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エベレスト登頂に挑む。本気で取り組む大人の姿を子どもたちに見せたい(まいてら写真家・関健作)

2024.02.16

 まいてら登録寺院を多数撮影されている写真家・関健作さん。
 関さんは登山経験も豊富で、日本をはじめ海外の様々な山に登っています。
 そして2024年4月から6月にかけて、なんと世界最高峰・エベレストの登頂にチャレンジすることになりました。エベレスト登頂に向けた思いを関さんに寄稿いただきました。共感いただいた方は、ぜひ温かい応援をいただければ幸いです。

関健作(せきけんさく)

順天堂大学スポーツ健康科学部卒業。2007年から3年間体育教師としてブータンの小中学校で教鞭をとる。滞在中仏教と共に生きる人々に魅了。日本に帰国後、2011年から写真家の活動を始める。ブータン、ネパール、インドのヒマラヤを旅すること、山歩きが趣味。

KENSAKU SEKI PHOTO WORKS

個人的な挑戦が、周囲にとっても意味のある挑戦だと気づく

 2023年11月に撮影の仕事で、ネパール東部のイムジャツェ(6180m、英名;アイランドピーク)に登りました。果たして自分に登れるか分からない中で現地に行ったものの、無事に登頂しました。
 その際に同行したシェルパから忘れられない言葉をもらいました。

「あの山の向こうにエベレストがある。お前なら登れるかもしれない」

 帰国してからも頭からずっと離れない言葉。
 人生でいつかはエベレストに登りたいと思ってきましたが、果たしていつなのか。著名な登山家が事故で亡くなる40代前半の年齢が自分にも迫る中、「今しかない」という思いが自然と湧いてきました。

エベレスト
ナムチェ3440mから撮影したエベレスト

 エベレスト登頂は極めて個人的な思いから始まったチャレンジですが、色々な所で決意を話す中で、チャレンジの意味合いが変わってきました。

 例えば、自宅のある神奈川県秦野市で、ご近所さん10名くらいにイムジャツェの報告会を開いた際、エベレスト登頂についてもお伝えしました。私の話が終わった後、年配の方から声をかけられました。

「自分もずっとやりたかったことがあったけど、諦めていたことがあった。あなたの話を聞いて、本当にやりたかったことにチャレンジしようと思います。」

 その言葉を聞いて、とてもうれしく思いました。人の気持ちを動かしたいと思って話したわけではありませんが、現実に人の気持ちが動きました。

 私の妹は病をわずらっているため、生活面の諸事を迅速に進めることが難しい状況です。しかし、エベレストに行くことを伝えたら、妹は生活面の様々なことを自ら対処しようと動き始めました。

 極めて個人的なものだと思っていたエベレスト登頂。しかし、周囲にとっても意味のあるチャレンジだと思えてきました。
 エベレストはずっとやりたかった夢なので、僕の意識が本気モードに変わることで、周囲の意識に影響を与えることを実感します。

本気で取り組む大人の姿を子どもたちに見せたい

 私は長らく、ブータンや写真家としての様々な活動を、児童や生徒に話す講演活動に取り組んできました。
 今までは、子どもたちの前で話す度にやりがいだけでなく、実はむなしさも感じていました。それは、話していることが過去のエピソードばかりであり、今の自分は何にチャレンジしているのかという鋭い問いが、話すほど自分に返ってきていました。

 先日、ある中学校で話をする機会がありました。
 私は話す際、いつも生徒たちの参画性を増すため、2~3分考えて発表してもらう機会をつくります。先日も、講演の最後のパートで、エベレストのチャレンジと現在の課題をリアルに話しました。
「僕も今真剣に考えてます。みんなの知恵を貸してください」って伝えたところ、必死さが伝わったからなのか、これまで以上に生徒たちの手があがり、多くの生徒が発表してくれました。その光景にとてもうれしさを覚えました。

  大人が本気で取り組む姿を見せた時、子どもたちはどう変わるのか。私はそれを見たいです。
 エベレスト登頂は、個人的なチャレンジから、どれだけ多くの人にとって意味や影響を及ぼすものにしていけるかというチャレンジに移行しました。

肉体を鍛え、恐怖を克服する身体づくり

「エベレスト=死」というイメージがあるのか、既に多くの人に「死なないで」という言葉をかけられています。
 チャレンジしても死んではダメなので、無事に帰ってくることが大切です。そのためにも、万全の準備と対策が必要です。

