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夏休みだ、お寺に泊まろう! - 修行・自然・地域を大満喫の子どもたち

2019.09.13

子どものエネルギーを持てあます夏休み。お寺で修行させてみる?

「みんなとずっと遊んでいたい!!」

夏休みに開かれた娘(小2)の保育園時代の同窓会で、小学校がバラバラの10数名の子どもたちは久しぶりの再会に大ハッスル。なかなかお開きにすることもできず、最後まで別れを惜しむ子どもたちの声が頭にひっかかりました。

そこで、この夏にもう一度思い出をつくってあげたいと思い、せっかくなので都会の子どもたちがなかなか体験できない、遊び・自然・修行が融合した「お寺に泊まろう!」という企画を実施することにしました。

さっそく、親御さんたちにお声がけ。

「企画、本当にありがたいです。ヤンチャさが増して生意気になり、お寺に修行に出すぞ! が口ぐせになっていたのが本当になるとは。座禅や写経も、みんなと一緒なら大丈夫だと思います。少しは落ちついてくれるかしら。夏休みのよい思い出になりますように」

「学生時代に古美術研究会でお寺めぐりしていたので、親の私自身がとっても興味あります」

「夏休み、実家に預けたりしながら何とかやり過ごそうと思っていましたが、後半は学校のプール以外何もなくエネルギー発散方法が見つけられませんでした。ありがたい企画です」

親御さんたちの反応は良好でした。家族旅行のため参加できないことを惜しむ声が多く聞かれる中、4名の子どもたち(&大人1名)が参加することになりました。当初は子どもたちだけ連れていくつもりでしたが、ぜひ参加したいとご希望された親御さんもご一緒しました。子どもを引率する大変さに気づいていなかったため、大人がいたことはとても助かりました。

娘の助言をもらいながら、子ども目線でつくったしおり

お経・坐禅・写経のフルコース体験。数珠づくりが大人気!

特急かいじと富士急行を乗り継ぎ、東桂ひがしかつら駅で今回お世話になる耕雲院こううんいん 副住職の河口智賢ちけんさんとご挨拶。

お寺に着き、まずは本堂にお参り。子どもたちには経本きようほんを配り、般若心経を一緒に唱えました。子どもたちは何のことだか分からなかったでしょうが、一生懸命に声を出していました。

般若心経を唱える子どもたち

子どもの吸収はすごいもので、翌日には「しゃーりーしー舎利子」など、部分的に般若心経を口ずさむ子がいたのには驚きました。大人は理屈に納得しないと身体が動かない人も多いですが、よく分からなくても「やってみる」という身体感覚から入っていける子どもの素直さは素敵だなと感じました。

また、河口住職のご厚意で、大般若祈祷だいはんにやきとうを行っていただきました。般若経典を大きく開く作法で読経し、その功徳をもって、仏さまに子どもたちの健やかな成長と滞在の無事を祈念いただきました。

大般若祈祷の様子

河口住職に実際の般若経典で肩を叩いてもらう時、子どもたちは緊張気味の表情でした。これも、子どもたちにはよく分からなかったと思いますが、儀礼は「感じる」ものなので、子どもたちの記憶に少しでも残ったならそれでよいのです。

耕雲院は曹洞宗なので、坐禅を大切にしています。朝の陽ざしが本堂深くに入り込む中、10分の坐禅に取り組みました。両足を組む結跏趺坐けつかふざができる子もいれば、片足のみの半跏趺坐はんかふざの子もいました。

朝の陽ざしの中、坐禅をする子どもたち

子どもたちにはとても長い時間に感じられたようです。かなり足がしびれたようで、お寺の小僧さんだったら「かつ !」が入るような不作法さで、終了後は足を前に投げ出していました。

朝のお勤めの終了後は、仏具を移動。子どもたちは我先にキャッキャと仏具を運んでいました。木魚や鏧子けいす(=ゴーンと鳴る大きな鐘)を叩かせてもらったことも新鮮な体験だったようです。

