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お彼岸法要のインターネット中継に密着! 工夫と課題、そして大きな可能性(日蓮宗 妙法寺・神奈川県)

2020.03.24

 新型コロナウィルスの影響で、多くのお寺が春彼岸ひがん 法要ほうよう の参列を中止しました。妙法寺みようほうじ (日蓮宗・神奈川県)も法要自体への参列は取りやめたものの、法要の様子を初めてインターネットで中継することにしました。
 お彼岸中日にあたる3/20(金)のネット配信の様子を、密着レポートします。

初のインターネット法要は準備におおわらわ

 そもそも法要のネット配信を考えたきっかけは、新型コロナウィルス以前からあったそうです。

「お墓までお参りに行けない車椅子の檀家だんか さんがいらっしゃったんです。その時お孫さんが、来られないおばあさんのために、みんなのお墓参りの様子をスマートフォンで中継したんです。おばあさんは喜ばれていて、この形はありだなと思いました。この経験が、今回の取り組みを後押ししてくれました」

 しかし、いざネット配信の準備を始めてみたら、色々な問題が出てきたそうです。久住謙昭くすみけんしよう 住職は回想します。

「法要の1週間前になって、手ごろで性能のいいWEBカメラが近隣のお店ではことごとく売り切れていることに気づいたんです。最近の在宅勤務の影響みたいで……。なので、秋葉原のヨドバシカメラに2日連続で通いつめました。カメラとパソコンの階を行ったり来たりしながら、思い切って品質のいいカメラとマイクを買うことにしました。『お彼岸法要をネット中継するんです!』と店員さんに話しても伝わらないため、最後のほうは店員さんに『私、YouTuberになるんです!』と言うようになっていました(笑)」

苦労して買った本格的なカメラとマイク

 妙法寺で広報を担当されている、安田ひとみさんも次のように語ります。

「YouTubeでLIVE配信をするために、承認が下りるまで24時間ほどかかります。法要の3日前には申請を出したのですが、24時間経っても承認が下りず、焦りました。結果的には大丈夫だったのですが、初めての取り組みは分からないことが多いですね」

読経も散華も、画面の向こうの視聴者を意識した工夫が光る

 当日は、本来は檀家さんが座るはずの、本堂のご本尊正面に配信のための専用席が設けられました。

本堂に設置された配信セット

専用席には次の設備が置かれ、まるでコックピットのような様相です。

  • カメラと集音マイク
  • カメラと接続する、インターネットにつながったデスクトップPC
  • 挨拶・法話の原稿を投影するためのテレビとノートPC

 お寺の事務所から廊下づたいに本堂まで、30メートル以上の長さのLANケーブルを引き、インターネット環境も万全の状態を整えました。
 本番当日までには3回のリハーサルを行い、進行や映像の微調整を繰り返したそうです。

お彼岸の中日だが、お参りの人はまばら

 ふだんは参拝者であふれる境内けいだい と本堂。この日はお墓参りに檀家さんがポツポツと訪れる程度で、人影はまばらでした。そして、ほぼ定刻の14時過ぎにインターネット配信を開始。まずは僧侶が入堂し、読経が行なわれます。

お彼岸法要がいざスタート

 みなさん、いつもの法要とはまた違った緊張感に満ちています。引鏧いんきん を置く音が響かないようにソーっと置いたり、「画面の向こうの方々によく聞こえるように」という思いから、木鉦もくしよう は通常よりも大きく鳴らしたり……。また、お経もハッキリと聞こえるように、いつもよりペースをゆっくりにして唱えていました。

 後からうかがったところによると、冒頭に散華さんげ く所作では、久住住職はいつもより散華を多く撒いたそうです。これも、画面だと見えにくいと考えた配慮だったそう。
 僧侶のみなさんは、画面の向こうでご覧の方々に「伝わる」ことを意識し、ふだんとは異なる緊張を感じながら儀式を勤められたようです。

 読経の後は久住住職の法話。わかりやすく伝えるためか、カメラの前に置かれたテレビに原稿を映しながらお話しをされました。新型コロナウィルスの早期終息を願うとともに、お彼岸本来の意味や、お彼岸中に意識してほしい営みを、檀家さんにわかりやすくお話しされていました。

カメラに向かって法話をする久住住職

 そして、通常は約1時間(読経40分、法話20分)の内容を、ネット配信を意識して約45分(読経30分、法話15分)でまとめあげ、ほぼ予定通りに法要は終了しました。

終了後に表示された配信結果

 ネット配信を同時に視聴した人の数は最大で42、視聴者の延べ人数は127でした。5分をこえるネット配信は飽きられやすいと言われますが、最大同時視聴数がほぼ40前後を保っていたことから考えると、ずっと見続けた方も一定数いたと思われます。また、ひと家族の複数名が1視聴者としてカウントされていることもあると思いますので、実際にはこの数字以上の方が見ていたのではないでしょうか。

檀家さんの反応は? お彼岸法要のネット配信から見える可能性

 お彼岸法要終了後、境内には参詣者が増え、法要開始前とは打って変わった風景でした。

ネット配信終了後、境内に檀家さんの姿が増える

 久住住職が、高齢の檀家さんに声をかけます。

「〇〇さん、インターネットで見てくれた?」
「見てないよ。私、見れないもん」

 何名かに声をかけたものの、似たような反応が返ってきました。
 しかし、別の場所では「家で見てから来たよ」「ファミリーレストランで見てきた」などの声も聞かれたようです。また、法要翌日には「お仏壇の前にタブレットを置いて、一緒にお経とお題目を唱えました」という方や、ふだんお寺にお参りには来られないお孫さんと一緒に配信を見たという方も、お参りにいらしたそうです。

 法要終了後に、久住住職は力をこめて次のように語りました。

「介護老人福祉施設に入られている檀家さんも多く、ふだんから法要に来られない人がこれからは多くなっていきます。なので、ネットかリアルかではなく、両方必要な時代になっていくと思います。『ネットなんかで配信したらお参りに来る人が少なくなる』という声もありましたが、ネット経由で見たからこそ、今度はリアルで見たくなる。実際に参拝したくなるという気持ちが生まれるのだと思います」

 お寺の檀家さんコミュニティは高齢者が多いので、現段階において広く見られるということは難しいでしょうが、長期的にはネット配信がお寺でも1つの選択肢として浸透していくでしょう。
 たとえば、遠隔地で法事に出られない親族がいた場合、インターネットで法事やお墓参りの様子を配信することはこれから珍しくはなくなっていくでしょう。今までは「出られない」という選択肢しかなかったのが、「(形を変えて)出られる」に変わることは、大きな変化だと言えます。そして、「やっぱり法事くらいはできる限り会おうよ」と、次の機会には実際に参列したい気持ちが醸成されることも少なくないでしょう。

 インターネットでできることはインターネットで、リアルでしかできないことはリアルで。
 そのちょうどいいバランスが模索されていくでしょうし、お寺としても「これはリアルでないとダメ」という営みや時間の価値を磨き上げていくことが重要となります。
 インターネット配信そのものの可能性と、それによってお寺にもたらされる効用が感じられた1日となりました。

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井出悦郎

井出悦郎

1979年生まれ、東京育ち。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、一般社団法人お寺の未来を創業。同社代表理事を務める

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