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お寺が国内の貧困問題に取り組む、「おてらおやつクラブ」の紹介

2016.11.24

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お寺は何をするところ? お坊さんは何をする人? 皆さんはどんなイメージをお持ちになるでしょうか?

お寺はお釈迦さまの教えを知り、学び、体験するところであり、お坊さんはその教えを必要な人々に正しく伝える人、とお答えしておきましょう。では、お釈迦さまの教え、仏教とはなんでしょう。それは苦しみから逃れるための智慧と実践です。現代社会には様々な苦しみがあり、それらに向き合う機会を提供するお寺やお坊さんの活動が注目されています。

この連載では、「おてらおやつクラブ」の活動の現場から見えてきたお寺の活動について皆さんにお伝えしていきます。皆さんがお寺やお坊さん、そして仏教と出逢うきっかけの一つとなりますように。

おてらおやつクラブってどんな活動?

日本国内において子どもの6人に1人が貧困状態にあります。「おてらおやつクラブ」は、全国のお寺と支援団体、そして檀信徒および地域住民が協力し、慈悲の実践活動を通じて貧困問題の解決を目指す活動です。

「おてらおやつクラブ」は、お寺にお供えされるさまざまな「おそなえもの」を、仏さまからの「おさがり」として頂戴し、全国のひとり親家庭を支援する団体との協力の下、経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそわけ」する活動です。活動趣旨に賛同する全国のお寺と、ひとり親家庭を支援する各地域の団体をつなげ、お菓子や果物、食品や日用品をお届けしています。

本格的スタートからもうすぐ丸三年となり、ご賛同・ご支援いただいているさまざま宗派のお寺が480カ寺を超えました。北は北海道から南は沖縄まで全国47都道府県のお寺にご参加いただいています。また、支援先の団体は150を超え、毎月おやつが届くのを楽しみに待つ子どもの人数は毎月4,000人以上、のべで約36,000人(2016年)、おやつの発送回数も2016年は累計1,800回を数えるまでになりました。

しかしながら、全国にはまだまだ支援の必要なひとり親家庭は多く、さらに多くの参加寺院の開拓と発送数・発送量の拡大が必要な状況です。

お寺が貧困問題に取り組む理由とは?

国内の貧困問題が深刻です。貧困状態に陥る原因はさまざまですが、経済的に困難な状況にあり孤立してしまう困窮者を自己責任論で見捨ててしまうことはできません。貧困母子の心中事件や、ダブルワーク・トリプルワークで子どもと過ごす時間を取れず、子どもが事件に巻き込まれてしまうというケースも連日報道されています。

2015年4月、生活困窮者自立支援法が施行されました。行政や民間団体などもこの問題に対してさまざまな施策を展開していますが、決して十分とはいえない状況です。「おてらおやつクラブ」は、物資の支援にとどまらず、苦しむ人々の状況を想像し、お寺が社会に対してなにができるか?宗教者が檀信徒や地域住民と共に模索しながら行動する慈悲の実践活動でもあります。全国に7万以上あるといわれるお寺が貧困問題の解決に向けて活動すれば、その解決への一助になると確信しています。

当活動はお寺へのお供え物を「おすそわけ」するものですから、多くのお寺が容易に参加することができます。無理のない範囲で支援活動をスタートし、活動参加をきっかけに貧困問題に接し、檀信徒らと共にお寺の存在価値や仏教の利他精神などを考えることにつながる機会にもなっています。当活動によって全国のお寺が社会活動の側面から仏教精神を発揮することは、仏教を通じて豊かな人間性を育て、よりよい社会形成を推進することにつながっていくと確信しています。

貧困状態の放置は、子供世代、孫世代へと連鎖していきます。将来の社会の担い手を救うためにも、そして仏教信仰の相続を確かなものにするためにも、貧困問題の早期解決が必要なのです。

お寺だからこそできる活動です

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「おてらおやつクラブ」は単なる食糧支援ではありません。檀信徒の皆さまよりお預かりした仏さまへのお供え物を「おすそわけ」するわけですから、そこには仏教が説く慈悲の実践がなされなければいけません。

“お仏飯”という言葉があります。朝一番にお仏壇や本堂の御本尊さまにお供えする炊きたてのご飯を指すこともあれば、仏さまにお供えされるもの全般を指す場合もあります。私たち僧侶は、このお仏飯を日々「おさがり」として頂戴し、育てていただく存在であります。仏さまの慈悲によって育てられているのです。

「おてらおやつクラブ」の活動は、お仏飯を「おすそわけ」する食糧支援の側面もありますが、仏さまのお慈悲をお届けすること、困っている方々が助けを求めることができる、孤立しない状況を作っていくことが最も大切であろうと思います。

おやつを受け取った親御さんたちからの共通するメッセージは「自分たちのことを見守ってくれている人がいる」ことへの感謝です。孤立している状況を少しでも和らげる効果があると実感しています。僧侶は「愚かな私たちを見守ってくれる仏さま」の存在のありがたさを日々説いています。支援活動を通して親御さんより頂戴するメッセージから、改めて「見守ってくれる存在のありがたさ」を認識させていただくことができ、より信仰を深めるきっかけにもなっていると思います。

この活動がきっかけとなり、貧困問題が遠く貧しい国々での話ではなく、この豊かだといわれる日本国内での話、自分たちの生活する地域の身近なところで起きている問題であると気づき、僧俗手を取り合い行動する人々が増えていくことを期待しています。

みなさまのご参加をお待ちしております。

(おてらおやつクラブ代表 松島靖朗)

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