「園長先生は世界一の力持ちに!」夢を追う姿を園児に見せ続ける(龍泰寺住職・宮本覚道)
2023.11.16
龍泰寺の宮本覚道住職(岐阜県・曹洞宗)は、幼稚園の園長先生、パワーリフティングでアジアチャンピオンと、さまざまな顔を持つだけでなく、『男梅顔天下一決定戦』や『H1法話グランプリ』など、「したい!」と思ったことに次から次へとチャレンジしています。そのモチベーションの源泉は? 話を聞いてみると、園児からのあるひと言がきっかけだったようです。
宮本 覚道(みやもと かくどう)
1978年生まれ。慶應大学卒業、駒澤大学大学院修了後、永平寺・總持寺の両本山で修行。龍泰寺住職。あかつき幼稚園園長。現役のパワーリフティング選手でアジアチャンピオン&日本記録保持者にも。東海管区センター布教師。保護司。認定心理士。
園児に宣言「世界一の力持ちになる」
こんにちは。宮本覚道です。幼稚園の園児たちからは「かくどう先生」と呼ばれています。
子どもたちには「はやく大人になりたい」と思ってもらいたい。そんな想いから、まずは自分から率先して、夢を掲げて、真剣に取り組んで、存分に楽しむようにしています。
もちろん、はじめからそんなことができたわけではありません。夢だったプロ野球選手になれないと分かった時も「自分はお寺を継がないといけないから…」と自分自身をごまかしていました。
幼稚園に関わりだした頃のことです。私はしきりに夢を持つことの大切さを園児たちに説いていましたが、ある園児から「夢って本当に叶うの?」と聞かれた時に、「叶うんだよ」と自信を持って答えられない自分がいました。
その時に、私は「借り物のことば」で園児に向き合っているのだなと気づかされました。
借り物ではなく、自分の中から出てきた血の通ったことばを園児たちに語りかけるには、自分自身が夢を持ち、それを叶える努力をしなくてはならない。そうして始めたのがパワーリフティングです。
2009年頃から始め、園児たちに「世界一の力持ちになる」という夢を語りながら、毎日重いバーベルを持ち上げました。地道なトレーニングのおかげさまで、アジアチャンピオンを勝ち得ることができました。世界大会では惜しくも2位。いまも夢である世界チャンピオンを目指して日々バーベルを持ち上げられているのは、「夢に向かってがんばることって、楽しそう」と園児たちに感じてもらいたいとの想いからです。
「男梅」も「H1法話グランプリ」も真剣です!
グミやキャンディで有名なノーベル製菓による『男梅天下一決定戦』にもエントリーして、こちらでもありがたいことにグランプリをいただきました。
「絶対に一番多く表を入れてもらうんだ!」と、TikTokやX(旧Twitter)などのSNSを駆使するだけでなく、お檀家さん、保護者さん、友人や知人、宗派内の方々など、たくさんの方に投票をお願いして回りました。たとえ遊びだと思われても、やるからには常に真剣に取り組みます。その方が楽しいからです。
そして、『H1法話グランプリ2023』への応募は、お坊さんとしての大きな挑戦です。予選会を通過して、2023年12月2日に『なら100年会館』で行われる本選のステージに立たせていただきます。
1500人もの聴衆を前にして、どれだけ血の通ったことばを話せるか。この貴重な機会を真剣に楽しんでこようと思います。
真剣にやることで心が調っていく
わたしは禅宗のお坊さんなので、禅の教えにからめてお話ししますと、なにごとも真剣に取り組むことで心が調うというのは、遊びも、仕事も、禅の修行も、同じです。
禅では、坐禅だけでなく、食事や、掃除や、日々しなければならない目の前のことに対して全集中することを大切にしています。好きなことも、イヤなことも、真剣に取り組むことで、やりきったあとに心がスッキリするものです。
もちろん、イヤなことよりも好きなことの方が、真剣になりやすいですよね。ですからまずは、大人も子どもも、「したい!」と思ったことにチャレンジしてもらいたいです。なぜなら、自分の中から湧き上がる想いに対して素直に生きていくことは、自己肯定そのものだからです。
もちろん、がんばってもうまくいかないこともあるでしょう。でも大丈夫です。うまくいかない時はまわりの力を借りてもいいし、新しい夢にトライしなおしてもいいんです。大事なのは、夢に向かって真剣に取り組むことそのもの。その瞬間、私たちは輝いているし、その時間を楽しく感じているはずです。
まずは私たち大人から、したいことやしなければならないことに真剣に取り組み、それを存分に楽しみましょう。そしてその姿を子どもたちに見せることが、何よりの教育ではないでしょうか。
私は毎朝、子どもたちに会えるのが楽しくて幼稚園に通っています。今日も存分に、子どもたちと真剣に、楽しい時間を過ごしてきます。