佐渡ヶ嶽部屋の名古屋場所宿舎になった長善寺!17日間レポート(長善寺住職・蒲池卓巳)
2021.07.16
大相撲 佐渡ヶ嶽部屋の名古屋場所の宿舎になった長善寺。
お寺の境内にお相撲さんがズラリ!圧巻だった17日間の様子を、長善寺住職・蒲池卓巳さんに伺いました。
蒲池卓巳
1980年生まれ。早稲田大学大学院修了。同朋大学別科を経て入寺。2017年に第26代住職となる。子供の頃から祭りや民俗芸能に関心があり、お寺で落語会、猿回しなど地域の方々にも喜ばれる企画を日々考えている。
名古屋の夏の風物詩といえば、大相撲名古屋場所。昨年(令和2年)の7月場所は新型コロナウイルスの影響で東京の両国国技館に場所を移して開催されたため、2年ぶりの名古屋場所です。そして縁あって、今年から長善寺は大相撲の佐渡ケ嶽部屋の宿舎となっています。
宿舎を探す親方と女将さん。コロナ禍によるご縁
コロナ禍の影響のために、今年は名古屋場所の宿舎探しで親方と女将さんが困り果てていると、とある方を通じてご相談をいただきました。長善寺としてはじめての試みではありますが、大切なご縁として受け入れを決断しました。
コロナ対策は万全を期しています。マスクの着用、稽古中の私語厳禁、普段であれば見学の方と力士や親方との握手や写真撮影が行われるようですが、これらもすべてお断り。見学こそできるものの、土俵のそばには近寄れないようにしています。
佐渡ケ嶽部屋には、約30名の力士に加えて行司や呼出の方もおり、総勢40名近くの大所帯。40畳近くある部屋が二間でもまだ納まりきらず、他寺のお坊さんをお迎えする法中部屋や、私たちの住居の部屋など、ありとあらゆる場所を提供しました。
そばでみるお相撲さんたちの素顔
お相撲さんの1日は、朝6寺の起床に始まり、7時から9時までの朝稽古、そのあと朝のちゃんこ鍋を食べて、幕下以下の力士から開催場所のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)へと向かいます。コロナ禍のため、電車移動は控えてお寺と会場を自家用車で送迎していますから、裏方さんも大変です。19時ころには幕内力士や親方も戻ってきて夜のちゃんこ鍋、22時30分に消灯となります。
佐渡ケ嶽部屋の力士たちは、とにかくみなさん礼儀正しい。どんな人に対しても必ず丁寧に挨拶をしてくれます。親方の指導が行き届いているのだと思います。
また、日々の厳しい稽古と戦績が力士に風格を与えることも肌で感じました。前頭4枚目の琴恵光関。5年くらい前、十両時代にお会いした時はもっと素朴な若者だったのですが、いまでは土俵の内外で、言動や所作にオーラを感じます。人はこうも成長するものかと驚かされたものです。
親方は厳しい父として、そして女将さんは優しい母として、力士たちを陰に日向に支えています。女将さんは自身のことを「あまり表に出るタイプではありません」と仰ってましたが、まさにお寺における住職と坊守(住職の妻)のような存在なのだなあ気づかされました。
相撲文化を支えられることの喜び。取り直しのない一期一会を大切に
仏教寺院が相撲部屋を宿舎として受け入れる例は少なくないようですが、このたびの受け入れはご門徒さんたちのご理解がないと成しえなかったことです。期間中は本堂での法事をお断りし、心苦しい思いを強いてしまっていますが、日本文化を代表する相撲をお寺としてこのような形でお支えできたことは、素直に嬉しく思います。
この出会いも取り直しのない一期一会です。今までに見たことのないお寺の風景が毎日を彩り、長善寺の歴史に新たな1ページを加えてくれました。千秋楽まで残りわずか。このご縁が彩る時間を坊守やご門徒さまとともに見守りつつ、味わいたいと思います。