お坊さんが出会った心ふるえるお弔い③「弔いなおし」-願隆寺 住職 石濵章友さん(愛知県名古屋市)
2019.10.09
お坊さんの心に残っているお弔いの場面。願隆寺住職・石濵章友さんからの連続ご寄稿、第3回は、葬儀をやり直したご家族のお話です。
石濵章友(いしはま しょうゆう)
社会人を経て25歳で出家。幸蓮寺で得度し本山専修寺恭敬部で約1年間勤めたのち、平成18年に願隆寺第14世住職に就任。先人が感動し今に伝えた仏教の御教えから、地域・社会への貢献に取り組む。
葬儀の相談すらする気になれず
Bさんは、独り身だったお姉さんを亡くした際、ご自身の体調不良などがあってどうしても葬儀ができず、そのことをずっと気にしておられました。
実はBさんには、かつてお父さんを亡くしたとき経験した苦い思い出がありました。当時、お寺とのつきあいがなかったので、Bさんは葬儀社から紹介してもらった寺院にお父さんの葬儀をお願いしました。けれど、葬儀が終わったとたんに「今すぐお布施を」とその場で要求され、準備ができていなかったBさんが「翌日必ずお届けする」と伝えても受け入れてもらえず、怒られてしまったというのです。
Bさんはお父さんの位牌を見るたびにその時のことを思い出し、お姉さんの葬儀についても寺院に相談する気にすらなれなかったそうです。Bさんは当院で行ったご親戚の葬儀に参列されたご縁で当院をお知りになり、こうした経緯を含めてお話をうかがうなかで、お姉さんの弔いなおしをしようということになりました。
当院では、法名(戒名)をご遺族と一緒に考えながらつけています。通常は枕経にうかがったときに、それが難しい場合は通夜の2時間ほど前にうかがって、一緒に考えます。
このときも、法名をつけなおして、葬儀のやりなおしを行ないました。
葬儀を終えご家族でお参りすると、Bさんは胸に両手をあて、深いため息のようにはぁーっと深呼吸されました。そして、とても穏やかな表情で「心のとげが抜けた。安心できました」とおっしゃいました。
Bさんには、「以前のお寺で経験されたことは、お坊さんの全体の責任です。申し訳ない」とお伝えしました。
私も気づかないところで、同じことをやっていたかもしれません。私が葬儀を勤めることで、みなさんの生きる心にも影響を与えているのだと自覚して、これからも精進をしなければ。改めて、身の引き締まる思いがしました。