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【栗生隆子さん(発酵生活研究家)の“いのち”観】 –究極的には生も死もない –

2017.12.26

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僧俗問わず、各ジャンルで活躍されている多彩な方々に、ご自身の“いのち”観をまっすぐにお聞きしていくこの連載。今回ご登場いただいたのは、発酵生活研究家の栗生隆子さんです。ご自身の臨死体験から語られる「いのち観」は、非常にスリリングで、真に迫ったものでした。「禅」の境地ともクロスするような栗生さんのお話、ぜひじっくり味わってお読みください。

栗生隆子(くりゅう・たかこ)

発酵生活研究家。 シンプルな暮らし、家庭でできる発酵生活を実践したところ、長年の腸疾患を自然治癒力で完治。 その経験から、目に見えない菌が健康にも環境にも大切な役割をしていると実感し、発酵への理解を深める。 カラダの中の仕組みは自然界と同じと気づき「発酵・循環・調和」をテーマにした執筆活動や国内外で講演を行う。 足下を温め、心もカラダも穏やかになる、血液の循環をさせる「冷えとり健康法」も実践。 著書に「豆乳グルグルヨーグルトで腸美人!」(マキノ出版)、「植物性乳酸菌の力で腸キレイ TGG(豆乳グルグル)ヨーグルト 」(永岡書店)、『体も家もピカピカになる「お米の発酵水」』(扶桑社ムック)、『からだにおいしい発酵生活』(宝島社)。その他、監修本も多数。 ナチュラルシフト共同代表。 発酵全般を楽しむサイト「facebook/TGG豆乳ヨーグルト同好会」の管理人。

生きているという経験、それ自体が尊い

——人は死んだらどうなると思いますか? どこか行く場所があると思いますか?

そのご質問への回答になるかどうかはわからないですけれど……。私、昔、重い病を得て、ほとんど寝たきりのような状態になって、自死を選ぶことしか考えられなくなったときに、いわゆる「臨死体験」と呼ぶほかないような体験をしたことがあったんですね。それが具体的にどのようなものであったのか、この場で語ることは避けますけれど、とにかく、そのとき、自分が、強い意志を持ってこちらの世界に戻ってきたことは明確に覚えているんです。

——強い意志、ですか。

私たちは、肉体をもってしか経験できない世界に生きている。それがどんなものであれ、経験できるという、そのこと自体が尊いことなんだ、って。ただ生きているだけでいい。とにかく、生きよう。生きるという経験をしよう、って。……そこで、たぶん、いろんな欲、個人的な欲が落ちてしまったんでしょうね。臨死体験をしてからしばらくの間、私、少し不思議な世界にいたんです。

すべてがあるべき姿として、ただ、そこにある

——不思議な世界?

なんというか、すべてが自動操縦というか、ただ起きていることに気づき続けている世界というか……。たとえば、お茶碗を洗っているときは、ただ、お茶碗を洗うということが起きているだけ。お茶碗を持つ手、流れる水、スポンジの泡、そのすべてがあるべき姿として、ただ、そこにある、みたいな。そこになにかをしている自分はいないんです。日常のすべてにおいてそんな感じでしたね。それが数日間続いていました。

——禅の境地に近いようなお話ですね。

そう、禅。まさしく、そういうことだったのだと思います。当時はそういった知識もまったくなく、ただ、わけもわからずその境地に立っていました。でも、後になって、発酵という知恵と出会ってどんどん元気になっていく過程で、禅、とくに臨済宗の教えとご縁をいただくようになって。実際に自分でも日常的に坐禅を組むようになって、ああ、あの時の体験は、これと同質のものだ、と実感するようになりました。

——興味深いです。

人は死んだら「いまここ」に還っていく

でも、あの体験は、実はまったく特殊なものではなくて、実は、いまここで起きていることすべて、ほんとうはあのように自動的に起きているんですよね。さまざまな思考、感情、感覚、そのすべてが、いまここでパッと沸き起こって、次の瞬間にはパッと消えていって、その繰り返しで……。それをただ見つめるというか、そこにただ気づいているというか、そういう風に生きていく中に、「よろこび」と呼ばれるものがあるのだな、と、最近とくに強く実感しています。

——すべての事象は「いまここ」において生滅を繰り返している。……ということは、ほんとうの意味では、過去も未来もないのでしょうか?

そうですね。前世も来世もない。究極的には生も死もない。だから、最初の質問にお答えするとしたら、人は死んだら「いまここ」に還っていく、ということになるでしょうか。私自身、肉体の死はまったく恐れていません。いつお迎えがきてもいいと思っているぐらい(笑)。でも、現に、こうして、いま、生かされているわけですからね。ご縁の中で与えられたお役目、具体的には発酵食の素晴らしさをひとりでも多くの方に実感していただく機会を作ることですね、それを、栗生隆子のいのちとして、やり切っていこうとは思っています。

——栗生さん、貴重なお話をありがとうございました。

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小出遥子

小出遥子

1984年生まれ。新潟県出身。早稲田大学第一文学部日本文学専修卒業。編集プロダクション、美術系専門図書館勤務を経て、現在はフリーランスの編集者・文筆家として、仏教系テキストを中心とした編集・執筆活動を行っている。いのちからはじまる対話の場「Temple」主宰。

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