ビッグイシュー共同慰霊碑を建立(大蓮寺・應典院 秋田光彦)
2023.11.27
秋田光彦(あきた・こうげん)
浄⼟宗⼤蓮寺・應典院住職 1955年⼤阪市⽣まれ。浄⼟宗⼤蓮寺 住職。パドマ幼稚園園⻑。 一般社団法人総合幼児教育研究会会長。1997年に塔頭・應典院を再建。近年地域ケアに関わる。相愛⼤学⼈⽂学部客員教授、アートミーツケア学会理事など も務める。 著作に『葬式をしない寺』『仏教シネマ』(釈徹宗⽒ との共著)、編著に『⽣と死をつなぐケアとアート』など。 最新刊は『ともに生きる仏教』(共著)。
ともいき堂の理念実現に向けて
2019年に建立したともいき堂は、もともと生活困難な方々のためにひらかれた弔いの場所として活動を開始しました。2020年初には「看仏連携」を旗揚げしたものの、その直後からコロナ禍のため身動きできず、また「感染死」という新たな難題が上がり、苦慮を重ねてきました。建立時には、クラウドファンディングで多くの市民のみなさんからご支援いただきながら、ともいき堂の理念をなかなか実現できないことをもどかしく感じてきました。
そこに一昨年より、ストリートマガジン「ビッグイシュー」から、街頭で雑誌を販売されている販売者さんのための共同慰霊碑計画のご相談があり、ご縁が実って、大蓮寺墓地にて建碑されることとなりました(東京の光照院と同時建碑)。同誌は2003年、元ホームレスの方々の生活自立を目的として創刊され、市民メディアとして認知を広げて、今年で20周年を迎える老舗の社会企業です。
今回はビッグイシューが施主となってお墓を建碑します。大蓮寺は墓地を提供し、永代にご供養することになりますが、今後は販売者のご葬儀やご供養など個別に対応させていただくこととなるでしょう。これを契機として、ともいき堂の「平等一切」の理念が広く伝わり、さらに新たなご縁が生まれることを願っています。
建碑式と記念トーク会を開催
以上のような経緯を経て、去る2023年10月11日、美しい秋空のもと、ビッグイシューの共同慰霊碑の建碑式を執り行いました。
式の後、大蓮寺客殿を会場に記念トークの会を開催し、販売者の方々と、ビッグイシュー共同代表の佐野章二さん、大阪事務所長の吉田耕一さん、また「無縁と供養」の研究で知られる関西学院大学の白波瀬達也教授にもご参加いただき、熱く語り合いました。東京からは光照院の吉水岳彦住職にもオンラインでご参加いただきました。
とりわけ、販売者の方々から「転がり落ちるように現在の生活になり、神も仏も信じてない。でも今日、慰霊碑の『友よ、やすらかに』の言葉を見て、心が洗われるようだった」などといった慰霊碑に対する思いをじっくり聞けたことがとても有難いことでした。
なお、記念トーク会については、浄土宗ともいき財団の助成のもと開催することができました。
今後も「ひらかれたお寺」を目指して
家族のカタチも変わり、おひとりさまや貧困世帯も増えている昨今、もはやお弔いを家族だけに任せていくことは困難です。一人ひとりの状況と希望に沿った、これからの弔い、お葬式やお墓のあり方を模索していかなければなりません。
大蓮寺では、今年最後のプログラムとして「寺業構想in大蓮寺セミナー【2024永代供養墓は生き残れるか〜ポストコロナの寺院運営】」を12月5日(友引)に開催いたします。林立する永代供養墓の、本来の意義・理念を考察し、これからのお寺づくりに向けて、研究者と実践者の言論と実例紹介を交え、議論しあえる場としたいと思っています。
また、コロナ禍中も、細々ですが「おてら終活カフェ」や「終活祭」を続けてまいりました。現在改装工事中の塔頭・應典院が、来年春から「あそびの精舎」 として本格的に活動を再開いたします。
精舎とは、仏教の比丘(出家修行者)が住する修道施設、寺院、僧院のことを指します。お腹にいる赤ちゃんや子どもからお年寄り、なつかしい祖先やこれから出会う未来の世代「ゆりかご前から墓場の後まで」が集い、いのちのありようをじっくり考え、生と死の意味を学ぶ(気づく)こころとからだの「あそびの場」でありたいと念じています。詳しくは應典院ホームページをご覧ください。
應典院は4半世紀にわたって「ひらかれたお寺」を目指してきました。引き続きみなさんのご関心とご協力をお願いします。