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除夜の鐘が108回鳴らされる理由 – 一年を終え、新しい年を迎えるために

2020.12.25

 年越しの夜空に響きわたる鐘の音。こたつの中で除夜の鐘に耳を傾ける人もいれば、お寺に鐘をきに行く人もいることでしょう。除夜の鐘にはどんな意味や歴史があり、お寺側はどのように参拝者を受け入れているのでしょうか。

 また、除夜の鐘に参加する際のマナーや撞き方、お布施についても、きちんと把握している方は少ないかもしれません。
 除夜の鐘に関するマナーや疑問点について、お坊さんに話を聞きました。

※除夜の鐘を撞けるお寺はこちら

除夜の鐘の基本マナーや撞き方 – 参加方法・順番・手順・服装・お布施

 まず、除夜の鐘の基本的なマナーをご紹介します。

時間と場所の確認: まず、除夜の鐘が行われる時間と場所を確認しましょう。多くの寺院や神社で行われますが、時間や催し物が異なる場合があります。

服装と持ち物: 寒い場合は暖かい服装で参加しましょう。

静かな心を持つ: 除夜の鐘は静かな心を持って参加することが大切です。他の参拝客や信者と配慮を持ち、静かに行動しましょう。

撞き方: 鐘楼に到着したら、まずは手を合わせて礼をします。鐘は力を入れずに、優しく撞きます。大きな音を立てることよりも、心を込めて撞くことが重要です。撞く際には、周囲の人々との距離や安全に気を配りながら、一度に複数人が同時に撞くことは避けましょう。撞いた後は、再び手を合わせて礼をしてから場を離れます。

 以上が基本的なマナーや撞き方です。

 そしてお布施については、除夜の鐘において、お布施をするかどうかは個々の信仰や寺院・神社の方針によって異なります。
 一般的には、お布施は自由意志によって行われます。お布施は寺院や神社の維持管理や慈善活動に使われることが一般的ですが、強制されることはありません。

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108回撞き鳴らす理由とは?──煩悩・暦・仏教思想の背景

 まずは除夜の鐘の基本を押さえましょう。

<108回の意味>

 除夜の鐘とは、大晦日おおみそかの夜から新年を迎える深夜0時にかけてお寺の梵鐘ぼんしようを108回撞く行事のことです。108回の由来は主に2つあると言われています。

 1つは「人間の煩悩の数だけ撞き鳴らす」というもの。人間には6つの感覚器官である「六根」(眼・耳・鼻・舌・身・意)がありますが、これらは「好き」「嫌い」「どっちでもない」の3種、さらには「きれい」「汚い」の2種に分類でき、さらに現在・過去・未来の三世さんぜにまたがることから、「6×3×2×3=108」となるようです。

 もう1つが「1年間の暦の数だけ撞く」という説。12ヶ月と24節気と72候を足すと、たしかに108になります。

 その他にも四苦八苦(4×9と8×9)を足すと108になる、禅寺で毎日108の鐘をついて雲水うんすい(修行僧のこと)の生活を律していたなどの説も見られます。

<除夜の鐘の歴史>

 除夜の鐘がいつから始まったのか、実は明確な起源を記した資料はありません。お寺の梵鐘自体は飛鳥あすか時代に伝来していますし、時を告げる合図として古くからお寺の鐘が用いられていたと考えられます。

 深夜の年越しに鐘を撞き出したのは明治以降ではないかと言われています。日の出と日の入りを基準とする不定時法ふていじほうが使われていた江戸時代には、深夜0時に日付が変わるという感覚がなかったものと思われるからです。

 除夜の鐘が広く浸透したきっかけがラジオ放送。1927(昭和2)年の年末に、NHKが初めて除夜の鐘の音をラジオ中継しました。その時はスタジオの中に鏧子けいす(寺院にある大きなおりん)を持ち込んで108回音を鳴らしたそうです。
 そして1929(昭和4)年の大晦日には、上野の寛永寺から除夜の鐘の全国中継が行われ、以降『ゆく年くる年』となって現在でも放送が続いているのはみなさんのよく知るところでしょう。

 除夜の鐘の基本はこのあたりまで。ここからは実際にどのように除夜の鐘が行われているのか、お坊さんに聞いてみました。

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除夜の鐘はいつ始まる? ─ 大晦日深夜から新年へ

 年末から新年にかけて行われる除夜の鐘。いったい何時から始まるのでしょうか。調べてみると次のようなパターンに分けられることが分かりました。

  • 107回を旧年のうちに撞いて、新年を迎えると共に108回目を撞く
  • 午前0時の年明けと同時に1回目を撞く
  • 特に午前0時にこだわらずに年末から年始にまたいで撞く

