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葬儀をしなかった人は後悔しています(足立信行・T-sousai代表)【死に方のココロ構え(28)】

2024.07.19

足立信行(あだちしんぎょう)

株式会社 T-sousai 代表取締役社長。1982年、京都府生まれ。在家の家に生まれる。18 歳の時に高野山で僧侶になることを決意。高野山金剛峰寺布教研修生修了。高野山で修行をする中で僧侶や寺院の役割を考え、下山。葬儀の重要性に気づき、2008年 大手互助会系の葬儀会社に入社。葬儀の担当者となり、年間約 120 件の葬儀を手掛ける。2012 年IT 企業に入社し、エンジニアとして活動。2017年、僧侶と葬儀会社の担当という経験から、お互いが遺族や故人のために協力し祈りの場所として本堂などで葬儀をあげ、安価で心あるお寺葬の構想を企画。葬儀の告知、WEB、導入などから実施、施行までをワンストップできる株式会社 T-sousai を創業し、現職。

T-sousaiホームページ

※前回(もうキックバックをやめませんか ー 葬儀業界にはびこる悪しき風習)はこちら

葬儀の最新調査から見えること

 ㈱鎌倉新書が運営する、葬儀ポータルサイト『いい葬儀』で「【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年)」が発表されました。コロナ禍の2022年から2年経過し、新型コロナが5類に指定されてから初めての調査です。いわゆるアフターコロナにおける葬儀の全国調査で、24年の3月1日から4日までインターネットによって行われました。

 今回の調査で判明したトピックがいくつかありますが、まずは「コロナ禍で減少した一般葬が戻りつつある」という点が挙げられます。
 葬儀は概ね、少人数の家族のみで行う「家族葬」と、多くの方を呼ぶ「一般葬」。そして葬儀そのものをしない「直葬ちよくそう」と3つに分類されます。家族葬が依然として半数を占めるものの、一般葬も増えており、22年の調査と比べて家族葬は5%ダウンの50%、一般葬は5%アップの30%と一般葬が戻りつつある傾向にあります。
 実際、当社の葬儀でも家族葬は未だ多いですが、一般葬も増えており、印象として3割の数字は納得できると感じています。

 本アンケートの調査対象が「2022年3月~2024年3月に喪主(または喪主に準ずる立場)を経験したことのある、日本全国の40歳以上の男女」となっておりますので、当然、22年のコロナ禍での喪主も対象になります。家族葬を余儀なくされた喪家も対象になっているため、今後、この一般葬の戻りはより大きくなっていくことが予想されます。コロナ前に戻ることはないと感じますが、いずれにしても2年前より一般葬を多くの人が望み、希望通りお別れできたことが可視化されました。

グラフ
一般葬が戻りつつありお別れの選択肢が増えたことは好ましい状況 (出典:https://www.e-sogi.com/guide/55135/)

葬儀をしない人は後悔しています

 本アンケートには、前回調査にはなかった設問がいくつかあります。そのひとつが、「亡くなってから火葬までの日数」です。昨今、話題にあがりやすいテーマです。
 大手ポータルサイトでもよく見かけるニュースで「火葬まで1週間かかった」や「火葬まで10日待つのは当たり前」など、センセーショナルな言葉で書かれた記事がよく見かけられます。都内ですと、火葬まで日数がかかることはよくありますし、1週間待つということも火葬場によってはあります。年末年始をはさむと、10日待つこともあるかもしれません。

 しかし、火葬場を変更さえすれば1週間待つ必要はありませんし、年末年始をはさまなければ、10日間待つということは当たり前ではありません。要するに、先述した、火葬まで「1週間待つ」だの「10日待つ」という言説は、実状からかけ離れた「煽り記事」です。火葬場に直接連絡をして日程を操作する葬儀社がよく行う悪質な手口です。彼らは日数が増えるほど安置料やドライアイスなど売上があがりますから。
 今回のアンケートでその真実が露わになり、1週間や10日どころか、関東地方では「火葬に待ったのは3日が最多」という結果になりました。これが事実です。大手ポータルサイトにニュースがアップされているからと言って、真実であるという保証はどこにもありません。

 そしてもうひとつご紹介したいデータがあります。「火葬までの日程」同様、前回調査になかった設問なのですが、「葬儀に対しての後悔」という項目です。
 家族葬、一般葬、直葬などを実施した人が「葬儀を後悔しているか」という設問で、「家族葬」や「一般葬」は半数以上は「後悔していない」という、つまり満足しているという結果です。一方、葬儀をしない「直葬」では実に6割以上の人が後悔していると答えたのです。

 直葬は仏教界では「直葬じきそう」と呼ばれることが多いのですが、端的に言えば、葬儀を行わず火葬だけを実施するケースで、宗教者を呼ばず祭壇を設けない場合がほとんどです。火葬「式」と呼んでお葬式っぽく体裁を整えているようですが、実態は大きく異なります。この直葬を実施して、38%の人は後悔していないと答えたけれども、それ以外の6割以上の人はそうではなかったというのがこのアンケートデータから分かります。
 つまり、葬儀を行わなかった人は後悔しているのです。

葬儀
直葬は家族葬と比べると「後悔していない」と回答した人が20%以上も減少 (出典:前掲)

直葬は思った以上に高額です

 葬儀社はコロナ禍で過去に類を見ないほどの大きな打撃を受けました。それは今回の調査データでも明らかにされていますが、葬儀の平均単価が70万円以上も減少したことがそれを物語っています。
 都内を含めたいくつかの葬儀社の情報を集めると、この減少を挽回するために施策を打っている企業が多くあります。ご遺族や故人に寄り添ったサービスをはじめる葬儀社がある反面、低単価の葬祭サービスを高額にする戦略に出た葬儀社も多くあります。低単価の葬祭サービスとは一日葬や直葬が該当しますが、特に直葬にさまざまなサービスを付加することで結果的に高単価にしようとする動きが顕著でした。

 直葬は、本来は祭壇を設けず、葬儀を行わないものですので、価格は極めて安価に設定されています。葬儀社にもよりますが、2日間の家族葬と比べると、およそ3分の1から、4分の1ほどの金額で実施できます。直葬を希望する方には様々な理由がありますが、他の葬儀形態と比べて費用がかからないということを理由に選択する人も多くいます。コロナ禍で減少した売上を、直葬にサービスを付加することで回復させるという葬儀社が増え、本来であれば安価な直葬が高額化するという現象が起きています。場合によっては100万円を超える直葬もあり、直葬は思った以上に高額になりつつあるというのが業界の空気になりつつあります。

 私自身は、以前から、「見送りたい方がきちんと見送り、見送られたい方がきちんと見送られる」ことを大事にしてきました。家族葬も一般葬も直葬もそれぞれのご遺族や故人が考え、選択したのであれば、それを尊重し、全力でお手伝いするのが本分だと思っております。
 今回の葬儀に関わる最新調査で、ようやく、直葬にせざるを得なかったご遺族や、一般葬ができなかった故人様が徐々に少なくなり、コロナ前のように葬儀を選べる自由度が戻ってきたのだと改めて感じました。

葬儀は後悔のないよう、自由な選択肢のもとで実施したい
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