荒廃寺院を立て直す。地域の子どもたちが喜んでくれるお寺を目指して(興徳寺住職・青木隆興)
2020.12.09
「兼務住職」という言葉をごぞんじですか? ひとりの住職が、2つ、3つと、複数のお寺を運営することを「兼務住職」と呼びます。かくいう私も、最近とあるお寺の兼務を任されることになりました。そんなお坊さんの新たなチャレンジについて綴ります。少しだけお付き合い願います。
荒れ果てたお寺を再建するために必要なのは、お金よりも人
そのお寺は15年近く住職がいませんでしたから、境内や建物は荒れ果てています。一般的にお寺というと、お檀家さんに支えられていますが、そのお寺は檀家数がわずか10軒程度。10軒の方々で住職のいないお寺を支えていくのは経済的にも人員的にも大変なことで、物理的に不可能です。しかし、住職がいなかろうと檀家さんが少なかろうと、檀家さんひとりひとりにとってはご先祖さまが祀られている大切な場所です。ですから、まずは境内をきれいにし、本堂と立て直さなければなりません。
お寺を立て直すにはとうぜんお金が必要ですが、それよりももっと大切なことがあります。人の力です。まずはいろいろな人が思わずこのお寺に来たくなるような取り組みにチャレンジし、少しずつ人が集まるお寺にしていきたいのです。
そこで、考えが浮かびました。「子ども支援」です。
子ども支援。地域で愛されてきたお地蔵さまの力をお借りして
お寺には、古くから地域の人たちに愛されるお地蔵さまが祀られています。いまでも地域の人たちにとっては大切な仏さまであるらしく、私がお檀家さんや地域の人たちにあいさつに出向いた時も、「お地蔵さんを守ってくれるのなら、とてもありがたい!」と迎えられたほどです。
お地蔵さまは人々のさまざまな苦しみを取り除いてくれ、人気がありますが、特に子どもを守る仏さまとして有名です。関西には「地蔵盆」といって、毎年8月に子ども向けの行事が各地で行われますが、そのお寺では特に地蔵盆が盛んに行われています。だからこそ、お地蔵さまのご加護にも助けていただきながら、子ども支援のお寺にしていきたいなぁという考えを持っています。
お寺はもちろんお檀家さんのためにある場所ですが、これだけ立派な土地と本堂をわずか10軒のお檀家さんのためだけにあるのももったいない話です。地域のために解放することで、お寺本来の輝きを取り戻せるものと確信しています。
お寺による子ども支援の取り組みはすでに日本全国で見られます。子ども食堂やおてらおやつクラブ。まずはこうした取り組みにトライしながら、その地域の方々にとってどんなことができるのか、何をしたら喜んでもらえるのかを探っていこうと思います。
お寺は地域社会のハブとして、生老病死を見つめる場所
そもそもお寺は地域社会の中心地、ハブとなっていろんな人が行き交う場所でした。教育、医療、福祉、そして死者供養など、さまざまなことがお寺の中で行われてきました。まさに「生老病死」を見つめ、支え、ケアする場所がお寺だったのです。たとえ素朴な取り組みであっても、地域社会の中でお寺だからこそできることを実現していきたいと考えます。
チャレンジはこれから。まだまだ発展途上ですが、お檀家さん、地域の人たち、行政の方々と手をたずさえながら、お寺の復興に取り組む2021年になりそうです。ワクワクしかありません。