本堂に並ぶ大量のカレー。お寺の社会貢献活動を檀信徒の皆さんとともに(真言院住職・佐藤妙尚)
2022.08.31
佐藤 妙尚(さとう みょうしょう)
1982年8月、真言院の一人娘として生まれる。都留文科大学(文学部・初等教育学科)を卒業し、学習塾に就職。26歳のときに父が死去、27歳で4代目住職に就任。三児の母となり、現在子育て奮闘中。
今年のお盆にはこんな企画を行いました
「盆カレーをお供えしています」
人間の煩悩の数といわれる108の 煩(悩)カレーを
お供えするプロジェクトです。
集められた盆カレーは、お盆が終わりましたら
ひとり親支援団体などへ送ります。
皆様のお気持ちがどこかの親子の笑顔につながります。
真言院では以前よりおてらおやつクラブの活動に参加しています。お寺にお供えされたお菓子などのお下がりを、おてらおやつクラブを通じて子育て支援団体やこども食堂などへとおすそ分けしています。今年のお盆はご本尊にレトルトカレーをお供えし、そのお下がりをおすそ分けしようと考えました。
なぜ「ボンカレー」?
以前、おてらおやつクラブを通じて食品を送ったご家庭からお手紙が届きました。
「レトルトカレーは自分ひとりでお昼を食べるときに便利なんでたすかります。ありがとうございます」
中学生の女の子からの手書きのお手紙でした。最近のレトルトカレーは電子レンジだけで調理できるので、お子さんだけでお留守番をするときに重宝するのだそうです。ひとり親家庭の場合、お子さんは学校が休みでも親御さんは働きに行かなければいけないときが多くあります。そんなときに火を使わずに調理ができるのはたしかに安心です。私も子育て中の身でありながら、その中学生からのお手紙で初めてレトルトカレーの便利さ安心さやありがたみに気が付きました。
……ということもありましたが。
お盆の「ボン」に、煩悩の「ボン」、それにボンカレーのパッケージもオレンジと黄色でなんだか色味が本堂と似ているし、お寺に大量のカレーが並んでいたらちょっと面白いんじゃない?? という私の悪ノリがほとんどです。
お寺がなんか面白いことをやっている、しかもそれが社会貢献になっている、ということを檀信徒の皆さんにも見てもらいたくて、そしてできれば皆さんにも参加してもらいたくて、この盆カレープロジェクトがスタートしました。
おまいりの方々の反応は
お盆にはたくさんの方がお寺にお参りにいらっしゃいます。行事のたびにいつもおまいりにいらっしゃる方も、お盆やお彼岸などのご先祖まいりのときにのみいらっしゃる方も、数年数十年ぶりにお寺に足を運んだという方も、親戚に連れられて初めていらっしゃる方も、ほんとうにいろいろな方がお参りにいらっしゃいます。
お寺にあまり馴染みのない方もたくさんいらっしゃるときにお供えしてあったこの大量のボンカレー。これはやはり誰が見ても異様な光景だったらしく、そこを通るほとんどの方が一度は目を向けていき、「おもしろいね」と笑ってくれ、立ち止まってじっくりと読んでいってくれる方も多くいらっしゃいました。
盆の入りでたくさんの方がお参りに来た13日には、これを見た方が「ボンカレーを買ってくればいいのか?よし!今そこのコンビニに行って買ってくる!」とすぐに最寄りのコンビニへ行き「5個しかなかったから買い占めてきた!」と並べてくれ、そしてそれを見ていた別の方が「じゃあ俺はあっちのコンビニに行ってくる」ともうひとつのコンビニに行って買い占めてきてくれました。
思わぬ大きな反響で、小さな村のお店からボンカレーが消えて村のボンカレーがすべてお寺に集結してしまうという事態になりました。
多くの方々のご協力でたくさんのカレーが集まりました
お盆の終わりには、 計129個のボンカレーと、募金箱には6,629円が寄せられました。集まったお金でボンカレー10個とおこさまボンカレー30個を買い足し、合計169の煩(悩)カレーが集まりました。煩悩の数である108の目標達成です。
これらはすべてお菓子などと一緒に箱詰めし、5か所の子育て支援団体などへと送りました。協力してくれた檀家の皆さんの気持ちがどこかの親子に届き、少しでもお役に立てていたら嬉しく思います。
盆カレープロジェクトをやってみて
今回いちばん嬉しかったのは、ひとり親世帯が抱える悩みやお寺が行う社会貢献活動について檀信徒の皆さんと一緒に考え、一緒に参加してもらえたことでした。
地元農家の檀家さんにおてらおやつクラブのことを説明すると、「うちらは野菜ならたくさんあるからいいけど、都会には食べるのに困ってる人いっぱいいるもんね。ちょっとだけどお金置いていくね」と協力してくれました。カレーを買いに走ってくれた方は、お盆が終わったあとに「カレーはたくさん集まったの?」と声を掛けてくれ、「住職がね、面白いことをやっていてね。お盆だからボンカレーを集めてお寺に並べてすごかったよ。それを困っている人のところに送るんだって」と、この活動を知らない方にも私のかわりに紹介してくれていました。お寺は檀信徒の皆さんに支えられていることを改めて実感しました。
お寺は社会のために何ができるか。
これからも、檀信徒の皆さんとともに考えていきたいと思います。