施すから豊かになる。布施はよろこび ー お寺の掲示板大賞2020「まいてら賞」のご紹介
2020.12.29
新型コロナ禍でも、盛り上がりを見せた「お寺の掲示板大賞2020」。
先日、仏教伝道協会大賞の「コロナよりも怖いのは人間だった」をはじめとして各賞が発表されました。
今年のまいてら賞は、「豊かだから施すのではない。施すから豊かになるのだ。」(超覚寺・真宗大谷派・広島県広島市)を選ばせていただきました。
新型コロナや不穏な世界情勢など、将来不安で内向きになり、様々なものを握りしめがちな時世です。しかし、どんな時でも世界はご縁でつながっていて、施しを通じてそのご縁を温めることが、今こそ必要な時でもあると思います。
そして、施しも食べ物やお金だけでなく、親切、笑顔など、色々とあります。自分の身の丈でできる施しでご縁を温め、みんなで豊かになっていくことこそ、真の豊かさと言えるのではないでしょうか。このような観点から、まいてら賞を選ばせていただきました。
施しを通じて豊かになる人間関係を伝えたかった
実際にこの掲示板を書かれた、和田隆恩さん(超覚寺住職)にコメントをいただきました。
「浄土真宗は『私は阿弥陀様に救われている』や『私はどうなの?』といった表現が多いのですが、それらとは違う浄土真宗の良さを表現したいと思いました。私たちはみんな仏の子で仲間であることを意味する『御同朋御同行』という言葉のような、他者との関係性も大切にする意図がこの言葉で伝わればと考えました。人間関係が豊かになるのは仏教の目指すところですが、浄土真宗ではそれほど主張していません。なので、『施す私』にではなく、施すという行為を通じて生まれる状況(豊かになる人間関係)に注目した言葉使いにしました。」
教えでは強調されなくても、実際の現実社会においては厳然と存在する人間関係。施しが豊かな人間関係を築くというご指摘は納得です。
“Dana is joy” 「布施」はよろこび
そして、掲示板大賞を企画運営されている仏教伝道協会の江田智昭さんからは、次のような講評を寄せていただきました。
「格差が拡がってきている現代社会の中で、『施し』という行為がますます重要になってきていることは間違いありません。以前、ハワイのお寺を訪れた時、壁に”Dana is joy”(『布施』はよろこび)と書いてありました。仏教の『布施』には、お金のかからない『布施』もあります。『布施』の喜びを知っている人たちが増えれば増えるほど、人や社会が豊かになるのではないでしょうか。」
布施をよろこびにできるかどうかは、人生の豊かさに直結するのかもしれません。
2021年以降もまだまだ新型コロナの影響は続きそうです。もし色々とつらいことが重なったり、思わず内向きになりそうな時があったら、この言葉を思い出し、周囲にできる範囲の施しをしてみるのはいかがでしょうか? 食べ物やお金だけでなく、親切、笑顔、お手伝い等々、自分の身の丈にあった小さな施しを重ねることで、つらさの中にも生きやすさやよろこびを見つけていけるのかもしれません。