もっとも優しい言葉は その人の名を呼ぶことである ー お寺の掲示板大賞2021「まいてら賞」のご紹介
2021.12.16
今年も盛り上がった「お寺の掲示板大賞2021」。
先日、仏教伝道協会大賞をはじめとして各賞が発表されました。なんと、まいてら寺院からは2ヶ寺が受賞されました。
仏教伝道協会大賞
「仏の顔は何度でも」(超覚寺・真宗大谷派・広島県)
仏教伝道協会賞
「置かれた場所で 咲けないときは 逃げてもいいよ 咲けるところへ」(妙慶院・浄土宗・広島県)
今年の投稿作品数は2,887。初年度(2018年)と比べると4倍になったそうです。
その中から、今年のまいてら賞は、「もっとも優しい言葉は その人の名を呼ぶことである」(明淳寺・浄土真宗本願寺派・岐阜県関市)を選ばせていただきました。
オンラインでのコミュニケーションが隆盛となり、名前を直接呼ばれることが少なくなったこの一年。リアルコミュニケーションが希薄化したことで失われたものの一つが、名前を呼ばれるということではないでしょうか。
「名前を呼んでもらうこと」は、自分の尊厳を端的に表す象徴。仏教的にはお念仏など、仏さまの名前を呼ぶことによってもたらされる優しさだと思いますが、身近な実生活においては「人の名を呼ぶこと」が、今求められ、誰にでもできる優しさのように思います。
このような理由から、今年のまいてら賞として選ばせていただきました。
端的な言葉だからこそ、見る人の数だけ意味が生まれる
今回は、こちらを投稿された「まぜるてとて|関さんぽ」さんにコメントをいただきました。
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勝手に撮影した掲示板で「まいてら賞」をいただいてしまったたこと、初めて明淳寺の住職さんをお訪ねして、報告させていただきました。
「掲示板は誰かに見てもらうために置いているから、こうして見てもらえていることが分かって、感想までいただけて嬉しいです」と、この掲示板を書かれた前住職さん。
「その人の名」。明淳寺さんは浄土真宗なので、「人の名前」「阿弥陀仏」の二重の意味でしょうかと質問したところ、「一般の人は難しいこと考えなくてそのまま味わったらいいと思いますよ。『ねぇ』『君』『お前』と呼ばれるより、名前で呼んでもらえたらホッとしますよね。それだけで十分ですよ」
この掲示板の言葉を見たとき、静かな感動に包まれました。
世界の問題解決にSDGsなど難しい言葉が取り沙汰されますが、もっと簡単に取り組める、世界を優しくする方法があるとしたら、それは身近にいる人や地域・仕事で関わる人たちの、「その人の名」を呼ぶことかもしれません。
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投稿者の意図と、見た人の受け取り方が必ずしも一致しない意味の広がりは、端的な言葉で表す掲示板ならではですね。
見る人の数だけ意味が生まれる。これこそが掲示板の魅力かもしれませんね。
そして、掲示板大賞を企画運営されている仏教伝道協会の江田智昭さんからは、次のような講評を寄せていただきました。
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「人の名前を呼ぶこと」はコミュニケーションの基本であり、人を幸せにする効果があるそうです。仏教の中でも例えばお念仏を称えることは「阿弥陀仏の名前を呼ぶこと」であり、私が所属する浄土真宗では非常に大切なこととされています。私たちはお念仏を通して、阿弥陀仏の無限のやさしさ(慈悲)を感じることができます。今後新たな変異株の登場によって、再び家にこもらなければならない時期が来るかもしれませんが、そのようなときは、家の中で仏様の名前を呼んで(念仏を称えて)みてはいかがでしょうか?
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見る人の数だけ意味が生まれる。まさにお坊さんらしい視点ですね。こんな時代だからこそ、様々な場面でお互いに名前を呼びあい、幸福感を高め合いたいですね。
今年も多くの言葉を通じて、見る人に様々な気づきを与えてくれた「お寺の掲示板大賞」。来年はどのような言葉と出会えるのでしょうか。今から楽しみですね。