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【愛知県津島市】地元の冬の風物詩 宝泉寺「寒中托鉢行」

2017.12.26

伊藤 信道(いとう しんどう)

1955年(昭和30年)津島市生まれ。龍谷大学文学部仏教学科卒。大学では陸上競技部。アーユス仏教国際協力ネットワークや名古屋NGOセンター創立に関わりました。また、僧侶育成機関「宗学院」講師を勤めます。

宝泉寺の「おてらじまん」第2弾は、今や地元の名物とも言える「寒中托鉢行(かんちゅうたくはつぎょう)」です。「托鉢」とは、僧侶が街の中で経文を唱え、施しを受けて回る修行のことを指します。宝泉寺では、二十四節季でいう「小寒」(1月5日頃)から「立春」(2月4日頃)にかけて約30日間行うため「寒中托鉢行」と言われています。たびたび被写体ともなる愛知県津島市の冬の風物詩を皆さまにお伝えしたいと思います。

家を一軒ずつ回り、お金をもらう行

まいてらの検索ページにおいて、宝泉寺のメイン写真として使わせていただいているこちらの画像は、寒中托鉢行のためにお寺の山門を出た瞬間を撮っていただいたものです。私が25歳の時に托鉢行を思い立って以来、毎年寒の期間の早朝(朝6時半から8時頃まで)に津島市内を歩き、一軒ごとに門付け(家の玄関前にてお経をお唱えすること)をしながら、回っています。

私にこの作法を教えてくださったのは、岐阜県羽島市光照寺の森凖玄(もりじゅんげん)師です。托鉢行の指導を受けるために光照寺に一泊した際、森師は「寒行(寒の 30日間,寒さを忍んで修行を行うこと)は、お金をもらう行だ」と話して下さいました。森師は、当時から特に優れた僧侶としてよく知られていました。なのに、「お金をもらう行」などと欲深いことをおっしゃるものだと、当時はいぶかしく感じました。翌朝、森師の後をついて托鉢に回りますと、多くの家から次々と布施されていきます。この様子を見て、「こんなにたくさんもらえるのなら、私もやってみよう」と考え、翌年から地元である津島の街を回ろうと決めました。

集めたお布施には責任を持ちたい

寒中托鉢行を始めた最初の年、小寒の日に1時間ほど街を回ってみたのですが、家の前で経文をお唱えしても誰もお布施をしに出てきてくれません。結果、その日のお布施は1軒からいただいた10円玉1枚のみでした。その時、森師が「寒行は、お金をもらう行だ」と話された意味が初めてわかりました。「布施をもらえるような存在にまで自身の存在を高めていけ」ということだったのです。

浄財(集まったお布施)は当初、新聞社の社会福祉募金などに寄付をしていました。しかし、大切な浄財をただ寄付するだけということにもどかしさを感じていました。そんな中、アーユス仏教国際協力ネットワークというNPOを設立しようという誘いを受け、立ち上げに参加ました。このNPOに浄財を寄付することで、集まったお布施の使いみちまで責任が持てると考え、設立以来役員として関わっています。現在、浄財は主に国際協力に加え自然災害の緊急支援にあてています。

街に慕われ「あたり前の風景」となった寒中托鉢行

寒中托鉢行を始めて30年以上。現在では弟子と二人で回るようになりました。様々なことがありましたが、何よりも続けてきてよかったと感じているのは、地域の人々とのつながりが太くなったことです。お寺から街の中に出ていったことの成果だと感じています。玄関先で正座して待っている人、お布施をするために追いかけてくれる人、応援の手紙を添えてお布施してくれる人、声をかけてくれる人。中には、一緒に歩きながら写真を撮ってくれる人もいます。この記事冒頭の写真は、2015ディスカバリー津島写真コンテストで銀賞を受賞しました。

津島の風物詩となった寒中托鉢行ですが、ただの風景になるのではなく、他者への思いやりが伝わるようなものにしたいと念じています。寒の時期が来ると、寒中托鉢行を待っていてくれる人が大勢います。寒中托鉢行は宝泉寺の名物でありますが、「津島の冬に見られる普通の風景」といえるほど、地域になじむものになっているのかなとも思います。

寒中托鉢行を見物したい方へ

まいてらカレンダーで2018年寒中托鉢行の日程を更新いたしました。ぜひご覧ください。
▶宝泉寺のまいてらカレンダー

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▶【愛知県津島市】宝泉寺から町の歴史を見守り続ける、市内最大のクスノキ — まいてら住職のおてらじまん

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愛知県津島市
飛龍山 帰命院 宝泉寺
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