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企業の経営改革ワークショップ in お寺。「仏さまの見守り効果」がつむぐ未来(井出悦郎)

2021.01.07

お寺の本堂での経営改革ワークショップの様子

 昨年から、とあるまいてら寺院を会場に、某企業の経営改革に関する全社ワークショップを実施しています。
 その企業は、

  • 社員が案件対応のために全国に分散しがちで、社員同士のコミュニケーションが促進されず、会社としての一体感が高まりにくい
  • 社員一人ひとりの専門性が高い反面、自らの正しさが強くなりがちで、軋轢が生じがち
  • 案件対応に没頭・忙殺される一方、会社の将来をクリエイティブに検討する機会がない

 という問題が生じていました。
 そのため、会社の将来を検討する場づくりとして、「お寺で全社ワークショップを行ないませんか?」と提案したところ快諾をいただき、実施する運びとなりました。

「仏さま見守り効果」で、お寺で行うワークショップは場が荒れない

 お寺でのワークショップを提案した理由は以下のようなものです。

  • 経験上、場の力によって各自がエゴを抑制する効果が無意識的に働き、お寺で行なわれるワークショップは場が荒れないこと(個人的に「仏さま見守り効果」と呼んでいます)
  • お寺という非日常性の空間によって、リラックス効果と自然と思考の時間軸が伸び、ることで、クリエイティブな発想が促されやすいこと

 このようなお寺の良い特性を活かすことで、通常の会議室で行うワークショップより、効果を最大限上げることが可能になると考えます。

「仏さまが舞い降りるように、アイデアが降りてきた」

 実際にお寺の本堂でワークショップを実施してみたところ、社員の方からはとても好評でした。

「仏さまに見守られている安心感なのか、自分の思っていることを素直に言うことができました」

「壁にいらっしゃる仏さまがフワーっと舞い降りてくるように、自然とアイデアが降りてきました」

本堂の壁にある雲中供養菩薩像

 新型コロナ対策等を種々講じた緊張感がある中での実施でしたが、社員の方々から高く評価をいただき、ホッと胸をなでおろすとともに、お寺という場の力のすごさを改めて実感する良い時間となりました。
 そもそもお寺は建物の風通しが良く、換気がしやすいため、密閉性の高いオフィスや会議室よりも、感染症等が懸念される時期においても相対的に安心感があると思います。

檀家さんを超えてお寺の場を開いていくことは一つの公益性

 高い評価をいただくことができたのは、一重にお寺と檀家さんが協力して、素晴らしい空間を長年守ってきていただいたことによる賜物です。
 お寺の建物や境内を綺麗に保ち続け、お参りされる方々に心安らぐ環境を提供することそのものが立派な社会貢献だと思います。

 お寺という歴史的・空間的資源の価値はとても素晴らしいものがあります。一義的には檀家さんがお寺を守り、活用していくわけですが、檀家さんという共益的な活用にとどまらず、広く門戸を開いてお寺を有効活用していくことは、公益法人(宗教法人)としての一つのあり方だと考えます。
 お寺とはご縁が薄かった方も、お寺と触れる機会を通じて、お寺への親しみが醸成されることにもなります。長い目で見れば先祖供養以外のきっかけを通じてお寺ファンを増やしていくことにもつながります。

お寺という場の力を活用し、企業も新たな可能性に出会える

 実際にお寺でワークショップを行なう場合は確かなプログラムが必要ですが、場の特性をしっかり活かしたプログラム設計を行うことで、以下のような効果が期待されます。

  • 経済原理だけではない、多面的なアイデア・発想が促される
  • 長期視点で物事を考えやすくなり、自然と未来志向となる
  • 各自のエゴが抑制され、社員同士の関係性が深まる

 きっと社内では発見できない新しいアイデアや豊かな気づきと出会い、未来に向けた可能性が紡がれていくと思います。
 企業も何かに行き詰まった時や、何かを変えなければいけない時は、思い切って会議室を出て、「お寺へ行こう!」というのも良いかもしれません。

 この一年間、在宅勤務が一般化し、場所に制約されない仕事のあり方が奨励される業界が増えました。
 今まではオフィスや事務所に様々な仕事・機能が集約されていたものの、それらの仕事・機能が今後は開放されていきます。「どこで」「誰と」「何をするか」という仕事の進め方も柔軟化しますので、オフィスや事務所は業務に没頭する場所から、絆やつながり等のコミュニティを感じられる場へと変容していくと思われます。
 そう考えると、仕事の創造性や生産性を高めるために、目的に応じて様々な場所を活用していく流れが進むでしょう。その流れの中で、目的に応じてお寺を活用する企業が増える未来が訪れたら面白いですし、ワクワクしますね。

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