浄土真宗の永代経とは?永代供養との違いや金額の相場は?(教西寺 住職・三宅教道)
2020.12.01
三宅教道
あなたのお話をお聞かせください。話すだけで心が軽くなる方もいらっしゃいます。気楽に世間話、ぐち悩み、ご相談をしていただけます。年齢・性別・社会的立場等関係なく、どなたにも来ていただけるよう、お寺の敷居をさげています。
最近、教西寺に永代経 のご相談が全国各地からあります。なぜでしょう?これは、永代経の意味合いがわかりづらいことや、お付き合いのあるお寺には聞きにくいことに理由があるのではないでしょうか。そこで、私の知っている範囲で、浄土真宗の永代経の考え方をまとめてみます。
永代経とは?
皆さまは、何のために永代経をお考えでしょうか。
中には、近しい方を亡くされた方もいらっしゃると思います。まず一言、お見舞い申し上げます。そのような中で、永代経懇志という重ねてのご負担、尊いことと存じます。どうぞ、亡き方だけでなく、ご自身も大切にされますことを願っております。
さて、
「永代経」=「永代供養」=「故人のために懇志を納め、永遠に読経していただく」
とお考えになる方も少なくないと思います。実際に行われることとしては、「懇志を納める → 読経する」ということなので、たしかにその通りです。しかし、実はその意味合いがちょっと違うのです。
永代供養と永代経の違いは?
しばしば使われている「永代供養」という言葉は、なんとなく便利な言葉です。それでは、この「永代供養」とは具体的に何を指すのでしょうか。最近耳にするときは、次の二つの意味を含んでいるようです。
1.永遠に故人の追善供養をする。
2.納骨をして後は全てお寺に任せる。
拙寺にお尋ねがあったとき、私は次のようにお伝えしています。
追善 供養とは、「故人に代わって生きている者が「善」をなすことによって、故人の環境がより良くなることを目指すこと」ですが、浄土真宗ではこのようには考えません。亡くなった方は阿弥陀仏のお力(おはたらき)によって、仏とならせていただいています。亡き方は極楽浄土という素晴らしいところで、仏という安楽の境地にいらっしゃいます。したがって、亡き人を仏としていくために善を重ねる追善供養という営みは、必要ありません。
次に、「永代経」とは「読経」のことを指し、「納骨」のことは意味しません。「納骨」は「永代供養」とはいわずに「納骨」といいます。
故人への追善供養は不要であり、納骨ではなく読経であること。浄土真宗ではこのように考えるので、「永代供養」という考え方や言葉は使わないのです。
「永代経」は故人に感謝。さらに、世のため人のため
それでは、「永代経」とは何なのでしょうか。一般的な捉え方である「故人のために懇志を納め、永遠に読経していただく」に言葉を付け足していきながら、考えてみましょう。
「故人」を縁として、お寺「のために懇志を納め」ます。すると、その懇志によって、お寺が護持(維持)できます。お寺が護持されると、永代にわたって(=お寺が存続する限り永遠に)、子孫や後の世の人々まで仏教やお経が届けられます。それによって人々は苦しみを減らすことができ、世の中に幸せが増えます。だから、ご縁となった故人に感謝し、「永遠に読経」するのです。
まとめると、故人のためと納めていただいたご懇志が、お寺を通して「世のため人のためになる」のであり、お寺はお礼として「故人に感謝し、読経」させていただきます。
とても尊いことだと思います。
おそらく他宗の仏事においても、亡き人だけではなく、今を生きる人のための供養でもあるとお考えだと思いますが、浄土真宗では「今を生きる人のため」という趣旨を、「永代経」という名称に組み込んで表したというのがユニークだと考えます。
永代に込められた願いとは
今、私たちがお寺にお参りできるのはなぜでしょう。
それは、ご先祖さま・先人たちがお寺を支えて来られたからです。そのおかげさまで、故人を大切にし、み教えを聞き、心のよりどころとすることができます。
お釈迦 さまは、目の前にいる人に教えを説かれました。つまり今生きている私たちにも説かれている教えです。教えがお経となって届いているのですから、永代に、そのとき生きている人々にも読まれていくのが永代経ということではないでしょうか。
いつかどなたかが納めてくださった永代経懇志が、今私に届くお経となっています。今、自分の大切な亡き方をご縁にした永代経が、次の代に伝わっていきお経を読んでもらいます。
ご先祖さま・先人たちがなされたように、現在の私たちもお寺を大切にし、子孫・後の世の人々にみ教えを伝えたい。「永代」という言葉には、そんな願いが込められています。
永代経懇志の料金相場は?
実際の永代経懇志の金額については、お寺によって違っています。決まりはありません。故人の遺志、ご家族の思いや状況、地域差、お寺との関係、いろいろな要素があります。迷われる場合には、お付き合いのあるお寺にご確認いただくのが良いと思います。「納めてやった」ではなく「納めさせていただいた」と手を合わせながら、「ご先祖・先人たち」と「今の私たち」と「ご子孫・後の世の人々」の幸せのために、どうぞ気持ちよくご懇志をお納めいただけますとありがたく存じます。
合掌