元教師でスクールカウンセラーのお坊さん。職業講演会で中学生に語る(法華寺住職・庄司真人)
2022.02.03
庄司真人 (しょうじ しんじん)
平成30年4月、住職就任。関西学院大学文学部・兵庫教育大学大学院卒。公立中学校社会科教師として18年勤務後、退職。現在は臨床心理士、学校心理士、特別支援教育士の資格を持ち、寺務と並行して公立学校カウンセラーとして勤務。僧侶本来の姿勢は、人の悩み、苦しみに寄り添うことであるとの思いから、宗教と心理学の両面から檀信徒の方々に向き合っている。
27年前の阪神大震災の後、復興の困難のさ中、子ども達を地域で育てるために神戸市では「トライ・やる・ウィーク」という取り組みが始まりました。当時は、子供達だけで山登りを体験させるなど、大人がいなくても子供自身の力で「生き抜く」ことをねらいにしていました。震災時、復興時の神戸では、子ども自身に「トラブルに合っても自分で何とかすること」「誰かのせいにせず、自分で考えること」を身に着けさせるという考えが教育関係者や保護者の間で共有されていたように思います。
取り組みの一つに「職業の体験学習」というものがありました。「地域の大人達が子供を見守り、叱り、社会の姿を体験させるねらい」です。この体験学習はその後、神戸以外、大阪府やその他の地域に広まりました。中学生達は、数日間、学校に通うのではなく、色々な職場や事業所に行って、様々な体験をすることになりました。この取り組みは何年も続きましたが、昨年からのコロナ禍の影響で殆どの学校では中止となりました。そこで、様々な職業人を学校に呼び、講演を行う学校も現れました。
教員、SC、お坊さんという三つの仕事
私は、元中学校の教師でした。18年務めた後、父の後継ぎとして住職就任に向けて20年前に退職しました。しかしその後、臨床心理士、特別支援教育士の資格を取り、お寺の仕事と並行してスクールカウンセラー(以下SC)の立場で、再び学校現場に復帰しました。現在は、週3回SC勤務をしています。
そのようなご縁もあり、去年に続いて今年も先述の職業講演をすることになりました。
当日は三つの仕事「教員、SC、お坊さん」としての経験談を中学生に話しました。特に、「お坊さん」においては「生き方そのものが仕事であり」「声、態度、振る舞い全てが仕事に表れる」という持論を述べました。
また、仏教と心理学に共通するテーマですが、「転んで、膝をすりむいた時『ついてないなー』と思うのか、『骨折しなくて良かった』と思うのか?」という例のごとく、「多くの人は思いこみの中で生きている」ということについても図形やスライドを使って話しました。
講演後の質問では「どのぐらいの時間お経をあげるのですか?」「普段なにを食べているのですか?」などから「人の話を聞く時のコツは何ですか?」とか「仕事をするうえで大事にしている事、仕事のやりがいは何ですか?」など核心を突くようなものもありました。
生徒さんからの感想
2週間後、生徒さんたちから、「講師へのお礼の手紙」を受け取りました。生徒さんからのメッセージでは、次の言葉が特に印象に残ったとの感想が多かったです。
・人と関わる仕事では、まず気持ちの良い挨拶が一番大切
・生活やお金も大切だけど、自分の持ち味を活かした仕事、やりがいのある仕事も大事
・自分自身で考えることが大切。良いと思うことは自分が率先してすればよい
元教員として、SCとして、お坊さんとして、3つの立場を横断して話をしましたが、生徒さんたちには「職業の種類を超えたもの」が伝わったようです。
私は常々「何を語るのか」ではなく「誰が語るのか」ということを意識していますので、「私の根っこ、言葉を超えたものが生徒さん達にどう伝わったのか」ということに思いを馳せています。