 まずは高所に慣れる身体づくりです。
 8,000メートルの世界は、平地の3分の1の酸素と言われます。その場に滞在しているだけでも死ぬ可能性があるので、そこで耐えうる身体をつくる必要があります。
 最終的には現地で高地に慣れていく段階を踏みますが、日本でできるトレーニングはできる限りのことをします。

 特に冬の富士山は高さも寒さも良いトレーニング場所になります。
 先日も登っている途中でふと、1,000メートル滑落して身体がバラバラになって死ぬイメージが頭に湧いてきました。死を意識した途端に躊躇し、荒れる呼吸。身体づくりは肉体だけでなく、恐怖に打ち勝つ精神力を鍛えることにもつながります。

富士山
5合目。冬の富士山は強風が吹き荒れる
富士山
富士山7合目付近、滑落しないよう一歩一歩慎重に歩く
富士山
富士山の頂上、剣ヶ峰から下山。下りも気は抜けない

 エベレストに登られた大先輩からも、怖いことをたくさん聞かされ、そのたびに揺さぶられます。エベレストでは、一歩一歩試される瞬間が連続するのでしょう。

「今突っ込むべきか、今日はここまでにしておくか」
「この恐怖に負けて引き返したら、また負け癖つくぞ」
「帰る勇気もあれば、いかなければならない勇気もあるぞ」

 様々な声が自分の脳裏を駆け巡ることが今から想像されます。頭のネジを一本飛ばす必要があるくらい、恐怖に向き合っていくことが必要なのでしょう。

 そして、一つの動作が命取りになる高所では、カメラ撮影も大きなハードルになります。
 呼吸がつらい、手袋外すのがつらい、顎を動かしたり唾をのみ込むのも面倒になる。
 特にエベレストは絶対無理しちゃダメと言われます。身体が瞬時に冷え、高山病になって死に至るリスクが常にあります。
 そのような環境下で重い機材を背負って登り、瞬時にカメラを出してサッと撮る。こんな芸当が果たしてできるのか。撮影しない勇気も持てるくらい、ギリギリまでトレーニングを重ねたいと思います。

資金づくりも大きなチャレンジ

 身体づくりと違った面で大切なテーマが、資金づくりです。
 世界最高峰のエベレスト登頂にはかなりのお金が必要で、今回は6万ドル(約900万円)をかける予定です。
 シェルパを一名減らしたり、酸素ボンベを減らすと100万円単位で安くなっていくのですが、その分成功率もグッと下がり、命の危険が増します。無事に帰るという命の安全の観点で、今回は適切な予算組みを行ないました。

 私にとって6万ドルは、とても大きな金額です。
 これほどの大金を登頂前につくれるかどうかも、ある種の恐怖です。でも、本気でやるしかありません。

 そして、資金づくりのために、応援グッズの販売サイトを作成しました。自分が思った以上に応援していただける方が多くいらっしゃることに勇気をいただいています。もし、今回のチャレンジに共感されましたら、ささやかでけっこうですのでぜひ応援いただければ幸いです。

応援サイト
エベレスト登頂の応援サイトです

日常で死を意識する大切さ

 生きている際の悩みは、例えば人間関係、お金、病気、寝たきりなどを経て、最後のステップが死です。人間にとって死が極限の悩みだと思います。

 エベレスト登頂は常に死を意識するチャレンジです。
 登頂を決めてから、小さな悩みがどうでも良くなり始めました。究極の悩みに向き合うと、それ以外の悩みは小さくなり、時には消えていくのだと感じます。

 一方、現代社会では、日常で死を意識する機会が減っています。
 誰もがエベレストにチャレンジするまでは必要ありませんが、自分の中の小さな悩みを消していくためにも、死を意識する機会を日常の中に設けることの大切さを感じます。
 多くのお寺の住職が、「死に触れること」「死を意識すること」の大切さを説くのは、生きる悩みを相対化し、授かった自分の命を大切に生き切ることにつながるからなのだと、今回のエベレスト挑戦を通じて気づかされました。

 死と隣り合わせのエベレストに登頂できたら、その先に何があるのかはまだ分かりません。
 しかし、一つはっきりしているのは、登った後も何かに本気でチャレンジし続けることだと感じます。大人の本気の姿を子どもに見せ続けること。これが私にとってのチャレンジです。
 死の恐怖を克服してエベレストの頂上に立った時、そこから見える人生の風景を楽しみに、丁寧に繊細に準備を重ねて現地に赴きたいと思います。

お寺画像
関健作公式サイト
エベレスト登頂の応援グッズを販売しております

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