報恩講(ほうおんこう)とは簡単にどういうこと?浄土真宗の一大イベント
2016.11.01
「報恩講」は簡単にどういうことかというと、秋から新年にかけて、浄土真宗各派のお寺で行われる、開祖・親鸞聖人のご命日(11月28日)を中心にして行われる仏事です。
親鸞聖人の遺徳をしのび、共に仏法を聞いて語り合う集いであり、
生きていくなかで受けてきたたくさんの「恩」に「報いる」ことに思いを馳せるひとときでもあります。
「お七夜(しちや)」「お取越(とりこし)」「ほんこさま」などと呼ばれ、昔は地域全体のお祭りとしても親しまれていました。お寺の参道にたくさんの屋台が出て、お寺には女性たちが集まって「お斎(とき)」という食事を用意。大人にとっても、子どもにとっても、「年に一度のお楽しみ」だったそう。
今回、メールマガジン「まいてらだより 報恩講特大号(11月2日配信)」のために、「まいてら登録寺院」のご住職に教えていただいた、報恩講のあれこれについて「まいてら新聞」でも共有したいと思います!
(トップ写真は報恩講をつとめる、正蓮寺住職・渡邉元浄さん)
報恩講って簡単にいうとなんですか?
「報恩講」とは、「恩に報いる集まり」こと。
仏教宗派の宗祖の恩に報いる行事の名に使われていますが、とりわけ、浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の「報恩講」は盛大な一大イベント。
永仁2(1294)年、親鸞聖人の33回忌に、本願寺第3世覚如上人が「報恩講式」をつくったのがはじまりとされています。
「報恩講式」は「式文(しきもん)」とも呼ばれており、覚如上人が書かれたままのものを奉読(ほうどく)する派もあるそう。真宗高田派 正太寺住職、大河戸悟道さんに教えていただきました。
「式文」は「報恩講式」といって親鸞聖人の三十三回忌に本願寺第三代宗主覚如上人が書かれたものです。
私たちは高田派ですが、この報恩講式が素晴らしいからでしょうか、同じものを奉読します。たぶん、仏光寺派などでも勤めているのではないでしょうか。
漢文で書かれたものに返り点や「一」「二」と振られたものを、行ったり来たりしながら奉読します。おかげさまで式文の練習を積むと自然と漢文も読めるようになってきました。学生時代にこれをマスターしておけば、あの大嫌いだった漢文もそこそこ読めたであろうと残念に思います。
報恩講はいつ、どこで行われるんですか?
毎年、10月〜1月にかけて浄土真宗各派のご本山、そして全国の浄土真宗寺院で行われます。
「ご命日の行事なのに、なぜ期間がこんなに長いの?」と不思議ですよね。
実は、ご命日の解釈は大きくふたつあり、新暦の11月28日に行う派と、旧暦11月28日を新暦に換算した1月16日に行う派があるのです。
また、ご命日当日はご本山で「御正忌報恩講」が行われるため、各寺院ではご命日を避けて行うことになっているようです。
ご本山では、1週間かけて法要、勤行、帰敬式(法名をいただく儀式)、法話などが繰り返し行われます。全国の寺院の僧侶、そしてたくさんのご門徒さんが集う、たいへん盛大な行事です。ご興味ある方はぜひ、ご本山のほうにもお参りください。修行の内容・法要の模様については、昨年度版ながら、真宗教団連合のWebサイトに詳しく掲載されていますのでご参照ください。
浄土真宗本願寺派 西本願寺(京都) 1月9日~16日
真宗大谷派 東本願寺(京都) 11月21日~28日
真宗高田派 専修寺(三重・津) 1月9日~16日
真宗佛光寺派 佛光寺(京都市) 11月21日~28日
真宗興正派 興正寺(京都) 11月21日~28日
真宗木辺派 錦織寺(きんしょくじ・滋賀県・野洲) 11月21日~28日
真宗出雲路派 毫摂寺(ごうしょうじ・福井県・越前) 11月22日~28日
真宗誠照寺派 誠照寺 (じょうしょうじ・福井県・鯖江) 11月21日~28日
真宗三門徒派 専照寺 (福井県・福井) 11月21日~28日
真宗山元派 證誠寺 (しょうじょうじ・福井県・鯖江) 11月21日~28日
報恩講ではどんなことをするんですか?
親鸞聖人の遺徳を偲ぶ法要、ご住職やゲストとして招かれたお坊さん(布教師さん)による法話、帰敬式のほか、落語やコンサートなどの「お楽しみ」の時間をもうけるお寺もあります。
また、お寺の婦人会が受け継いで来た「お斎(とき)」をつくり、みなで一緒にいただくという伝統もあります。
報恩講でいただく「お斎(とき)」
「お斎」は、法要や仏事のときにみなでいただく食事のこと。
ただし、「報恩講」でいただく「お斎」は、地域やお寺の伝統が受け継がれている場合が多く、親鸞聖人のご生涯に思いを馳せるメニューで組み立てられていることも。まいてら登録寺院・高願寺の宮本義宣住職にお願いして、高願寺の「お斎」について教えていただきました。(お膳の写真は高願寺のお斎です!)
報恩講のお斎(とき)は精進料理で、お赤飯、お吸い物、煮物の盛りつけ(里芋、シイタケ、ニンジン、がんもどき、こんにゃく、インゲン)、煮豆、お新香です。
それぞれのメニューには、少し意味があります。
親鸞聖人が好きだったという小豆からお赤飯。親鸞聖人の関東時代の伝道のお姿から、シイタケは「笠」、ゴボウは「杖」、アブラアゲは「袈裟」になぞらえています。また、親鸞聖人が寒夜、枕にして休まれたという「路傍の石」をヤマイモ、手足の「アカギレの血」をニンジンで、ということが言われてきました。高願寺のお斎メニューには、ゴボウがありませんが、これはインゲンで。ヤマイモは、里芋で。アブラアゲは、がんもどきにしています。
かつては、どこのお寺でも手作りでしたが、時代とともに 仕出し弁当に変わるところも多くあります。高願寺では、大変ではありますが、門徒さんのスタッフで手作りのお斎を続けています。また、漆塗りのお膳と器でいただいてもらうのも、ちょっと贅沢に召し上がっていただけるのではと思っています。
食べることを通しても、親鸞聖人を感じ取ろうとしてきたのでしょうね。報恩講カルチャーはとっても奥が深いのです…!
報恩講のテーマ曲「恩徳讃(おんどくさん)」を歌ってみよう
「報恩講」の法要では、必ず「恩徳讃(おんどくさん)」という和讃(わさん)がよまれます。少しでも、みなさんと声を合わせると法要への参加感がぐんと高まります!たとえば浄土真宗本願寺派で現在歌われているメロディはこんなかんじ(龍谷大学Webサイトより)。
如来大悲の恩徳は
身を粉にしても報ずべし
師主知識の恩徳も
骨をくだきても謝すべし
「報恩講」のことを教えてください
今回、いろんなお坊さんに「報恩講」のことを教えていただきましたが、まだまだ勉強不足・体験不足……。
「報恩講」について、もっとくわしく知りたい/お伝えしたいと思っています。もし、このページを偶然ご覧になった浄土真宗のお坊さんのなかで「教えてあげよう!」という気持ちになって下さった方はご教示いただけれないでしょうか。
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