木魚を運ぶ子どもたち

写経は、小学校2年生には難しいかもと思いながらも、せっかくなので思い切って般若心経にトライ。

最初は「〇〇君、何文字書いた?」と落ち着きがなかった子どもたちも、「写経はしゃべらないで書くんだよ」という住職の一言が効果てきめん。保護者が注意してもなかなか静かにならない子どもたちでしたが、住職の一言でピタッと口を閉ざし、熱心に取り組みました。「お寺に預けるぞ!」と、親が子どもに言うしつけも、意外と効果があるのかもと思った時間でした。人間としての規範形成教育という点で、お寺の可能性は大きなものがあると感じます。

集中して般若心経を写経。276文字を書ききりました

子どもたちに大ヒットしたのは、数珠づくり。ほんの10分くらいの作業ですが、自分好みの配色で作れたことがとてもうれしかったようです。そして、ある子が印象的なことを言いました。

「この色の玉は〇〇君、この色の玉は〇〇ちゃん。これを見て、みんなを思い出すよ」

お寺から帰れば、また離れ離れでそれぞれの日常が始まります。数珠に子どもたちなりの温かい物語が込められているんだなぁと感じ入りました。

数珠づくりの様子

 

地域の魅力と自然も満喫!

お寺に滞在中は、修行体験だけでなく、色々な活動もしました。

耕雲院の裏には滝があります。地層の間から出る富士山の湧き水を触り、子どもたちは「冷たい!」と大はしゃぎ。湧き水になるまでに100年はかかるという河口副住職の説明に、「100年前の水なの!?」と子どもたちも興味深く聞き入りました。

お寺の裏の滝。富士山の湧水は冷たかった

 

子どもたちがとても喜んだ体験の一つが「流しそうめん」。

本物の竹を使ったしつらえと、富士山の湧き水を使うという贅沢さに、子どもたちは大興奮。お腹いっぱいにそうめんを食べました。食事後は、水受けのザルから流れ出たそうめんを丁寧に拾い集めて掃除しました。

 

本格的な流しそうめん。竹の長さは約5メートル

 

「美味しい!」と大興奮

 

流しそうめんの後は、近くの川で水遊び。石を投げて水切りを楽しみました

 

また滞在中は、たまたま日本三奇祭の一つ「吉田の火祭り」が行われていたため、せっかくなので足を運びました。吉田の火祭りは、夏の富士山の山じまいのお祭りで、北口本宮冨士浅間神社きたぐちほんぐうふじせんげんじんじやまでの参道に、1キロ以上にわたって松明たいまつが灯されている光景は圧巻です。

火祭りの様子。松明と露店が延々と続く

子どもたちは松明の火に「熱い!熱い!」と叫んだり、実際に火の粉が飛んでくるので逃げ回っていましたが、露店でりんご飴を買ったりして楽しみました。

お寺とのつながりが、子どもたちの人生のセーフティネットになってほしい

滞在中、子どもたちは「和尚おしようさん、和尚おしようさん」と河口副住職を呼んでいました。時代は令和になっても、子どもたちが親しみを込めて和尚さんと呼ぶ光景はうれしさを感じます。

今回はお寺での修行体験や、遊びを満喫という側面もありましたが、お寺や和尚さんとのつながりが子どもたちの記憶に少しでも残れば良いなと感じています。

地域や家族の形が急激に変化する現代は、善意の第三者に出会いにくい世の中でもあります。子どもたちを取りまく環境に目を向ければ、不登校に加え、毎年とても心が痛む夏休み明けの子どもたちの自死があります。学校教育や世の中の管理型の枠組みに、息苦しさや生きづらさを感じる、子どもたちの切実な抵抗ではないかと感じています。

子どもたちも成長の過程で色々あるでしょう。何かつらいことがあった時、「あの時、あのお寺に、あの和尚さんがいたなぁ」というつながりを、少しでも思い出してくれたらありがたいと感じます。全国のどこかに「ありのままの自分を受け入れてくれる」場所があり、人がいる。そのつながりは人生のセーフティネットとして、子どもたちにとってpricelessなかけがえのないご縁になるでしょう。

遊んで楽しんで、少しピリッと修行して、お坊さんと仲良くなる。

葬式仏教ばかりが目立つお寺ですが、全国には子どもたちの健やかな成長を心から願うお寺がたくさんあります。そんなお寺と子どもたちのご縁を育むことを、これからも機会を見つけてやっていきたいと思います。

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井出悦郎

井出悦郎

1979年生まれ、東京育ち。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、一般社団法人お寺の未来を創業。同社代表理事を務める

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