた青山老師。映画でどんなことを語られているのかとても興味が湧きます。
自分を支える「根っこ」に気づいて
映画公開を目前に控え、河口さんは力をこめて次のように語りました。
「私は、映画を制作する過程で気づきをいっぱいいただきました。仏教と禅が、自らの生活の中に根付いているということに気づかされました。宗教者も一人の生身の人間です。僧侶も悩み苦しむ中、立っていられるのは根っことなる仏教と禅があればこそ。その根っこがあれば、自分という木は支えられて倒れにくくなります。映画館で『典座 -TENZO-』をご覧になった方にも、ご自身を支える根っこに気づいていただきたい。必ずしも仏教や禅でなくても良いと思います。ご自身が『生きる』日常の中でぜひ見つけていただけたら」
映画『典座 -TENZO-』は10月4日(金)のアップリンク吉祥寺/渋谷(いずれも東京都)を皮切りに、全国の映画館で順次公開です。
- アップリンク吉祥寺(東京都武蔵野市)10月4日より
- アップリンク渋谷(東京都渋谷区)10月4日より
- 松本CINEMAセレクト(長野県松本市)10月20日より
- 静岡シネギャラリー(静岡県静岡市)10月26日より
- シネ・ヌーヴォ(大阪府大阪市)11月16日より
(作品公式サイト)公開劇場情報