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ハワイの盆ダンス〜ルーツに想いをはせるお盆 – 定義如来西方寺 住職 大江田紘義さん【教えて!お坊さん】お盆に込める想い③

2020.08.04

 お盆を迎えるにあたり、さまざまなお坊さんにお盆に込める想いを語っていただくインタビューシリーズ。第3弾は、宮城県仙台市の名刹めいさつ定義如来西方寺じようぎによらいさいほうじ(浄土宗)の大江田紘義おおえだこうぎ住職にお話をうかがいました。

大江田 紘義(おおえだ こうぎ)

仙台生まれ仙台育ち。大学を卒業後はホノルルにあるハワイ浄土宗別院に6年勤務。その後自坊に戻り副住職、2014年6月より住職を拝命し現在に至っております。趣味は犬の散歩(特に早朝の境内)とワークアウト。

定義如来西方寺寺院ページ

にぎわうハワイ・ホノルルの盆ダンス

2005年当時の盆ダンス。浴衣の人も、アロハシャツの人も入りまじる

 大江田さんには、盆踊りに特別な思い出があります。若いころ、ホノルルにある浄土宗ハワイ別院に勤務していた時、現地で開催される盆踊りを目の当たりにしたのです。

「ハワイでは盆踊りのことを『盆ダンス』と呼び、6月から8月の毎週末、島内のどこかの仏教寺院で催されます」
 島内には「福島」や「岩国」や「沖縄」など、祖先の故郷を冠したさまざまな盆ダンスクラブがあり、新聞には盆ダンスカレンダーが掲載されるほど。ハワイ版の盆ダンスも、その光景は日本で行われる盆踊りそっくりだそうです。

「やぐらを組んで、提灯ちようちんをつるして、太鼓をたたいて、流れる曲はおなじみの『炭坑節たんこうぶし』など日本各地の音頭です。参加者の多くは浴衣ゆかたを着ていますし、屋台では焼きそばやちらし寿司がふるまわれます」

 現地の人たちの生活に深く根づいた盆ダンスにはじめて触れた時、大江田さんの中に熱くこみ上げるものがあったと言います。

「人種国籍にかかわらず、みんなが楽しそうに盆踊りを踊っている。誰もが毎年の夏の行事として当たり前のように踊る姿に、移民の方々の歴史を見た思いがしました。ここまでハワイ社会に盆踊りが浸透しているということは、それだけ日本からの移民やその子孫たちが、世代を超えて奮闘してきた証に他なりません。サトウキビ畑での過酷な労働、移民法による排斥、真珠湾攻撃。移民の方々の歴史を想うと、胸が熱くなり、涙が出そうになりましたね」

沖縄のエイサーの衣装で参加する人たち。盆ダンスには、それぞれのルーツが垣間見える

 ハワイの人たちにとっての盆踊りには、先祖供養と同時に、祖国への想いが込められているのだと大江田さんは続けます。

「現在は日系4世や5世の時代です。ただダンスを楽しんだり、日本文化に触れることが目的で、盆踊りが死者や先祖のためのものであることを自覚していない人の方が多いかもしれません。でも、お寺という、仏さまに守られてご先祖様がまつられている場所でくり広げられる踊りや音頭は、まちがいなく日本発祥のもの。死者や先祖に向けられた盆ダンスは、それ自体が日本という祖国への郷愁も帯びているように感じます」

 定義如来西方寺の盆踊りは、毎年お盆の終わりの8月15日に開催する「ローソク祭り」の中で行われます。檀家や地元の人たちが集まり、参拝者が献灯したローソクで参道を灯し、太鼓の演舞や盆踊りを楽しみながらゆっくりと夏の夜を過ごします。

「風呂上がりの浴衣姿で来るような、気楽でこじんまりとしたお祭りです。みなさん飲み食いしながら盆踊りを楽しんでいかれます。ハワイと同じで、日本でも6月頃からいろんなところで太鼓や踊りの練習が始まる。夏の風物詩ですよね」

ローソク祭りにて、献灯に照らされた趣ある参道
参拝者の献灯1つ1つが、お盆のムードを盛り上げる

年に一度のお参りにわくわく

 平家へいけゆかりのお寺として、仙台市内はもとより東北一円に信者を持つ定義如来西方寺。
 毎年8月の第1土曜日には、市民にとっておなじみの「定義如来夏祭り」を開催します。今年(2020年)はコロナウイルスの影響で開催中止となってしまいましたが、例年はお寺の縁起にかかわりがある平貞能たいらのさだよし菩提ぼだいを弔う法要を行い、奉納演芸や神輿みこしに屋台、打ち上げ花火も上がる盛大なお祭りです。夏祭りとともに、大江田さんもお盆モードのスイッチが入ると言います。

「夏祭りにはたくさんの参拝の人がお越しになり、市内のお坊さんも集まって法要を執り行います。西方寺がトップバッターとなり、翌週から順番に市内のお寺のお盆法要にお邪魔します。夏祭りが始まると、いよいよお盆が始まるのかと、気持ちが高まりますね」

 お盆はお坊さんにとっての一番の繁忙期。とにかく体力を消耗しますが、お盆参りで大変なことは? の質問に大江田さんは「年に一度のお檀家さんのお参りや合同供養。久しぶりにお会いできるんだと、むしろわくわくします」と笑顔で話し、夏祭りやローソク祭りへの想いをこう続けます。

「ありがたいことに西方寺は東北地方一円に信者さんがおられます。夏祭りでは市内外からたくさんの方が足を運んでくださる。一方で、お盆参りやローソク祭りでは地域の方々と触れあえる。お盆の期間中にたくさんの檀家さんや信者さんに出会うことで、みなさまのおかげさまでお寺が支えられていることを実感させてもらっています」

「祭りなどのイベントを通じてお寺がもっと身近な場所になれば」と大江田さん

 2020年も、お盆供養や「ローソク祭り」は行うとのこと。
「ご先祖さまはいつもそばにいるけれど、お盆という行事を迎えることで、自分たちのルーツを再確認する時間にしてほしいですね」

 次の最終回は、宝樹寺ほうじゆじ・林住職へのインタビューをお届けします。

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玉川 将人

玉川 将人

1981年山口県生まれ。家族のたて続けの死をきっかけに、生涯を「弔い」に捧げる。都内の葬儀社に5年間従事したのち、現在は仏壇墓石の素心(兵庫県姫路市)に勤務。供養業界に携わりながら、ライター「とむらいマン」として活動。1級葬祭ディレクター、2級お墓ディレクター、2級グリーフケアカウンセラー。 「この世を生きるということは、亡くなった人とともに生きることなんだよ」ということを、私たちはついつい忘れがちです。お寺は、そんな大切なことを思い出させてくれるとってもありがたい場所です。お寺の魅力を発信することで、祈りや弔いの素晴らしさをお伝えできればと思います。

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