【現代お墓事情①】永代供養墓を日本一知るプロが語る「お墓とお寺の見分け方」
2021.08.23
自分が死後に眠るお墓が明確に分かっている。そう思える人が少しずつ減ってきている時代です。
そんな時代において、「永代供養墓」の存在感が急激に高まっています。ひと昔前はさみしいお墓として考えられがちだった永代供養墓が、今は前向きに選択されるお墓の形態として華やかな脚光を浴びる時代になっています。
とは言っても、間違いのない確かなお墓選びはなかなか難しいもの。文字通り一生のお買い物であるお墓。自分にぴったりのお墓にめぐり合っていただきたい。
そんな思いから、日本でこの方ほど永代供養墓に詳しい人はいないのではないかという、礼拝空間デザイン室TSUNAGU代表の森口純一さんに、お墓(永代供養墓)の選び方、そしてお寺の見分け方について、プロの視点から大切なポイントをまいてらで連載いただくことになりました。
森口純一(もりぐちじゅんいち)
礼拝空間デザイン室TSUNAGU(つなぐ)代表。昭和41年生まれ。全国47都道府県の寺院に永代供養墓を設計。さらに永代供養墓をきっかけに参拝者目線で布教活動をデザインし、仏教伝道を基盤にお寺の存在価値を高める活動をする。
まいてらを運営する一般社団法人お寺の未来は、森口さんと長らく懇意にさせていただいています。全国で頑張るお寺をどう応援できるかという観点で様々な対話を重ねてきており、この連載もその一つの取り組みとして森口さんにひと肌脱いでいただくことになりました。数々の現場経験を通じて培われた森口さんの知恵やノウハウは、多くの読者の方々に有益な情報となるでしょう。
現在の永代供養墓は第2期ブーム
はじめまして。礼拝空間デザイン室TSUNAGU(つなぐ)の代表・森口純一です。
日本中のお寺に永代供養墓を設計することになってから30年。その間に建てた永代供養墓は400基。おそらく日本で一番永代供養墓のことを知る男かも知れません?私の人生は、永代供養墓に捧げると言っても過言ではありません。自分や自分の大切な人が「こんなお墓に入りたい」と思えることを大切なテーマにして、全国津々浦々のお寺を駆け巡っています。
現在、永代供養墓は第2期ブームを迎えています。最初のブームは、無縁墓改葬に関わる法律が緩和改正された平成12年でした。
当時は映画『お墓がない』が話題となったお墓バブル時代。無縁となったお墓を改葬し、空いた土地にどんどんお墓をつくり飛ぶように墓が売れたとき。当時の永代供養墓は、改葬で出た遺骨の安置場所として使う目的の方が多く、言って見れば無縁仏の安置所。イメージも良くなく、利用者も少なかったことを記憶しています。
ところが現在では、永代供養墓を選ぶ人が、一般墓所(先祖代々が入る伝統的な家族のお墓)の購入者を上回る勢いです。お墓は、先祖・家族から、今や夫婦や友達、そして一人で入るものに変化しました。
自分のお墓は自分たちで探す「お墓探しの旅」時代
お墓に関する悩みや心配を抱えている方は、年々増加しています。
「自分が亡くなったらどうなるの?」
「ちゃんとあの世に行けるのだろうか」
「誰が供養してくれるのか」
「子供達にはお墓のことで迷惑をかけたくない」
様々な理由から、自分のお墓は自分で確保する時代になってしまいました。そこに追い討ちをかけたのが「墓じまい」です。お墓を持つことが、誇りや喜びではなく、精神的・経済的な負担になっていったのです。
今は、自分たちのお墓探しに時間を費やし、生き方や死に対する向き合い方、そして死を受け入れ、前向きに人生終盤を過ごしていく時代。考え方によっては、死を見つめることが元気の源になる時代と言えるのかもしれません。
お墓探しの旅。でもどうやって探せばいいの?
私自身は、永代供養墓の設計をしますが、販売や斡旋をしたりはしません。しかし、一般の方から沢山のお声やお悩みを聞きます。
「いいお寺を紹介して下さい」
「おすすめの永代供養墓を教えて下さい」
インターネットにはたくさんの情報が流れているのに、なぜか私に聞いてこられる方が少なくありません。それは、本当に知りたいことや真実は、インターネットからは探しにくいことが挙げられます。そこで、このたびの機会をいただき、永代供養墓の探し方重要ポイントなどをお話しさせていただけたらと思います。
まいてらには、真摯な運営に努められている寺院が多く掲載されています。各まいてら寺院のお墓の情報を見る時にも、表面的な字面以上の奥行きが見えてくるような、そんなポイントをお伝えしたいと考えています。
永代供養墓が「選ばれるお寺」の決め手
お寺の経営も苦難の時代です。お寺とお墓は先祖代々守り継承することが当たり前だった慣習が崩れてきています。お墓の継承が困難になってくると、檀家数が確実に減少していくため、新たな檀家獲得のために今や永代供養墓が大きなご縁のきっかけとなりつつあります。
お寺との付き合いに馴染みのない世代の生活者には、檀家や菩提寺という意識が薄れており、「お墓をきっかけに、お寺を選ぶ時代」に突入しています。そのためにも生活者に選ばれるための永代供養墓をつくることが、お寺の経営にとって大切な要因になっているようです。複雑な心境ではありますが、檀家数の減少という問題が大きくなればなるほど、私のもとには全国のお寺から永代供養墓の設計依頼のお仕事が増えてくることになります。
永代供養墓をきっかけにお寺の門戸が広がっている
私たちの日常の中に、お寺(仏さま)、お墓(ご先祖さま)と向き合う時間がどれくらいあるでしょうか。お寺へお参りに行って、仏さまやお墓の前で『ありがとうございます』と手を合わせる。そんな時間こそが一番必要な時間だと、私は信じています。手を合わせることで心が安らぐのは、お寺という非日常的な空間だからできるのだと思います。
今、お寺は積極的に生活者のみなさんを受け入れようとしています。コンサートやイベントに取り組むお寺が増えているのも、まずはみなさんにお寺を知ってもらう機会としていただくためです。
「社会の声に応えるため」
「『さまよう遺骨』なんて社会をつくらないため」
「供養は平等に受けられるため」
永代供養墓をきっかけに、たくさんの方を救済しようと頑張るお寺が増えています。
そして、私もお寺のともしびを絶やさないように、日々お寺の方たちの土台をなって全国地方を飛び回っております。永代供養墓(はか)に人生をかける永代供養バカになって(笑)。
次回から少しずつ、お墓とお寺の見分け方についてお話してまいります。
※次回記事はこちら
まさに今お墓を探している所なので大変ありがたい情報です。これからの掲載楽しみにしてます。