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なぜお寺主催の終活セミナーは人の心を打つのか?(足立信行・T-sousai代表)【死に方のココロ構え(23)】

2023.11.13

足立信行(あだちしんぎょう)

株式会社 T-sousai 代表取締役社長。1982年、京都府生まれ。在家の家に生まれる。18 歳の時に高野山で僧侶になることを決意。高野山金剛峰寺布教研修生修了。高野山で修行をする中で僧侶や寺院の役割を考え、一度下山。葬儀の重要性に気づき、2008年 大手互助会系の葬儀会社に入社。葬儀の担当者となり、年間約 120 件の葬儀を手掛ける。2012 年IT 企業に入社し、エンジニアとして活動。2017年、僧侶と葬儀会社の担当という経験から、お互いが遺族や故人のために協力し祈りの場所として本堂などで葬儀をあげ、安価で心あるお寺葬の構想を企画。葬儀の告知、WEB、導入などから実施、施行までをワンストップできる株式会社 T-sousai を創業し、現職。

T-sousaiホームページ

※前回(霊魂について ー 見えないものを感じること)はこちら

お寺主催の終活セミナーのここがすごい!

「終活」と言えば、葬儀社や士業、市区町村が主催して、葬儀式場や公民館などで行うのが主流です。テーマも多岐にわたり、葬儀や相続、遺品整理など飽きさせないものが多くあり、無料で聞けるため多くの方が足を運びます。実際、終活セミナーで葬儀や相続の相談をされた方も少なくないのではないでしょうか。

 このような葬儀社や士業、市区町村が行う終活セミナーと一線を画し、私たちが推進しているのが「お寺主催の終活セミナー」です。
 お寺主催の終活セミナーは、文字通り、お寺が主催して檀信徒の方々や地域の方々を対象に終活セミナーをするというもの。住職自らが講師を務めることもあれば、葬儀社や石材店、士業の方などを招いてセミナーをすることもあります。

 私たちが最初のお寺主催の終活セミナーを実施してから10年ほどになりますが、よい学び・気付きの場として大切に思ってくださる方がいまも多くいます。実は多くの参加者が感動して、時には涙して帰ることもあるくらいお寺主催の終活セミナーはすばらしいのです。

本堂で行う終活セミナー
本堂で行う終活セミナーの様子。参加者に儀式の説明もします

お寺主催の終活セミナーが胸を打つ3つの理由

 お寺主催の終活セミナーを支援している私が言うのは少しはばかられますが、お寺の終活セミナーは客観的に見ても意義のあるものだと感じます。参加者の多くが感動して帰られます。私が感じるお寺主催の終活セミナーが胸を打つ理由をいくつか挙げます。

理由①:お寺は宗教施設であるため、死生観を語ることができる
 葬儀会館や公民館は確かに立地もよく、駐車場もあるので好ましい面はあります。しかし宗教施設ではないため、死生観、つまり「死とはなにか」を深く掘り下げたセミナーにはいささか不向きです。
 お寺ではその宗派毎の「死について」の考えや「死後の世界」に関してお伝えすることができるので高尚な話題もスッと腑に落ちます。死生観を語れることは、荘厳しようごんされたお寺という場だけがなせるわざではないでしょうか。

理由②:お寺が主催であるため、商売っ気がない
 葬儀社や士業が主催の終活セミナーはどうしても商売っ気が出てしまいます。パンフレットや資料、「もしものときはこちらに…」のような緊急連絡先も、主催の葬儀社の番号のみが記載されがちです。それは決して悪いこととは言えませんが、発信する情報にバイアス(偏り)がかかることも事実です。一方、お寺は公正・公平なセミナーを発信しやすく、参加者が安心して学び、気付きを得やすいと言えます。

理由③:祈りの施設で人生の逝き方を考えるのは、本義に則っている
 よく私たちはお寺主催の終活セミナーで模擬葬儀をしますが、その時に参加者の方から「自分はこんな風にくんだと思うと自然に温かな気持ちになりました」という声を多数いただくことに驚きます。
 模擬葬儀は生々しいとも言えますが、生々しい方がお寺主催の終活セミナーとしてふさわしいと考えます。あえて極言すれば「死を考えさせることでより良い生に気づかせる」という深い狙いを持つことができるのも、お寺ならではの特長ではないでしょうか。

 以上3点を挙げましたが、お寺主催の終活セミナーは、多角的に葬儀や葬式を語れることがよいと感じます。「葬儀」というテーマについて、「儀式面」から語ることもできるし、「費用面」からも語ることもできるし、「民俗学的な側面」から語ることもできます。葬儀を多面的に語る上で、お寺以上に最適な場所はないのではないかと思います。

 セミナーでは毎回参加者のアンケートを取りますが、とてもよい感想が多く、住職も満足されます。
 一方、意外な感想が書かれることもあります。例えば、葬儀の費用のことで、「葬儀一式の費用と書いてあるため、葬儀全部がその費用でできると思っていたが、実際は違うということに驚いた」とか。また葬儀社に関しても「葬儀社が許認可制ではないことを初めて知った。これからはきちんと葬儀社を選ばないといけない」などです。これらは、葬儀社側からすれば極めて当たり前のことなのですが、参加者(消費者)からすると驚く事実なのだということに気づかされます。

終活
意外なほど、葬儀の知識は生活者に浸透していません

お寺が伝えていくことの大切さ

 葬儀業界は、一般の慣習や慣例とはかなりかけ離れた業界です。アンケートに表された言葉もそうですが、通常「一式」と書かれていたらそれで全部できると思いますし、それ以外の費用はかからないと思うのが普通ではないでしょうか。誰だって誤解をしてしまいます。このような表示はいまも根強く残っており、「一式」と書かれていたものの実際は高額だったという出来事が後を絶ちません。

 こういった声を受けて、埼玉県の消費者団体(埼玉消費者被害をなくす会)では、「終活」に関する被害をなくすためアンケートによる認知活動を推進しています。そのアンケート結果を見てみると「あ、これはあまり知られてないことだったのか」と感ずるところが非常に多くあります。
 この消費者団体は「消費者のレベルをアップさせる」という目的で活動されています。賢い消費者になってリテラシーをつけるというのが本アンケートの目的のようであり、世の中にとって大切な活動をされていると思います。

 お寺主催の終活セミナーは他の終活セミナーと一線を画すものです。お寺が檀信徒や地域の方にセミナーを通じて葬儀の情報をきちんと伝えていくことがいま求められているのではないでしょうか。お寺が伝えることで消費者が知識を得て、賢くなり、ひとりでも被害に遭われる方を少なくすることが必要だと考えます。檀信徒や地域の方を守るのも、お寺の大切な役割のひとつなのかもしれません。

被害者を出さない
被害者を出さないこともお寺の役割の一つなのかもしれません

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