 今回、お話を伺ったのは、最明寺さいみようじ加藤宥教かとうゆうきよう住職(神奈川県・東寺真言宗)、長善寺ちようぜんじ蒲池卓巳がまいけたくみ住職(愛知県・真宗大谷派)、普賢院ふげんいん品田泰峻しなだたいしゆん副住職(青森県・真言宗豊山派)のお三方。それぞれ共通して出たことばが「紅白の結果が出た頃から」とのこと。

 最明寺では23時40分頃からスタート。まずはじめに住職である加藤さん、次に総代さん、そして整理券の順番に参詣者が撞いていきます。「その後私は本堂で年越しの護摩祈祷ごまきとうを行います。鐘楼しようろうでは0時をまたいで順番に108の鐘が撞かれていますよ。」

 長善寺では紅白が終わる23時45分ころに外に出て、鐘楼の上から蒲池住職がひとこと挨拶。続けてその場にいる参詣者全員で本堂に向かって合掌と読経をします。その後、0時を待つわけではなく、一連の流れのまま蒲池さんによる捨てがね(注意を引くためにつき鳴らす鐘の音)を合図に、108回の除夜の鐘が始まります。

長善寺の梵鐘

「うちでは108回の鐘はお寺で撞くのですよ」と話すのは普賢院の品田さん。11時30分から鐘を撞き始め、108回の鐘のあとはお参りの人たちが自由に鐘を撞けるそうです。なお、本堂では午前0時から年頭祈祷が行われます。

 午前0時に鐘を撞き始めるのはテレビ的な演出なのかもしれません。実際には年越しをまたぐ形で除夜の鐘を始めるお寺が多いようです。

 そして、除夜の鐘の回数は108回ですが、108人以上の人が集まることもしばしば。そんな時にはどのお寺も回数をあまり気にしないようです。
「せっかくお寺まで足を運んでもらった人たちに寂しい想いをしてほしくないですね」と加藤さん。ただし近所迷惑にもなりかねないため、0時半や1時頃には終わるようにしているお寺が多いようです。

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深夜のお参りで得られるささやかな喜びと新年への祈り

 普段足を踏み入れることのない深夜のお寺。ちょっとしたお祭り気分を味わうことができるのも除夜の鐘の醍醐味です。

 参詣者にはささやかなおもてなしが行われます。普賢院ではハーブティーがふるまわれるそうです。最明寺の加藤さんは「世話人さんたちが22時頃に集まり、焼き芋と甘酒のお接待をしてくれます」と話します。お檀家さんや地域の人たちの支えがあってお寺の行事が行われているのですね。

 最明寺の境内には長い階段があり、足元をライトアップして照らします。深夜に足を踏み入れることで、普段見ることのできないお寺の幻想的な一面を見ることができます。

 また、最明寺では除夜の鐘の整理券にお札を用いています。「きちんと本堂で加持祈祷させていただいたものなんですよ」と加藤さん。持ち帰ったあとは財布やカバンに入れてお守りになります。

整理券を兼ねている最明寺のお札

 長善寺の蒲池さんは、集まった人たちと楽しく語らう時間を大切にしているそうです。「門徒さんやそうでない人も、若い人も高齢の人も、家族連れもあればひとりの方もいます。こうしたさまざまな人たちがお寺に来てくれるのがありがたいです。」

 除夜の鐘は新年の訪れを告げるだけでなく、その響きの中に、1年間の労いと、新しい年への祈りが込められています。今年はみなさんにとってはどのような年でしたか?
 新年がみなさんにとってよい一年でありますよう、心よりお祈り申し上げます。

【お寺を探す】除夜の鐘を撞けるお寺

 除夜の鐘を撞けるお寺はこちら(まいてらカレンダー)から検索できます。

除夜の鐘

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コメント一覧

  1. 自分が今この世に生きているのは、御先祖様がいてくださったおかげです。
    それを感謝すべきですよね。
    でも、生きていくのは難しく苦しい事ですね。
    毎日を笑って過ごせれば,、、

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  1. 自分が今この世に生きているのは、御先祖様がいてくださったおかげです。
    それを感謝すべきですよね。
    でも、生きていくのは難しく苦しい事ですね。
    毎日を笑って過ごせれば,、、

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