お寺は「心のお風呂屋さん」。毎月第1日曜日の「お寺の日」で心の垢を落としましょう(雲松寺住職・髙島正哲)
2023.10.19
髙島正哲(たかしま しょうてつ)
1979年兵庫県姫路市生。2002年花園大学文学部仏教学科卒業、黄檗山萬福寺にて修行。2014年雲松寺第33代住職に就任。お寺や僧侶は死者儀礼の為だけではなく、生活者の為の仏道を弘められるように活動中。
月に一度の「お寺の日」
姫路城すぐそばにある雲松寺では、毎月第一日曜日を「お寺の日」と題して、どなたさまも気軽に禅寺ライフを味わえます。お寺が「葬儀や法事だけでなく、いまを生きる人がより善く生きていけるための仏教に出会える修行の場」であることを楽しく体感してもらうためにこの取り組みを始めました。早朝から夕方まで行われる趣向を凝らしたプログラムをご紹介します。
午前7時「早朝坐禅会」
一日の始まりは坐禅から。雲松寺の坐禅会では本堂の縁側で坐ります。早朝の澄んだ空気、ゆっくりと昇る朝日の光、風に揺られる境内の樹々、鳥のさえずりや街の音など、五感で感じられるあらゆるものをありのままに受け止めながら、自身の呼吸に集中し、心のありように向き合います。
坐禅のあとは粥坐。お粥の朝ごはんをご提供します。これがとっても好評です。ここでも、無言で頂く、器を口元まで持ち上げる、お茶と漬物で器を洗うなど、禅道場の食事作法を実践します。
午前9時「お掃除ミーティング」
「みんなでお掃除すると気持ちいい!」をテーマに、参加者全員で、広い境内をお掃除。
世間話をしながらほうきで落ち葉を掃く人、境内にお墓を持つ方はお墓参りを兼ねて自身のお墓やその周辺をきれいにするなど、どこをお掃除するかは自由。
お掃除も、禅の修行のうちの一つです。自らの手で目の前の環境をきれいにすることで、自身の心もスッキリと洗われます。
午前10時「お経で肺活! みんなでお経を読む会」
読経はそれだけで功徳を積むことになりますが、同時に有酸素運動もできてしまう「お寺の日」随一の人気プログラム。
ちぢこまった肺を広げ、全身に新鮮な空気を取り込むことを意識して大きな声でお勤めします。お経に上手下手はありません。ただ一生懸命にお勤めすることで自然と心と体によい作用が伴ってきます。
午後1時30分「チクチク羊毛フェルト教室」
プロの先生をお招きしての羊毛フェルト作り。ペットロスに苦しむ方のグリーフケアを目的として始まった教室で、実際にワンちゃんや猫ちゃんのかたちができあがることで、心の中の想いが具現化していきます。いまでは純粋に羊毛フェルトに興味のある方も参加されており、和やかな雰囲気の中、参加者同士の会話を楽しみながら手先を動かします。
午後4時「ヨガ with hibi」
最後のプログラムは、ヨガの先生を招いて行われるヨガ教室です。太陽が西に傾いていく時間、広々とした本堂で身体を目いっぱい伸ばして、自らの心身を整えます。
このヨガ教室は、姫路発のマッチ型のお香「hibi」を焚いて行われます。参加者にはご自宅用のおみやげもご用意。自宅でもよい香りをくゆらせて、心を落ち着かせることができます。
お寺は心のお風呂屋さん
いつ来てもいいし、いつ帰ってもいい。「お寺の日」は敷居を下げて、気軽にお寺に足を運び、禅の修行を肌で感じてもらうために実施しています。
よく、「お寺は心のお風呂屋さん」だとお伝えしています。修行や悟りなどといったたいそうなことを考えずに、銭湯で汗と疲れを流すように、お寺に足を運んでもらって日々積もる心の垢を落としてリセットしてもらえたら嬉しいです。
ストレスに代表される心の垢は、日常生活の中で継続的に積もってしまうものです。だからこそ、毎日お風呂に浸かって体を清潔に保つように、定期的にお寺にお参りして心の垢を落とすことを習慣化するのはいかがでしょうか。
参加者の方々からも次のようなお声をいただいています。
「お庭の緑を見ながらの坐禅。とても気持ちよがよく、心がリセットされます」
「他の参加者との会話を通じて新しく得られるものがあります」
「住職さんと奥さんのやさしさに触れてほっこりします」
「腹の底から声を出して、ほどよい疲れが気持ちいいです」
インスタントな禅寺体験にはなりますが、他の参加者というサンガ(ともに修行をする仲間のこと)と出会い、やがて各々が自身の生き方や周囲の方々との向き合い方をもっと深く見つめる機会になるならば、それこそが善く生きるための修行といえるのではないでしょうか。
雲松寺の毎月第一日曜日はお寺の日。あなたのお参りも、お待ちしていますよ。