動画「安心のお寺葬 – No!三密」に込める思い(龍興院 副住職・大島慎也さん)
2020.05.27
新型コロナウイルスの影響による三密(3つの密)対策で、弔いの現場は大きく影響を受けています。三密が気になり、今までのように故人をお見送りしにくい状況が生まれています。
その状況下で、少しでも三密への心配をなくし、大切な故人を安心してお見送りするための選択肢として、お寺葬の長所を伝えようとする動画が作成されました。
題して「安心のお寺葬 – No!三密」。
動画を作成した龍興院・大島慎也副住職に、背景や思いをおうかがいしました。
本堂という祈りの空間が持つ癒しの力を伝えたい
– 動画を作ろうと思ったきっかけはどのようなものでしたか?
龍興院では昔はお寺葬がいとなまれていましたが、近年は少なくなり、葬儀会館でのご葬儀が増えてきました。
私自身、家族の葬儀をお寺でおこない、本堂という祈りの空間で静かに過ごせる良い経験をしたことがあります。そのため、お寺でゆっくりご家族の時間を過ごせるように、お寺葬を広くすすめる活動をはじめたのです。
お寺葬を広める方法の一つとして、2019年から「おてら終活カフェ」に取り組んできています。その中で模擬葬儀を行ったところ、とても評判が良く、実際に目で見ていただく効果を実感しました。そのため、祈りの空間の雰囲気、静寂さ、神聖さ等を効果的に伝えていくために、動画を作ろうと思いました。
– 今回の動画に込めた思いを教えてください
新型コロナウイルスによって、葬送の現場はとても影響を受けています。龍興院としても、お檀家さんに寺報をお送りして、三密対策としてのお寺葬をお伝えしました。ただ、このような時期なので、死を連想しすぎてしまうことは避けたく、伝え方は控えめにならざるを得ませんでした。
なので、お寺葬をビジュアルとして切り出すことで、質感をともなって柔らかく、かつ分かりやすくお伝えすることができると考えました。当然お檀家さんだけでなく、多くの人に見ていただきたいと思っています。
お寺葬の一番大切なものは、本堂という祈りの空間で大切な方をお見送りすることです。自分自身の経験からも、本堂という場所の大切さを実感しています。
動画でも、阿弥陀様を背景にして話すことで、本堂という祈りの空間の持つ癒しの力が少しでも伝わってほしいと願っています。
実際にお寺という場で、つらさや悲しみが癒された人々を見てきた
– お寺や本堂が持つ癒しの効果を実感したエピソードはありますか?
ある方がお寺に来られました。お話しを聞いていると、とてもつらくしんどい状況にあることが分かりました。お話しが終わった後、本堂で阿弥陀様に手を合わせてお祈りしましょうとお誘いしました。数分くらい手を合わせていたでしょうか。その方はつきものが落ち、晴れやかな顔で帰られたことが印象的でした。
また、模擬葬儀に参加された方のエピソードもあります。実は模擬葬儀に来られた時には、既に旦那さんの体調は良くなかったようでした。実際、その2ヶ月後に旦那さんがお亡くなりになられ、お寺葬をいとなむことになりました。その方は、あの時に模擬葬儀に来て良かったと。悲しみで全身がきつい中、他の人に邪魔されることなくお寺でゆっくり過ごせてよかった、仏さまに温かく見守られて時間を過ごせて良かったとおっしゃられていました。
現代社会の中で、悲しみ・別れのつらさを癒す不可欠な場として、お寺葬を広めていきたい
– 龍興院の目指すお寺葬はどのようなものですか?
葬儀自体が合理化していく中で、本堂で祈り、お見送りができることが、癒し・救いになっていくと思います。合理的な現代社会の中で、悲しみ、別れのつらさを受け入れ、癒せる空間が不可欠だと思います。
仏教は抜苦与楽であり、本堂で阿弥陀さまに救われることで、精神的な癒しや心の豊かさを感じていただきたいと思います。
弔いや祈りが廃れているというよりも、そのきっかけが現代人には不足していると感じています。数百年を超えて培われてきた、祈り・弔いという癒しの良さを、お寺葬を通じて多くの人に届けていきたいです。
– 最後に、読者へのメッセージをお願いします
ご家族とのお別れの時間はとても大切な体験です。亡くなられた方とのお別れでもありますし、遺された家族の大切な時間でもあると思います。
お葬式が流れ作業で、後悔の残る時間にはしていただきたくない。ご自身の幸せと、亡くなられた方のご供養につながる時間をぜひ大切につくっていただきたいと思います。