「おそなえもの」を「おすそわけ」。物資の支援を通して、子どもたちと縁を結び、貧困問題に取り組む(後編)
2017.02.21
おてらおやつクラブ事務局の髙山信雄です。前編では、おてらおやつクラブの活動の概要説明と、おやつの主な送付先となっている各支援団体からの嬉しいメッセージをご紹介させていただきました。(前編を読む)
後編となる今回は、お寺でやっている工夫のことからお話しさせていただきます。
広がる支援の輪
おてらおやつクラブでは、大きなお寺や小さなお寺、いろいろなお寺からご賛同いただいております。中には月に3度もおすそわけくださるお寺もあれば、年に1度だけのお寺も。発送回数を気にされることもしばしばですが、お下がりを箱に詰める際のお気持ちはどなたも変わりありません。ほとんどのお寺が支援団体と距離が離れていておやつを手渡しできないのですが、おすそわけする箱の中にお坊さまから心を込めた直筆の一言お手紙を同封してもらっています。ただおやつを送るだけでなく、おやつを通してお寺と支援団体がつながりを感じてもらえるように、いくつか工夫をしております。
いくらおそなえものとはいえ、口にするのは子どもたち。おやつを心待ちにする子どもたちを思い描きながら、敢えて時期に合わせておそなえものをご用意くださるお坊さまもお見えになります。季節のイベントや旬のものに合わせて送ったり、支援団体のジャンルを可能な限り考慮して発送したり、優しいお気遣いも生まれています。
例えばイベントとしてはバレンタインやハロウィンやクリスマスなど。季節感があるものと言えば、夏はゼリーやそうめん、冬はお餅など。また団体の利用場面を考慮して子ども食堂にはお米などの食品中心、ひとり親家庭の支援団体には生活用品、学習支援団体には甘いお菓子や文房具などをお送りされます。
支援団体へ持参することも
時折、お坊さんが支援団体へおやつを直接持っていくこともあります。おてらおやつクラブは、支援者と被支援者が近すぎず適度な距離感のある「顔が見えない支援」を基本としています。そのような「顔が見えない支援」の良さもあると実感していますが、やはり地域に密着して活動するなら顔と顔が見える関係も大切。お坊さまが支援団体を訪ねると、団体のスタッフさんからいろいろな話を聞かせていただき、さらには子どもたちとも会話する機会となります。やがて信頼が深まれば、子どもから「お坊さん、芸能人に似ているねー。イケメンだ!!」というように親しくからかわれたりもします。顔が見えることでお互いが信頼関係を深め、多くの人間が関わって支援の輪が成り立っていることを理解することにもなります。
おてらおやつクラブが目指すもの
ずばり、おてらおやつクラブが目指すものは
1.お寺が孤立解消の拠点に
物理的にも精神的にもつながりを提供するネットワークを構築する
2.お寺の可能性を提示
地域で何かしたい人や社会問題に関心のある人が、お寺ならできるかもと第一に想起する社会となる
3.布施の実践
自ら布施の修行を行い、手放していくことで新しいもの・出会い・発見があることに気づく
4.共苦の体験
社会の苦しみを知り、分かち合い、共に考え続け共に悩み続ける
「一人じゃないんだよ、助けてって言っていいんだよ」という、苦しみを受け止めるお寺だからこそできるセーフティネットの構築も視野に入れ、子どもたちが安心して未来に希望をもつことができる社会を作っていきたいです。
あなたの思い出のおやつは何?
最後に皆さまにお聞きにします。
「あなたの思い出のおやつは何ですか?」
私は小学校の時、友達同士でシールの見せ合いっこをしたビックリマンチョコ。また、おばあちゃんが作ってくれた手作りのアラレ。思い出せばどれも自然と「笑顔」になれる思い出ばかりです。けれども、今おてらおやつクラブが関わる子どもたちは、もしかしたら笑顔になれるようなおやつが思い当たらないのかもしれません。もっと言えば、身の周りの誰かのぬくもりに包まれた「おやつ」を手にしたことがないかもしれないのです。
今こそ子どもたちに「仏さまの気持ちがこもった笑顔になれるおやつ」をおすそわけしませんか? 子どもたちが大きくなった時に、「仏さまから、お坊さんからもらったおやつが小さい時の思い出です」と心が温かくなる、ほっと笑顔と共に思い出してもらえるように、皆さまとこれから一緒に貧困問題を考えていきたいのです。
ぜひ「おてらおやつクラブ」にご賛同いただき、さらには「子どもたちの笑顔のために」皆さまお一人おひとりができる範囲で一緒に活動していただくことを、事務局一同心より祈念しております。
(おてらおやつクラブ事務局 髙山信雄)