生き方を見つめ直す、人生100年時代のお寺ワークショップ(乗円寺住職・福田乗)
2023.05.27
人生100年時代は、仕事、健康、家族、学び、介護、終活等、考えなければならないテーマが多岐にわたります。
一つひとつのテーマを個別に考える場は色々ありますが、多岐にわたるテーマを統合的に考える場は意外とないものです。
この度、住職と社会起業家(中高年の就労支援)の2つの顔を持つ、乗円寺の福田乗住職が、人生100年時代の生き方を見つめるお寺ワークショップ(全3回)を開催することになりました。
開催に向けた思いを福田住職におうかがいしました。
※ワークショップのチラシはこちら
福田乗(ふくだじょう)
1979年石川県金沢市生まれ。大谷大学仏教科卒業。広告代理店、人材採用会社で勤務。先代の病状悪化に伴い金沢に戻り、34歳で住職拝命。寺院の伝統行事を大切にしながら、時代に合う分かりやすく、シンプルな仏教・真宗の教えをモットーに、法話や寺報で発信する。パソコン道場樂、NPOシニア道場樂代表、NPO法人さくらっ子理事も務める。
人生を俯瞰的に見て、生き方を見つめ直すことが大切
– 今回のワークショップを始めようとしたきっかけ・思いはどのようなものでしょうか?
私自身が住職でありながら、中高年の就職支援を行っている、その2つの立場が根っこにあります。
50代・60代になると、働き方が狭まり、新しい働き先が少なくなってきます。今までの働き方が通用しなくなり、フルタイムで働いてこれくらいの給料が欲しいという希望がかなわなくなります。
そのような方々への支援は、仕事だけを見ているとうまくいきません。働き方だけでなく、人生全体と生き方も見つめていただくことが大切です。俯瞰的に見つめ直すことで、固まっている価値観が崩れ、結果的に生き方が広がる可能性があります。
例えば、これからは家族のこともしっかりとやっていきたいと考えた場合、それなら家族のそばで働いたほうがいいという考えが出てきます。そうすると経済条件とは違った価値観で働き方を考えることにもなります。私が知る限りですが、このような価値観の転換をじっくりやるセミナーはありません。であれば、問題意識を持つ自分がやろうと思うに至りました。
– ワークショップの場所をお寺にしたのはなぜですか?
お寺という空間は、場の力のせいか、広い心で物事を見つめるのに適していると思います。人生を考えようとする時にふさわしい場だと考えました。
私自身も僧侶として生きている中で、色々な方の人生に触れます。以前にお寺の新聞記事(寺報)でご紹介して反響もいただいたのですが、癌を患われた方が「残りの人生は、ありがとう(お礼)を伝える生き方をしたい」とおっしゃられました。他にも、お子さんが若くして旅立たれた方が、お子さんの分までご自身の人生を丁寧に生きようとされる姿にも接してきました。
そのような様々な素晴らしい生き方に接する中で、私自身ももう少し丁寧に生きたほうがいいと感じさせられます。自分は五体満足にもかかわらず、その方々のように丁寧に生きていないかもと思うことがあります。死を意識することで生を謳歌する。そういうことを伝えたいという思いからも、お寺という場を選びました。
同じ思いを持つ人たちと出会える場。講師陣も魅力的
– どのような方にワークショップへお越しいただきたいですか?
動こうと思っているけど、どう動いたら良いかが分からず、そのきっかけを探している方は良いかもしれません。ワークショップを通じて、真剣に考えている人たちと出会えるのも魅力です。
当日の講師陣もめちゃくちゃ動いている方ばかりです。それぞれの講師も、人生の色々な分岐点で踏ん張ってきて今があります。そういう人の話を聞き、他者の人生に触れることができるのもワークショップの価値だと思います。
そして、ワークショップなので、とにかく楽しい場になると思います。同じような問題意識を持つ人たちと色々話して考えたい、みんなと話しながら自分の動機を具体的に確かなものにしたいという方には、とても楽しい時間になるでしょう。
– 講師陣もとても充実していますよね
そうなんです。講師陣のみなさんはとても魅力的です。
高田さんは柔軟性がものすごく、そしてフットワークが軽いです。友禅職人や大学職員等の多様なキャリアを経て、子育てしながら勉強をして、キャリアの資格を取られました。
北山先生はスポーツドクターで、とても本を読み、勉強されています。趣味の歌もプロ級で、コンサートにはたくさんの患者さんが花束を持ってこられます。そして、いつも謙虚で腰が低く、年下の私はいつも恐縮してしまいます。
中田さんは忙しくされている中でも、親御さんの介護をがんばられています。ご自身の介護経験を通じて、自己肯定感が弱まっていくことを感じられたそうです。だから、そういう人を支援したいという思いを持たれています。私も今回は中田さんの自己肯定感の話をじっくり聞けるのがとても楽しみなんです。
– 最後にメッセージをお願いします。
ご縁という視座で人生を見ることが大切ではないでしょうか。嫌な出来事を単に嫌だと思ったらそれで終わりですが、その出来事をご縁と受け止めていくと人生は変わります。
本来お寺は普段見えていないものを見る場所だと思います。自分自身を見つめることもそうです。人生の中に自分を見つめる時間を入れていただきたいです。今回のワークショップも、お越しいただいた方々にとってそのような時間になるよう願っています。