まいてら編集部員たちの”お寺のある”日常

まいてら編集部日記

瀬戸内海で死者の記憶について考えた(中編)- お墓の現在とこれから

2017.12.01

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まいてら編集部の井出悦郎です。前回の記事では、瀬戸内海の豊島(てしま)にある、ベネッセの福武財団が運営する「心臓音のアーカイブ」という美術館を訪ねたことをきっかけに、死者の記憶方法のあり方について考えを巡らせました。

写真:まいてら寺院「阿弥陀院」の墓地

その考察となる今回は、日本社会におけるお墓の「現在とこれから」について考えてみます。

日本社会では次の要素の組み合わせによって、死者(故人)の記憶を保存してきました。

  • 死者そのものが化体したハード的側面。主にはお骨に代表される
  • 死者の存在を代替するソフト的側面。主には戒名に代表される

家族のお墓という伝統的な形

写真:まいてら寺院「雲晴寺」の墓地

まず、お骨の保存方法ですが、誰もが思い浮かぶのが「○○家」と刻まれた石のお墓です。家族単位で所有する納骨堂も似たような部類です。
この特長は、お骨を個体ごとに分別管理します。石のお墓の下には、先祖の骨壺が一体ずつ入れられ、いざという時に取り出すことができます。お墓を移動する時には、お骨が個別管理されていると対応しやすいメリットがあるでしょう。

一方、最近はお骨を分別管理しない埋葬方法を選択する方も増えています。不特定多数のお骨を一緒にする合葬墓、土に埋める樹木葬、海や空中(宇宙)に撒く散骨など、選択肢も多様化しています。
跡継ぎがいなかったり、故郷と離れて暮らしたりなどの事情で、近年は非個別管理の形態を選ぶ人が増えていると思われます。

需要が高まる永代供養墓

写真:まいてら寺院「正蓮寺」の永代供養墓

そして、最近は「墓じまい」という言葉が象徴するように、家族のお墓から永代供養墓などの合葬墓に移行するケースも増えています。
実は、日本人の多くが家族のお墓を持つようになった歴史は100年も経ちません。お墓というある種のぜいたく品は、昔はお殿様や商家、地主などの一部の人に限られていました。しかし、戦後から高度成長・バブル期に至り、お墓を持てる経済的なゆとりのある人が増え、家族のお墓が庶民化したのです。
ただ、これからの時代は経済格差が進み、お一人世帯も増えます。家族という物語を味わい、後世に伝えていく方法も多様化していきます。「代々続く家族」という前提でお墓の形を固定的に考えることは、むしろ人間の幸せを阻害する可能性もあります。
現状でも、日本人の約8割が墓参りに行くと言われており、多くの人には死者を弔う意識が存在しています。死者を弔う文化が長く続くためにも、家族や個々人の境遇や価値観に応じて、最適な管理方法を選べる環境が整ってきている現状は望ましいことでもあります。

お寺のお墓はそもそもが永代供養墓である

写真:まいてら寺院 「西照寺」の墓前

近年、多くの住職さんから、檀家さんを問わず永代供養墓の相談が増えていると聞きます。中には、メディアの報道を鵜呑みにして、永代供養墓を結論として持ってくる方もいらっしゃるとか。
ただ、しっかり事情を聞くと、お子さんはそれを望んでいるわけではなく、永代供養墓から結論が変わるケースも多いと聞きます。「子どもたちに迷惑をかけたくない」という思いこみは、後世にとっては必ずしも優しさではない可能性もあります。

そして、あまり指摘されないのが不思議ですが、お寺にあるお墓は元々が全て永代供養墓です。
引き継ぐ人がいないお墓は一か所に整然とまとめられ、無縁塔という形で丁寧に供養し続けるお寺は少なくありません。
多くの住職さんと話していても、檀家さんのお墓を本当に最後まで責任をもって守り続けようという覚悟が感じられます。

お寺のお墓はそもそもが永代供養墓である。

この事実は安心感そのものです。
仏さまに通じるお寺の広い心を信じ、ギリギリまで家族のお墓を持ち続けるということも、立派な選択肢の一つだと思います。

お墓は、世代を超えた最適解が求められるもの

私は友人から、年々お墓の相談を受けることが多くなっています。その際のアドバイスは、

  • 合葬の永代供養墓は不可逆であること(=万が一の際にお骨を回収できなくなる)
  • お墓を移す場合には、家族のルーツが後世でも分かる手立てを講じること
  • 石のお墓は長期の時間軸に耐えるメリットも大きいので、納骨堂タイプとしっかり比較検討すること(=納骨堂は建替えや維持管理等で費用がかさむため、運営母体の盤石な経営基盤が求められる)
  • お墓を管理する経営母体(特に民間霊園)の継続性には十分に留意すること
  • お墓を移動するとかえって高コストになる可能性があるので、しっかりと金銭面の検討をすること
  • とにかく家族でしっかり話すこと

と、伝えるようにしています。

ある世代において最適解のお墓は、その後の世代においてもそれが最適解になるとは限りません。例えば、居住地の近くにお墓を移しても、子ども世代は違う地域や、もしかしたら海外に住む可能性もあります。海外に住んだら、日本のどこにお墓があるかは大きな問題にならないかもしれません。かえって家族のルーツとなる地域にお墓を置いておくのが最適解になる可能性もあります。

お墓は世代を超えた最適解が求められるものです。どんどん物事が短期視点になる世の中において、お墓というテーマを通じ、自分の寿命を超えた時間軸の考え方を身につけることも大切です。お墓というテーマは、我が事を超えて、将来の家族や社会のあり方について自らがどのような願いを持っているかの表れと言えるかもしれません。

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井出悦郎

井出悦郎

1979年生まれ、東京育ち。東京大学文学部卒。人間形成に資する思想・哲学に関心があり、大学では中国哲学を専攻。銀行、ITベンチャー、経営コンサルティングを経て、「これからの人づくりのヒント」と直感した仏教との出会いを機縁に、一般社団法人お寺の未来を創業。同社代表理事を務める

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